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科学者だって魔法を使いたい!  作者: メガ・ウルトラギガ
勇者の目覚め 出会い編
5/16

4 魔女との契約 タケルの覚悟

夜のギルド宿舎。

月明かりが差し込む窓辺、タケルは静かにベッドの隣に座っていた。


ミーナは布団に包まり、まだ少し顔を伏せていた。


「……ごめん」


かすれた声で、ミーナが言った。


「私、またやっちゃった……。暴走して、皆に迷惑かけて、恥ずかしいところ見られて……タケルにまで、心配かけたよね」


「バカか、お前は」


ぽつりと、タケルが言う。


「誰だって怖いさ。自分の力が制御できないってのは、ひどく不安だ。でも……あのとき、あれだけ暴走しても、お前は最後まで“誰かを傷つけよう”なんて思ってなかった。俺は、それを信じてたよ」


ミーナの目が揺れた。


「……信じて、くれたの?」


「当たり前だろ。仲間だからな」


タケルの言葉に、ミーナの目から涙がひと粒こぼれた。


「……ありがとう」


しばらくの静寂の後、ミーナがふと笑う。


「わたしね、魔法学園を目指してるの。魔力さえあれば誰でも入学できるって聞いて、ずっと頑張ってきたんだ」


「魔法学園……?そういえば出会った時そんな事言ってたっけ」


タケルはその言葉に反応した。


「うん。私みたいな獣人族って、魔法が苦手な種族なの…でも、あの場所に行けば――もしかしたら、何か変われるかもって、そう思ったの」


「……理由はそれだけか?」


「ううん――」


ミーナは一瞬視線を逸らしたあと、勇気を振り絞って続けた。


「私……憧れてたの。聖女ユリ様に。あんなに綺麗で、強くて、みんなを救って……同じ女の子なのに、何もかも違って見えたわ」


タケルの瞳がわずかに揺れる。


(ユリ……)


彼の胸に、なぜか説明できない感情がふっと広がった。


「なぁ、昼間助けてくれた人たちってーー」


その瞬間だった。


「……いい夜ね、実に」


ふわりと、甘く妖しい香りが漂ってきた。


部屋の扉がいつ開いたのか――そこにいたのは、漆黒のローブをまとったエルフの女性。


豊満な肢体を包むその衣は、まるで闇夜の海のように艶やかで、紫の瞳が妖しく光っていた。


「黒の魔女……マリア……なんでここに…!ウェルトに居たはずじゃ…」


ミーナが息を呑む。


「ふふ、仕事でちょっとね♡それにしても昼間の騒ぎ、しっかり見せてもらったわよ」


マリアは微笑むと、タケルの前まで近づいてきた。


「あなた、名前は?」


「……ヤマト・タケル」


「ふふ……良い名前ね。でも、もっと良いのはその力よ」


マリアは手を伸ばし、タケルの頬に指を添えた。


「魔力ゼロ。それでいて魔原子の構造と流れを本能で読み、再構成できる。ーーそれはね、常識の枠外なの。いずれその力、手に余るわ。私の“弟子”になりなさい、タケル」


「は……?」


「ちょ…!突然すぎますっ!」ミーナが割って入る。


「そうね、でも――」


マリアはタケルに向き直ると、声を低く、しかし真剣に言った。


「もしこの提案を受けるなら、私はあなたを…そうね、“魔法学園”に推薦してあげる。私の推薦なら、魔力ゼロでも入学は通るわ。……どう? 悪い話じゃないでしょう?」


タケルは目を細めた。


「……なんで、俺を?」


マリアの瞳がわずかに揺れた。


「理由は三つ、一つ、あなたの才能。私が見てきたどんな魔法士より、面白い。二つ目――」


彼女は声を潜める。


「あなたの中に、“ユリ”と“ハルト”と同じ気配を感じた」


「……!」


タケルは言葉を失った。


「貴方たちは、不思議な魂の色をしているの…それと何か関係があるのかしら?それにあなたの目が、彼らを追っているように感じた。彼らもまた同じく貴方を…ね、それに、あなた自身はまだ……“思い出していない”みたいだけどね?」


「……何かを、救わなきゃいけない気がしてる」


タケルは素直に答えた。


「でも、それが何なのかは……分からない」


マリアは小さく笑った。


「その気持ちがあるうちに、力を手に入れなさい。あなたが何を忘れていようと、それがどれだけ茨の道だったとしても、立ち止まらず進まなきゃいけない」


静かに、しかし重く響く言葉だった。


「……分かった。弟子になるよ、マリアさん」


「呼び捨てでいいわ。じゃあ契約成立。これから一ヶ月、私のもとで地獄の修行よ」


マリアはくすっと笑いながら、魔力で宙に小さな封蝋のついた紙を浮かべた。


「これは、あなたへの推薦書。修行をやり遂げたら、これを持ってローズ王立魔法学園へ向かいなさい」

「あぁ、わかった」

「ふふ、明日に備えて英気を養うことね。そこにいる子猫ちゃんもよ?」

「エッ!?は、はいっ!」


タケルはそれを受け取った。


――ここから、自分の物語が本格的に始まるのだと、そう感じていた。


……そういえば


「結局最後の三つ目ってなんだったんだ?」


ロゼリア王都1日目がおわった。


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