ボクのこと
*
「ねぇえ、もう放り投げちゃいなさいよ?」
……うるさい。
「ねー、聞いてる?」
うるさいな。
「……聞こえてる」
「だったら返事しようよ」
「……」
苛々する。
無視しようと思うのに、どうもうまくいかない。結局ボクは、こちらを無遠慮に眺めている声の主を振り仰いでしまう。その代わり、これみよがしに溜息を吐いてやった。
「横からわちゃわちゃとやかましいんだよ」
「あらあら、いらいらしちゃってまあ。でも、聞き流してるあたり、そうでもないのよね?」
こちらの対応がどうだろうと彼女は少しも気を悪くした風でなく、それどころか全て理解してるかのような態度がとても癪だ。が、それをそのままぶつけるのは矜恃に反する。だから荒ぶる感情を短い言葉にまとめて、棘も抜いてから告げた。
「……気が散る」
彼女はそれすら分かっているとばかりに笑うから、ボクはもう顔を背けてしまうしかない。彼女に言わせればそれは、ボクが拗ねたという事になるらしいが、ボクのことを勝手に分析するのはやめて貰いたい。だけどおそらくこれも言うだけ無駄なのだろう。
「はいはい。だけどほどほどになさいな。頼まれたわけじゃないんだし」
言われなくても分かっている。
それでも諦めないボクのことを、彼女はきっと、他の奴らと同様に理解は出来ていないだろう。当のボク自身が、不思議に感じているのだから。
だってボクらはただツクルだけ。組み立て、完成、放置。あとは勝手に育つのを気まぐれに観察する。意義? なんだそれ。
ボクらはツクルだけ。
そうだ。
ボクはなにをムキになっているのだろう。
たかが箱庭だ。こんなもの――