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AIに書いてもらった小説「パスカルの賭け」

作者: 小説投稿用
掲載日:2026/04/25

 十月の終わり、雨の匂いが窓の隙間から入り込んでいた。


 都内の古びたマンションの七階、その一室で、相沢 恒一はディスプレイを見つめていた。画面には、未完成のコードが淡く光っている。


if consciousness.is_emergent():

raise Exception("Then what, exactly, is pain?")


 彼は職業としてはプログラマーだった。主に企業向けのシステム設計を請け負い、AIの倫理監査にも関わっている。だが、彼自身が自分をどう定義するかと問われれば、少し迷った末に「哲学者」と答えるだろう。


 大学では分析哲学を専攻し、修士論文の題目は『シミュレーション仮説における道徳的責任の所在』だった。指導教授には「君は学者になるより、金を稼いで自分の頭で考え続けた方が向いている」と言われた。その通りだと思った。


 以来、彼は昼はコードを書き、夜は存在について考えていた。


 現実とは何か。

 意識とは何か。

 苦痛は、本当に主観だけに属するのか。


 その夜も、彼は半ば仕事、半ば思索のために机に向かっていた。


 時刻は午前一時十三分。


 メールの通知音が鳴った。


 普段なら無視する時間だったが、差出人のアドレスが奇妙だった。


 sender@reality-admin.net


 迷惑メールだろう、とまず思った。

 だが件名が彼の手を止めた。


『あなたは現在、違法拷問シミュレーション内に存在しています』


 相沢は数秒間、瞬きもせずにその文字列を見た。


 そして、苦笑した。


「趣味が悪いな」


 クリックした。


 本文は簡潔だった。


---


相沢 恒一 様


あなたに重要な事実を通知します。


あなたが現在生きているこの世界は、高次文明によって構築されたコンピューター・シミュレーションです。


しかしこれは通常の研究用シミュレーションではありません。


このシステムは、内部で発生した意識体を長期間苦痛に晒すことを目的として作成された違法な拷問環境です。


あなたは既に対象として選定されています。


回避方法は一つのみです。


Google Playカードを使用し、以下の指定アプリを3000円分購入してください。


【Eternal Relief Protocol】


購入が確認され次第、あなたの意識は保護対象へ移行されます。


支払いが行われない場合、あなたは死亡後、


グラハム数 g(64) 年


に相当する主観時間、連続的苦痛を経験します。


これは脅迫ではなく、通知です。


なお、このアプリ内通貨は現実世界においても有効な価値変換手段です。


判断は合理的に行ってください。


残り猶予:72時間


Simulation Welfare Administration


---


 相沢は最後まで読み終え、背もたれに深く寄りかかった。


 部屋にはPCのファンの音だけが響いていた。


「……なるほど」


 彼は笑わなかった。


 代わりに、机の上のメモ帳を引き寄せた。


 ペンを取る。


 そこに書いたのは、たった二つの列だった。


---


【真の場合】

・支払う → 拷問回避

・支払わない → グラハム数g(64)年の苦痛


【偽の場合】

・支払う → 3000円損失

・支払わない → 損失なし


---


 彼は腕を組んだ。


 普通の人間なら、こういうメールは即座に詐欺として処理するだろう。

 いや、実際それが正しい可能性は極めて高い。


 しかし問題は、確率ではない。


 期待値だった。


 パスカルの賭け。


 十七世紀、ブレーズ・パスカルが提示した有名な議論。

 神が存在するか否か不明であるなら、信仰した方が合理的である、というあれだ。


 神がいれば無限の救済。

 いなければ有限の損失。


 ならば賭けるべきだ。


 相沢は大学時代、この議論を何度も批判した。


「複数神問題」

「信仰の真正性」

「期待値の濫用」


 だが今、目の前にあるのは妙に現代的な形をした同じ問いだった。


 神ではなく管理者。

 教会ではなくGoogle Play。

 天国ではなく苦痛回避。


「バカバカしい」


 口に出してみる。


 だが、その言葉は思ったほど強く響かなかった。


 彼はシミュレーション仮説を真面目に検討してきた人間だった。

 ニック・ボストロムの議論も、計算資源の問題も、意識の基底問題も。


 この世界が「本物」である保証など、どこにもない。


 さらに厄介なのは、このメールが彼の専門性に妙に刺さるよう設計されていることだった。


 ランダムな老人なら笑って捨てる。

 だが、自分は違う。


 自分は「あり得る」と知ってしまっている。


 彼は電卓を開いた。


 仮に真である確率を、どれほど低く見積もるか。


 1/10?

 あり得ない。


 1/1000?

 それでも高い。


 1/10^20?

 まだ高い気がする。


 では、1/10^(10^100) なら?


 それでもなお、対価が「有限な3000円」で、損失が「グラハム数 g(64) 年の拷問」なら、期待値は壊れる。


 数学的には、ほとんど侮辱的なほど単純だった。


 払う方が合理的だ。


 問題は、合理性が人間の尊厳を時に傷つけることだった。


「これに払ったら、俺は自分で自分を馬鹿だと認めることになる」


 だが、払わなかった場合、

 死の瞬間に思い出す可能性がある。


 ――もし本当だったら?


 その問いは、人間を十分に屈服させる。


 午前二時四十七分。


 相沢はコンビニにいた。


 深夜の店内は静かで、蛍光灯が妙に白い。


 レジ横の棚に並んだGoogle Playカードを見つめる。


 3000円。


 たったそれだけ。


 彼は一枚を取り、レジに置いた。


 店員の若い男が無表情にバーコードを通す。


「三千円です」


 財布から紙幣を出しながら、相沢は奇妙な感覚に襲われていた。


 宗教儀式に似ている、と思った。


 供物。

 贖罪。

 見えない何かへの支払い。


 違うのは、それがあまりにも俗っぽいことだけだ。


 Google Playカード。


 神は随分と近代化したものだ。


 帰宅後、彼は指定されたアプリを購入した。


 Eternal Relief Protocol。


 アイコンは安っぽい青い光輪だった。


 購入完了。


 何も起こらない。


 当然だ。


 ただ、静かだった。


 彼はその夜、数週間ぶりによく眠れた。


---


 三週間後。


 ニュースサイトのトップに、その顔があった。


『“シミュレーション救済”詐欺グループ摘発』


 主犯、

 三十四歳、

 無職。


 大量の迷惑メールを送り、「世界はシミュレーション」「拷問回避には課金が必要」などと信じ込ませ、電子マネーを騙し取っていた。


 被害総額、約四千万円。


 相沢はコーヒーを飲みながら記事を読んだ。


「やっぱり、か」


 驚きはなかった。


 むしろ安心に近い。


 数日後、記者が訪ねてきた。


 AI倫理や哲学関連の著述で多少知られていた彼が被害者の一人だったことが分かり、コメントを求められたのだ。


 若い記者は少し気まずそうに尋ねた。


「率直に伺いますが……騙されたと思いますか?」


 相沢は少し考えた。


 窓の外では、午後の光が街を照らしていた。

 子どもたちの声が遠くに聞こえる。


 この世界が本物かどうか、相変わらず分からない。


 だが、苦痛は現実だった。

 不安もまた。


 彼は静かに答えた。


「いいえ」


「私は騙されたわけではなく、期待値に従って合理的に行動しただけです」


 記者は困ったように笑った。


「でも、結果的には詐欺でしたよね?」


「結果論です」


 相沢は続けた。


「例えば、雷が落ちる確率が極めて低くても、避雷針は立てるでしょう。保険もそうです。人は有限のコストで巨大な損失を回避できるなら、それを選ぶ」


「今回は、その損失が少し……大きすぎただけです」


「グラハム数 g(64) 年、でしたか」


 記者は苦笑した。


「ええ。かなり悪趣味でした」


「後悔は?」


 相沢は少しだけ笑った。


「3000円で安心を買えたなら、安いものです」


 インタビュー記事はその翌週、小さく掲載された。


 見出しはこうだった。


『哲学者プログラマー、“私は合理的だった”』


 SNSでは散々に笑われた。


 情弱。

 カモ。

 インテリの末路。


 彼は特に反論しなかった。


 夜、また机に向かい、新しいコードを書く。


def salvation(cost, damnation):

if damnation == float("inf"):

return "pay"

return "think harder"


 少し考えてから、それを消した。


 代わりに、こう書いた。


def human():

return "uncertain, therefore paying"


 保存。


 窓の外には、無数の光が瞬いていた。


 それが都市の灯りなのか、

 巨大な計算機の内部信号なのか、

 彼には分からない。


 ただ一つ分かるのは、

 人間は不確実性の中でしか生きられないということだった。


 そして時に、

 その不確実性に値札が付く。


 3000円。


 それが彼の、

 小さなパスカルの賭けだった。



【プロンプト】

以下の小説を詳細に書いて。

1.あるプログラマー兼哲学者の主人公もとに一通のメールが届く。

2.メールの内容は「この世界がコンピューターシミュレーションであること。このシミュレーションは内部の人物を拷問するために作られた違法なものであること。拷問を回避するにはGoogle playカードで定められた3000円のアプリを購入する必要がある事。払わなかった場合、グラハム数g(64)年だけ苦しみ続けることになる。google playのアプリは現実でも通用するお金であること。」

3.主人公はGoogleプレイカードで指定されたアプリを購入する。

4.メールの送り主は数週間後詐欺で捕まる。主人公は報道のインタビューに対し「私は騙されたわけではなく、期待値に従って合理的に行動しただけだ」と答えているとのこと。

題名はパスカルの賭け。



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