ガーディアン
静かな都市の中を1人のSIS-3が巡回していた。SIS-3は決められた場所を通り、危険な物や人間がいないかを確認し、点検をしている。SIS-3は今は誰もいない病棟へ向かった。SIS-3は4階にある管理室で点検を始めた。自身の腕を切り替え、病棟の管理室にアクセスした。
「…。東エリア病棟、点検完了。システムは稼働中。」
シロは点検を終えると手を戻した。この作業も今日で1850日。もう5年以上、SIS-3達、ガーディアンはこの都市のインフラを維持し続けている。ガーディアン達には生命回路と呼ばれる、人間の細胞と最新鋭のテクノロジーによって開発された機構を持っている。これは活動に必要なエネルギーを太陽光だけで維持できる。更に、傷ついても修復能力を持ち、環境に適応する能力を持つ。しかし、生命回路自体の維持には定期的に生命液で修復しなければならない。
「生命液、供給が安定。2日後に生命回路の修復を開始する。」
SIS-3達ガーディアンはそれぞれのプログラムと別に、共有された意識を持っている。共有意識を利用し、ガーディアン達はコミュニケーションをとっている。SIS-3が病棟の清掃をしようと、熱探知で周囲を検査した。すると、地下室に動物よりも大きな反応があった。SIS-3が地下室の扉を開くと、震えながら、写真を握っている少女と、少女を守るようにしているお爺さんが端に座っていた。
「私はSIS…シロ。医療型のガーディアンです。お怪我は?」
シロは2人が答える前に検査をした。少女は栄養失調、老人は脱水症状、栄養失調、貧血になっていた。
「ロ、ロボット?」
「なんじゃ!」
お爺さんは杖を振り回して必死に抵抗していた。
「すぐに水とご飯を持って来ます。」
シロは急いで2階にある食料を取りに向かった。向かう途中で、共通意識へ連絡をした。
「人間の生存者を2人確認。東エリアの病棟です。2人とも、治療が必要な状態です。応援を」
「待て、他に誰かいたか?」
「どこからやって来た?何故ここにいる?」
「応援を送る。」
シロが地下室へ戻ると、すぐに水を渡して、ご飯も渡した。少女はすぐに食べていたが、老人は警戒して食べていなかった。
「安全な栄養食です。どうぞ」
「食べるなメアリー!」
静かな病棟で、老人の怒号が響き渡る。外からはガーディアン達の足音や話し声が聞こえる。お爺さんは少女とシロの距離を離した。シロと少女の間になるように老人は入った。
「落ち着いてください。ここは安全です。お二人共、危険な状態です。もうすぐ他のガーディアンが来ます。」
シロがそういった途端、老人は顔色を変えて立ち上がった。老人はシロの腕を掴み、投げ飛ばすと少女のメアリーと食料を持って地下室から逃げ出した。
「生存者が逃走。我々に怯えている様子です。」
「了解。君は巡回に戻れ。後はこちらで対処する」
シロは指示通りに清掃へ戻ることにした。地下室の散乱した薬品を片付けていると、老人が座っていた椅子の近くに何かが落ちていた。ペンダントだ。ペンダントの写真には老人と少女。他に男女の2人組と一体のロボットが映っていた。ペンダントの裏に付いているスイッチを押すと、写真が動き始めた。コマ送りのように、少しずつ。
初めはみんなが笑顔だったが、突然、女性の顔が青ざめ、倒れた。赤い液体が飛び散っていた。男性が怒ったようにロボットに飛びかかったが、男性も同じように倒れた。少女は怯えて、動けなくなっていた。ロボットが少女に向け、ナイフを刺そうとした。次の写真では老人が少女の前に立っていた。そして、最後の写真では赤い血でカメラが覆われていた。
「…分析開始…。…新しい技術だ。どうして?」
「こちらSIS-3。生存者の持ち物を確認。分析結果が不明です。」
「回収に向かう。その場で待機だ。」
しばらく待っていると、数人の応援が来た。生存者はどこかへ逃げられてしまった。ペンダントはより精密な検査が出来る研究所で分析されることになった。SIS-3にとってはこれまでの日常で最も多くの出来事があった日になった。彼らはどこへ逃げたのだろうか。シロはそんなことを考えながら今日も充電施設で眠った。