第捌話
魔理沙サイド
(ここは…あ、あれ声がでない!)
「ひっぐ…ひっぐ…」
(あ、あれは?誰だ?早く助けないと…!?体がうごかない…)
えあたしの前には黒髪の少女が泣いていた。
助けようとしても体は動かない。
「大丈夫かい?」
すると一人の男性が声をかけた
「ひっぐ…ママに…すて、られた…の」
「そっか…それは大変だったね、君の名前は?」
「わ、私は…まりさ、きりさめまりさ…」
「僕は謙吾、戊眤謙吾って言うんだ。君の面倒を見てあげよう」
「ほ、ほんとうに?もう私をきらわない?」
「嫌うもんか、君は普通の子供だ。どこに嫌う要素があるものか」
「…うれしい」
(う、嘘だ!私はあの男と会っていた?で、でも私にはちゃんと記憶がある!ちゃんとした家庭で生まれて、初めから私は金髪だった!
…でも、なんでだろう…彼を見ていると不思議に既視感がある…)
この時代の戊眤謙吾は今と姿が違った、故に魔理沙の感じる既視感はこの時代の戊眤謙吾に感じた既視感だった
「さぁ帰ろう、君は一人じゃないからさ?」
「うん!」
(ま、まって!)
彼らが歩き出したと同時に魔理沙も瞬間移動する
「ッ!」
その家を見た瞬間、魔理沙はほとんどの記憶を思い出した
(そうだ…この家、うん間違いない私、いや"私たち"が住んでた家だ)
幼き頃の魔理沙と謙吾が家に入ると、魔理沙は暗闇に取り残された
(そっか…そうだったね、"約束"したんだった。)
その暗闇に一人の人物が立っていた
「いやだ…一人は嫌なんだ…だから早く目を覚ましてくれよ!」
その叫に応えるようにまた一人が現れた
「師匠…これは俺の失態です、だから…自分を否定しないでください」
魔理沙は確信した。今現れた人が雹雪幽であると。
そして自分は一度死んだのだと…
あれは何百年も前…謙吾と幽に拾われた私…ううん私と妖夢と早苗は森を歩いていた。
ちょうど謙吾と幽が二人で買い物に出掛けていた時だったかな…
私達は謙吾によって修行を積み、わ魔の動物を狩ることを遊びとして誰が1番多く狩れるか勝負をしていた時だった。
「へへ〜ん!私が1番!」
「…惜しかった」
「ふ、二人ともすごいなぁ…私なんかまだ鹿を狩れないのに…」
いつも私が勝負に勝って、妖夢が悔しそうにして、早苗が落ち込んで、それを二人で励まして。
そんな日々だった。のに…
「グァァァァァ!!」
突如、森中にこだました声。魔熊の鳴き声だった。
いつもよりたくさん狩っていたその血を嗅ぎつけてやってきてしまった
「や、やばい!」
「子、これただの魔熊じゃないです!大魔熊じゃないですか!」
「逃げよう!!」
私達は走った。走って、走って…止まれば死ぬという事実だけが私たちの背中を刺した
けど、間に合わなかった。
謙吾たちが買い物から帰ってきた時にはもう、私達は瀕死だった…
(このままじゃ…死んじゃう、何も…恩…返し、できてないのに…)
私は朦朧とする意識の中、一つの魔法を唱えた
「奇跡の輪廻転生」
今、わかった。この魔法は瀕死の私じゃ発動すらできなかった。
けど早苗が"奇跡"を与えてくれた
「お前ら…その魔法は…」
輪廻転生を強制させる魔法なんでもちろん禁忌を犯す魔法。
でも、そのくらいあなたといると楽しかった…嬉しかった、ほっとした。
「…私たち、の…記憶を消して?」
「また、会えたら…思い、出させてね?」
妖夢と早苗は私の思うことが理解できたのかその言葉を紡いだ
「…わかったッ!ただ、約束してくれ…ちゃんと帰ってこい、ここがお前ら…いや、"俺ら"の家だからッ!!」
「うん…」
「…約束、だから、ね…死んじゃ、ダメ…よ…」
その言葉を紡いだら、早苗と妖夢は動かなくなった。
さぁ私も言葉を紡ぐ番だ
「ありがとう…"またね"」
「あぁ"またな"」
今、私が見ているのは私たちが死んだ後の謙吾、いやお師匠の行動なのだろう
だから、私は動く。ちゃんと転生して、また弟子になれたよって
「「魔理沙」」
その言葉に振り向く
「…ありがとうな」
「はぁ、記憶戻って初めての言葉がそれですか…」
「魔理沙さんらしいですね」
「はは…てか妖夢、お前随分と喋れるようになったな!」
「確かに」
「…秘密です」
「今のも!昔の妖夢だったら「秘密」で終わらせるもん!」
「あぁ!もう!うるさいですね!それより今は師匠を助けるんでしょ!」
「えぇ、さ、行きますよ」
そこで私たちの周りにあった暗闇は眩しい光となって…私達は意識を手放した