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あなたに、会えてよかった。  作者: 西崎小春


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18/30

第17話 二人で会いませんか

月曜日の夜だった。

仕事を終えて会社を出たとき、空気は少し冷えていた。

昼間は暖かかったのに、夜になると急に気温が下がる。

こういう夜は、街の明かりが少しだけ遠く感じる。

園田は駅へ向かいながら、スマートフォンを取り出した。

特に用事はない。

ただ、画面を見た。

メッセージアプリ。

美奈子の名前。

最後のやり取りは昨日の夜。

おやすみなさい

それだけ。

会話としては、もう終わっている。

それなのに。

園田はその画面を閉じられずにいた。

恵比寿の駅前は、いつも人が多い。

飲み帰りの人。

仕事帰りの人。

急ぎ足の人。

その流れの中で、園田は立ち止まった。

ななしへ行けば、会えるかもしれない。

でも。

それはまた偶然になる。

偶然でもいい。

でも、今日は少し違う気持ちだった。

園田は小さく息を吐いた。

そして、メッセージを打ち始めた。

今週、どこかで時間ありますか?

送信。

画面に自分のメッセージが表示される。

その瞬間、園田は少しだけ後悔した。

急だったかもしれない。

重く感じるかもしれない。

それでも、もう送ってしまった。

園田はスマートフォンをポケットにしまった。

返信を待つ気はない。

そう思った。

でも、数分後。

ポケットの中で振動が伝わる。

園田は歩きながらスマートフォンを取り出した。

美奈子からだった。

あります

短い返事。

園田は思わず笑った。

こんなに早く返ってくるとは思っていなかった。

すぐにメッセージが続く。

どうしました?

園田は少し考える。

ななしに誘うのは簡単だ。

でも今日は違う。

ほんの少しだけ、勇気がいる。

園田は打った。

ななしじゃない場所で

少し飲みませんか

送信。

その瞬間、胸の奥が少しだけ速くなる。

これは、偶然じゃない。

誘い。

返信はすぐには来なかった。

園田はスマートフォンを見つめる。

数分。

長く感じる。

やがて、画面が光る。

美奈子からだった。

園田はゆっくり開く。

いいですよ

その言葉を見た瞬間、園田は少しだけ安心した。

続けてメッセージが届く。

どこ行きます?

園田は少し考える。

賑やかな店ではない。

ななしの空気に近い場所。

静かな店。

思い浮かぶ店が一つあった。

園田はメッセージを打つ。

代官山にいい店があります

木曜日どうですか

送信。

すぐに返信が来る。

行きます

たった三文字。

でも、その言葉ははっきりしていた。

約束。

園田はスマートフォンをポケットにしまう。

夜風が少し冷たい。

でも、胸の奥は妙に温かかった。

恋というものは、

大きな出来事から始まるとは限らない。

ただ、

一通のメッセージ。

そして、

「行きます」

という短い返事。

それだけで、

夜の意味が変わることがある。

園田はその夜、まだ知らなかった。

この約束が、

これから二人の関係を、

少しずつ、

確実に、

動かしていくことを。

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