再会後 ユリside
静かな夜。
王都ロゼリアに建てられたローズ王立魔法学園の寮の屋上から、ユリは月を見上げていた。
手には薄手の銀糸のマント。風に揺れる白銀の髪を押さえながら、胸に手を当てる。
(……タケルくん。会えた……やっと)
その瞬間の胸の高鳴りを、まだ覚えている。
ギルド前の広場で、ミーナの隣に立っていた彼の姿――懐かしくて、胸が苦しくなるほどだった。
でも。
「……私のこと、覚えてなかった」
唇がかすかに震える。
(仕方ない、ってわかってる。記憶を失ってるって、見ればわかった)
けれど、どうしても心が追いつかない。
あのとき、ミーナに微笑みかけていた彼の優しい顔が、ずっと焼きついている。
(ミーナさんは悪くない……優しくて、まっすぐで……)
でも、どうして。
どうして、彼の隣に立っていたのが私じゃなかったの?
嫉妬心に駆られてつい名前まで調べてしまった…学園に入学してくるなら同級生になる…。
そしたら2人でいる姿をもっと見ることがあると言うこと。
胸がぎゅっと締めつけられる。
「私は……ずっと、タケルくんのことが……」
それは、あの世界で、まだ幼かったあの頃から。
ずっとずっと、そばにいたのに。
戦争で彼を失って、彼のいない世界で、ただ魔法の力だけを極めていった。いずれくる時のために。
(今度こそ、絶対に……)
その手が、ぎゅっと拳を作る。
(今度こそ、タケルくんを守りたい。過去のように、失わないために)
(そのためには――あの子に負けてなんかいられない)
白銀の少女の頬を、夜風が静かになでていく。
彼女の紅い瞳は、そっと祈るように夜空を見上げていた。
「私に気づいて……タケルくん」