表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰だって、仮面をつけて生きている。  作者: Mina
一章 ミステリー研究会へようこそ
7/9

嫌とは言えないヘタレな俺

コメディ強めで行こう!と思いながらも、今回はやや15禁の表現があります。最初からこんな展開を考えていたのですが、今まで読んで下さっている方が離れて行ってしまわないかと、心配になってしまいます。

 切り裂きジャックジャック・ザ・リッパー

 1888年イギリスのホワイトチャペル地区で、少なくとも売春婦ばかり5人を殺害した殺人犯だ。

 数百年経った今でも、知らない人間は居ないだろう。

 なぜジャックがこれ程までに、人の心に恐怖を植え付け、今もなお伝説の殺人鬼として、一部の人間を魅了し続けているのか?

 それは、ジャックが最後まで逮捕されなかったという事と、その異常な殺し方だ。

 人間の臓器を取り出して、傍に置くなどの猟奇的な思考。

 技術の高さ。

 医者か?貴族か?

 男か?女か?

 年齢不明の殺人者。

 今となっては知るすべも無い。

 全ては真実の闇の中……。



 124年後現在。

 深い霧と共に、奴は蘇った。

 過去、何人もの模倣犯が現れたが、今回のは桁が違う。

 その異常性も何もかも、本物かそれ以上の〝シリアルキラー〟だと言われている。

 先週末に起こった事件で、犠牲者は3名。

 学校は違うが、みんな女子高校生だった。

 これ以上犠牲者が増えそうなものなら、そう遠くない内に実家の方に依頼が来るかも知れない。

 受けるかどうかは知らないけどね……。

 何か最近はジャックより危ない奴らの相手してるみたいだし。

 俺は強くないから、ほとんど家でお留守番……。

 だから、本当は新井さん達には、あまり期待して欲しくないんだけど……無理だよね。

 だって俺〝花屋敷〟だもん。もしそうじゃなかったら、今この場所には居なかっただろう。


「反対が無いんやったら、ジャックで決定?」

 二木が椅子に座り直し、俺達全員に同意を促した。

「そうね、これだけ特殊な事件だったら、文句はないわ」

「オーケー」

夢姫(ゆぶき)ちゃんが良いなら……」

 新井さん、橘、北川さんの順に、二木の提案に賛成の意を述べて行く。

 どうやら誰も反対するつもりは無いらしい……。

 おいおい、お前ら本当にこんなヤバイ奴を調べるつもりなのか?

『ちょっと興味があるの~』ぐらいしか思っていない一般人が、簡単に足を突っ込んで良いとは思わないぞ。

 もし向こうにこっちの存際を知られたら、次の犠牲者は俺達の誰かかも知れないんだぞ?

 お前らの親兄弟に、自分の惨たらしい死に方を見せても良いのか?

 俺は嫌だ……。

 誰の死体も見たくない。

 だから言おう、こんなの止めましょうと。

「あの、僕は…」

「なあ、花屋敷も…」

 タイミングが二木と同時になってしまい、俺は無意識に言葉を飲み込んでしまった。

「他の皆は賛成なんやけど、お前も良いよな?」

 うっ……。

「………………はい」

 駄目だ俺……。ヘタレすぎる……。

 だって二木と新井さんの目がね……、絶対にこれやりたいんだから、反論は許さないって……。

 断ったら何するか分からないよ?みたいな凄い威圧感をかけられたら、ノーとは言えないでしょう。

「よっしゃ~。何や興奮して来たわ~。……あ、俺のジャックもちょっと元気に……」

「変態!!」

 見事な新井さんの蹴りが股間にヒットし、声にならない悲鳴を上げる二木。

 このまま、二木のジャックが再起不能にならない事を、そっと祈っていよう……。





 *******************************


 甘い花の香りに、鳥のさえずり。

 頬を撫でる心地よい風。

 ここは楽園の花園だろうか?

 いや……私が神の国に昇れるはずがない。

 私はその資格を当の昔に、自らの手で失っているのだから……。

 ならば、ここは地獄か?

 随分と想像とは違ったが、なるほど…そんなに悪くはない。

「ご気分は如何ですか?」

 心の奥まで染み入る様な、静かで穏やかな声が私に語りかける。

 悪魔の囁きとは、甘く艶やかな物とだ思っていたが、またも想像と外れたか。

「私の声は聞こえていますか?」

 澄んだ水面の様であり、全てを包み込む夜の闇の様な心地よい声音。

 ああ、聞こえているとも。

「目は開けますか?」

 その言葉に少し頷いてから、私は瞼をふるわせゆっくりと目を開いた。

 全く、ことごとく想像を外してくれる。

 私を覗き込んで淡く微笑む悪魔は、その声音を映した様な、静麗とした美しさを持っていた。

「あなたは自由になったら、何を望みますか?」

 私の望みはただ一つ。

 唯一の願いを私が口にすると、彼はほころぶ様に微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ