呪いのQ
「ね、トランプやろうよ」
そう、都美子が言い出したのがきっかけだった。
「え、いいよ。何にするの?」
私は気軽にそんなことを言ってしまう。
「うーん、ばばぬきなんてどう?」
「いいじゃん、奈々子。ナイスアイディ~ア」
アイディアも何も適当に言っただけじゃね?
「じゃ、私配るね」
都美子は、人の嫌がる仕事を自分から引き受けてくれる。自分も見習いたいな、と思いつつもなかなかできていない現状なのだが。
「みんな、ポーカーフィイスだよ」
「はいはい」
げ、ジョーカーあるし。
別に負けてもいいから、かまわないけど。その前のスリルが楽しいんだし。
しばらくとって、ジョーカーが奈々子にいくと、
「うわ。ジョーカーとっちゃった」
「「言っちゃダメじゃん!」」
都美子と私は二人同時に突っ込みをする。
そして、三人で笑い合う。
「もー。奈々子ったら」
「二人もハモることないじゃん」
もう一度三人で笑いあう。
「って、早く」
「いや、都美子が私のをひくんだよ」
「あ、そっか」
それからは順調に進んでいき、私は一番にぬけた。
「ふふっ。これからは二人の勝負だね!」
「そこまで意気込まなくても」
奈々子は小さく笑う。
都美子はカードが四枚。奈々子はカード二枚。
「あれ? ちょっとまって。カードの枚数おかしくない?」
「ひい…ふう…み……。ほんとだ」
奈々子は、二回目を数えなおして、
「うん。やっぱおかしい。誰か、間違えたのかな? 都美子ちゃん、手札は?」
都美子のカードは、二、六、Q、ジョーカー。
奈々子のカードは、二、六。
「このトランプ、全部そろってるはずだから、だれか間違えたんだよ。きっと。もう一回やろっか」
「うん」
都美子はもう一度シャッフルして全員に配り、
「じゃ、間違いがないようにね」
「うん」
私と奈々子は頷く。
そして、しばらくばば抜きを続け、最後に残ったのは私と奈々子だった。
手札の数を見ると、私が三枚。そして、奈々子が三枚だった。
「まただ……」
「え、本当だ」
奈々子も呟き、都美子は驚いた顔をする。
私たちはカードを見せ合うことにした。
私が三、八、K。
奈々子が、三、八、Q、K、ジョーカー。
「またQが残ってる。しかも、同じハートのQ」
奈々子の言うとおりである。確かに言われてみればマークもハートだった。
「あれ? みんな十分気を付けてやったもんねぇ。私が持ってたやつ、なにかQが抜けてたかな?」
都美子は、ほかの数字も確かめるために、四枚ずつ集めていく。
「ん? あれ。やっぱあるよ」
私たちも都美子の様子を見ていたが、間違えているようなところはなかった。
「じゃあ。私たちが失敗したってことだけかぁ。よし、今度こそきれいにできるといいね」
私の言葉に、二人は大きくうなずいた。
こんな言葉を言わなければ、三回目はやらなかったのだろうか。
「じゃ、気を取り直してもう一回」
都美子はもう一度シャッフルして、皆に配る。
そして、進めていく。すると、今度は私と都美子が残った。そこで数えると、
「あー。やっぱ、数合わない」
私は二人にも見えるようにカードをテーブルの上に出す。都美子も同じくそうした。
私が、五、Q、K。
都美子が、五、K、ジョーカー。
「ね。どうせなら、最後までやってみない?」
「えー。だって、勝敗がつかないじゃん」
私はそんな意味の無い事はしたくなかった。
「まあまあ。そういわずに。何か進展があるかもしれないじゃん」
私はその言葉にそそのかされて、続きをしてしまった。
最後に二人が持っていたカード。
私が、Q。
都美子が、ジョーカー。
「ん~? それにしても、どうしてだろう。さっき数えたのに……。それにさ、三回も間違える? なんか、呪いでもかかってるみたい」
「そんなことあるわけないじゃん。奈々子ってば」
私は、そんなことがあるわけないと笑う。
「いや。正解だよ」
「え?」
思わず聞き返してしまう。
「 本当に、正解だよ。今から、説明してあげる。
これはとあるクイーンのお話。
あるクイーンは、周りの国の二人の女王たちから、いじめられていました。それは、体から心まで悪くするようないじめを受けました。
一回、二回といじめられ、彼女は計、三回のいじめを受けました。
周りの国の王女たちは、もっと彼女をいじめる予定でした。
だが、それはかないませんでした。
なぜなら、彼女が自殺をしてしまったからです」
私と奈々子は息をのむ。
「 そして、自殺した彼女はその二人をとても恨みました。そこで、彼女の近くにあったトランプに彼女の怨念が宿ってしまった。
そして、そのトランプがこれ。
このトランプは三人でばばぬきをしたとき、ハートのQが残るトランプ。
そして、三回目。ハートのQを最後まで持っていた人はその日の夜に亡くなるんだって」
私は生唾をのみこむ。
「まさか、それって……」
都美子はまるで狙ったかのように、にやりと意地悪く笑う。それは、残酷な笑みだった。
「気を付けたほうがいいかもね…………理香」
お久しぶりです。
そして、お久しぶりです。
約一年ぶりの更新ですね。
私のブログでは、これの元ネタがあります。
もし興味がありましたら、遊びに来てください。