彼女達は何かが違う
グロではありませんが、出血の言い回しが多いです。すみません……。
「ミステリー研究会へ~ようこそ~」
ドアを開いたと同時に乾いた音が響き、キラキラとした紙が俺の頭に降ってきた。
「…………」
いきなりの事で驚いたが、何故にクラッカー?まともに火薬臭いのが鼻にきたぞ。
頭と肩の紙を払いのけながら、俺はクラッカーを片手に満面の笑みを浮かべる新井 夢姫を見た。
「……どうも」
「どういたいしまして~」
別にお礼を言った訳では無かったが、へろへろ~と笑いながらの返事が返ってくる。
「でも入って来たのが僕じゃなかったら、どうするつもりだったんですか?」
当然、間違いました~。では恥ずかしい過ぎるね。
「ああ、大丈夫よ。この部屋に入って来る人なんて居ないもの……それにね、超優れ者の花屋敷君レーダーが居るから」
俺レーダー?何か嫌だ。
そう言って新井さんは自慢げに手を腰に当てて、部屋の隅で俯いている女子にパチンとウインクをした。
おおおおっ……。
凄い。凄い!俺初めて見た…。
リアルにウインクする女~。しかも腰に手を当てて、振り向きざまにウインクした後どや顔する人間なんて…存在してたんだな!
ここに来たこと後悔しているが、これ見れた事はラッキー。
それで俺レーダーの彼女はというと……。
「は、はぃっ!ご紹介に与りました。心理科一年、北川 歩です……花屋敷君の気配や匂いで、だいたいの位置は分かります!」
眼鏡をかけた大人しそうなショートヘアの女の子だ。
立ち上がる際に長机で足を強かに打ちつけた様で、涙目になりながら嫌な特技を紹介してくれた。
「大丈夫ですか?……鈍い音がしましたけど…」
さっきのは痛いよね~。
「だっ…大丈夫です!こんなの舐めておけば直ります!」
打ち身は舐めても治らないと思うぞ…。
でも、何か可愛いな……。
慌てて顔の前で手を振る仕草が小動物みたいで。
俺の中の悪戯心がむくむくっと芽を出した。
こんな台詞を言ったら、どんな反応をするんだろう?
「それなら……、せめて僕が舐めましょうか?」
本気で心配する表情ってのはこんなのだったか?
「そんなっ…い、いえ…っだいじょおうぶで…………ぐはッ」
…………………………………………………………え?
「…………。だっ…大丈夫じゃないでしょう~!」
ええぇ~?
何これ?ごめん……本当にごめんなさい。
まさか、こんなにハードな反応をするなんて、思ってなかったから…。
北川さんは俺の言葉の後に真っ赤にし、鼻から大量の血を噴出して……そして倒れた……。
どうしよう……。
今だドクドクと出血しながら、あははうふふと、笑い続ける北川さん……。
これで彼女が死んだら、やっぱり俺の所為だよな……。本当にごめん悪かった!
謝るから早くその血を止めてくれ。死因が鼻からの出血なんて嫌だろう?
俺が呆然と立ち尽くすなか、新井さんや他のメンバーが走り回っていた。
そんな時、軽い音を立ててドアが開き、俺達と同年代の長身の男が中に入って来るなり、北川さんの後ろに立つと、さっと手を振り上げた。
何をするのかと思い視線を向けると、勢いよく首の裏を往復で叩き始める。
俺も驚いたが、、もっと慌てたのは新井さん。男の腕にしがみ付き止めさせようと必死だ。
「ちょっ…いきなり何するのよ!歩ちゃん殺す気!?」
「こうすれば血は止まる。これを打ち止めという」
男は気にする風もなく北川さんの首裏を叩き続ける。
「余計出てるわよ!止めてよ!死んじゃう!本当に死ぬから~」
「大丈夫だ、俺はこうされて育った」
どんな家で育ったんだ!?
だいたいアンタと彼女じゃ、熊とハムスターぐらいの差があるんだよ?
同じじゃ駄目でしょ!
数分後……。
驚いたが確かに血は止まった。たっぷりと叩き出した後で……。
本当に大丈夫だろうか?北川さん……。
冗談ではなくなってる様な……。
「歩ちゃん!野菜ジュース買って来たよ~」
「……ありがとう、姫ちゃん……」
「たくさん飲んで血を作るんだよ」
「うん。慣れてるから平気だよ……」
ちゅう~と美味しそうに野菜ジュースを飲みながら、ティシューを鼻に詰めている。
「あの…本当に大丈夫ですか?具合が悪いなら、病院に……」
「ほ、本当に慣れているので、ありがとうございます……」
「もしかして……どこか…」
病気持ちなのかと聞こうとして止めた。
鼻血が俺の所為でないのなら有難い。でも本当に悪い病気なら気の毒で聞けなかった。
「あ、いえ。体は至って健康です!」
俺を安心させようとしたのだろう。北川さんは明るい声でニカッと笑った。
……そうか。じゃあやっぱり、出血は俺の所為か……。
でもさ、大げさだよね……。もう、こういうネタ振りは止めようよ……。
ここの女子は何かが違う。
キャラを立てようと頑張ったら、ぐだぐだになってしまいました……。
ああ、どうしよう……。