プロローグ
木の実の採集を終えて村に帰ると村は滅んでいた。
「…え?」
女は、小さくそうつぶやいた。
彼女は、まだ何が起こったか理解できないでいた。
村のあった場所を回る。
家は扉が破壊され、中は竜巻にでも遭ったように荒らされている。
畑の作物も殆どが食い荒らされ、生活の気配は消え失せていた。
「ひどい…!」
村を出たのはほんの2時間前のことである。
いつものように晴れた日。
朝にはいつものスープを作り、簡素な朝食を済まし。
畑を耕す隣のおじさんに挨拶をして。
そして、いつものように森に出かけた。
帰ってくるまで、彼女はいつもの日常を暮らしていたというのに。
2時間の間に何があったのか、彼女には全く分からない。
ただ、目の間にある光景は嘘ではない。
確かに、村は滅んでいるのだ。
誰か、生きていないだろうか。
そう思うのは当然のことである。
しかし人の気配はない。
妙な静けさが、彼女をますます不安にさせる。
その時。
草を踏む音がした。
人だろうか。生き残った村人だろうか。
彼女はすぐに音のする方へ向かった。
しかし現れたのは、
異形のものであった。
大きさはさほどでもないが。
そして彼女に襲いかかる。
「‼?」
彼女はとっさに呪文を唱えた。
炎の魔法『バニグ』!
ゔぁっ。
彼女から放たれた炎が異形のものを襲う!
異形のものは逃げて行った。
「何なのあれ…まさか、あいつが村を…」
そう思った矢先、背後から声。
「派手に滅んでるなぁ…ん、君は!?」
20代後半ぐらいの痩せた男がいた。
「あなた…誰?私のこと知ってるの?村はどうしたの!?誰がやったの!?」
「まぁまぁ焦りなさんな…君は…そうか、そういえば妹が居るとか言うておったな…」
「妹…?まさか、お姉ちゃんがどうかしたの!?」
「焦りなさんなと言うとろうが…ふふ、これは面白い、ちょっと来てもらおうかの…」
「え?」
○
ある日、突然人が怪物と化すようになった。
魔導師や研究者たちは原因が大気が詳細不明の魔力に汚染されていることを突き止め、街に結界を張った。
そして数年後のことである…