勇者の席はあいにく空いておりませんゆえ
前回のおさらいだ。
僕は病気で現世を去った。転生して早々死にそうになった、何者かに助けられた。転生=最強主人公と思っていた僕。目の前に現れたのは‘’最強主人公‘’。
ん??
んん???
転生者ってすごく珍しいって小説ではよく聞くし、だからこそ転生した人はチート級スキルを元々持っていて周りからもてはやされるってお決まりのはず、、、
、、、おや?チート級スキルも持ってるし周りからもてはやされてる人が目の前にいるじゃないか。
「俺はこの世界唯一の勇者なんだ!数年前に沢山のスキル《ギフト》を受け取って転生して魔王に支配された世界を変える為に冒険に出ているんだ!」
凛とした顔つきで自信満々に僕に語りかけてくるが、、、
そもそもスキルって何だ?僕は受け取っているのか?
「あの、、スキルってどう確認すれば、、?」
「あれ、転生したときに”天の声”に何か言われなかったか?」
あー、、そう言われれば何か言われてたような、、、一言くらい。
「まぁ今確かめてやろう。どれどれ」
「スキルは、、”村人”だな」
「え、、、村人、、、?」
村人って設定じゃないの?スキルなの??
「それってどういうスキルで、、、?」
「【決まった職業に就いて80年を平凡に生きることができる】だそうだ」
なんだそれ。スキルの意味がないじゃないか。
少し啞然としていると
「勇者様はとても博識で!」
「当り前じゃないの!勇者様はこの世界で一人だけなのよ!」
「いつかはこの俺様と戦う運命だけどなッ」
このよくある勇者様の取り巻き的なヤツ、実際に聞くとちょっとくどいな、、、3人喋らないといけない縛りなのか。
「それに君のレベルは今は3だな。村人となると、、生涯で15までレベルが上がれば大したものだな」
やめてくれ。これ以上聞きたくない。前世も一般人で今回も一般人で、しかも成り上がることすら許されないのか。
「このスキルというのは、、それこそ”勇者”とか!”冒険者”とか!そういったものに書き換えられるなんて事はあり得たり、、」
「それは無いな。絶対に無い」
無い、、、だって、、、?
「最初に与えられたスキルは言わば”ガチャ”みたいなもんだ。その引きで人生が決まるし書き換えられもしない。それにーーー」
「さっきも言ったように最初に身につけたスキルでレベルの上がり方、後から得られる”後発スキル”の種類が決まるんだ。だから冒険者や戦闘者なら修行の末に”勇者”になれるかもしれないが、その可能性もこの国に伝わる書物曰く0.1%だから”有り得ない”と言われているんだ」
もう絶望だろ、、、これがゲームなら即リセマラだ。
「まぁそんなに悲しい顔なんかするなよ!俺たちがこの世界を守ってやるからさ!」
「、、、はい」
悔しくて、辛くてどうしようもないが今さらどうしようもない問題なのかもしれない。
今の年齢は、、大体15歳くらいか。残りの65年働きながら過ごすのも悪くないのかもしれない。
前世は健康にすら過ごせなかったから。
「とりあえず俺の町まで案内してやるよ!そこで職業を見つけて生活するといいぞ」
「ありがとうございます、、」
そうして僕は勇者たちに案内されて近くの町に入った。
「おいジャック!この子、森で襲われかけてたんだ!今日一日泊めてやってくれ!」
「おうおう、勇者様のお願いなら断れねぇな。いいぜ坊ちゃん」
「あ、、すみません。ありがとうございます」
ぐう~
大きめのおなかの音が鳴った。
そういえばここに来てまだ何も食べていない。お腹が空いた。
「坊ちゃん、ハラへったか。んじゃ歓迎の飯でも作ってやるよ!」
そして運ばれてきたのは大きなフライドチキン、的な何か。
おいしそうだ。
「ガッツリ食ってくれ!ビールもあるからな!あ~坊ちゃんはまだ子どもだから飲めねぇかガハハハッすまんすまん!」
「いえ、ありがとうございます。いただきます」
美味い、、、前世ではまともにご飯も食べられなかったから尚更だ。
「美味そうに食うなぁ。お、そうだ名前はなんていうんだ?」
「名前、ですか?」
そう言われれば名前なんて知らない。転生者はどうやって名乗るんだ?
「名前、、まだわからなくて、自分で考えてもよろしいのですかね、、?」
「もちろん!名前には魂が宿るなんて言われてるからな!よく考えてみな!」
「わかりました」
ごちそうを頂いてベットに案内された。
、、名前か、、どうしよう。
ネーミングセンスがあるわけでもないし、、、
ふと昔やってたRPGを思い出した。
病気になって結局クリアできずに終わってしまったんだっけ。
そうか、その時の名前だ、、、そうしよう
名前は確か、、、
「おう!おはよう坊ちゃん!名前、決まったか?」
「はい!決まりました!僕は、、、」
「”ユーリ”です!よろしくお願いします!」
残念ながら勇者の席は空いてなかったけど、今回はちゃんとクリアしてやるからな。