鉄の鯨
私は様々なものを見てきました
私は様々なものを知っています
弱き者が強き者に喰われる様
強き者がより強き者に喰われる様
弱き者が強き者に反撃する様
強き者も弱き者も蹂躙される様
景色がたった数十年で変わりゆく様
新たな生物が現れる様
あの生物を見掛けなくなる様
その中でも変わらないものの様
私に他愛も無い話をする人の様
冷たい此処に態々くる人の様
その人も来る頻度が減る様
やがて再び誰も来なくなる様
ジャバジャバと上の方から聞こえてくる様
甲高い叫び声が聞こえてくる様
それも直ぐに聞こえなくなる様
何時まで経っても脳内で響く電子音の様
塩臭い香りがする様
血生臭い香りがする様
少し美味しそうな匂いがしてしまう様
皆がそれに群がる様
もっと沢山見た
見たい物も、見たくない物も見た
それに対して興味も嫌悪も好意も一切抱かなかった
だけど、どうしてだろう
自分の事は見れない
そして、自分に対しての興味が止まらない