八話エルフさんにー、出会ったー
簡単なあらすじ。
謎のエルフに声を掛けたら即効で転生者とばれたんだが?
まさか声を掛けた瞬間に転生者と見破られてしまうとは、それに言葉からして俺を探しているようだし。
『おいおい、ナビ。
転生者を探している確率は少ないって言ったよな』
『少ないってだけでゼロとは言ってないですー』
脳内で言い合いをしながら目の前のエルフに対する警戒を最大限高める。
一目で俺が転生者と見破ったということは、ナビが言っていた魔素関知のスキルのレベルが高いのだろう。
そしてスキルのレベルが高いということはイコールではないかも知れないが、それだけレベルも高い可能性がある。エルフの目的がはっきりするまでは警戒しなけばいけないだろう。
こちらの警戒に気付いてかエルフは朗らかな敵意のない笑顔で話しかける。
「警戒してるねぇ、何で転生者と分かったのか不思議「俺のレベルが低いのを魔素関知か何かのスキルで把握したんだろ」……へぇ、もうそんな事を知ってるんだ」
失敗したと思った。
つい大人げなく、先程の意趣返しに被せ気味に答えたが、それでこちらが既にある程度知識があることがバレてしまった。無知な振りをすればそこから敵対した時に相手を騙すことも出来ただろうに。
「君の貰ったスキルは情報を得られるんだね?」
何故か勘違いされた。
『今までの転生者にはナビみたいなサポートはなかったのかよ』
『そうね、転生者をサポートする精霊はアタシが初めてね。
言葉が通じるからこそ起こる文化的な解釈の違いによるすれ違いを防ぐためにどうこう、って聞いてるけど今に思えば、最初の虎に殺されすぎないようにする為の保険だったかもしれないわね』
『まじかよ、俺を転生させた神はやっぱりぶん殴るっきゃないな』
新たに殴る決意を固めつつ考える。
転生者がスキルを貰えることを知っていたようだが死に戻りガチャではなく、ナビからのサポートをスキルと勘違いしたのは運が良かった。
これなら、もしエルフが敵であったとしても、いざとなれば死んで時間を巻き戻せば逃げることも可能だろうしギリギリまで情報を集められる。
「だったとして、あんたは俺に何か用があんのか?」
まずはジャブとして、相手の目的を探る。
スキルについての言葉には聞き手によっては肯定のようにも受け取れるブラフを入れつつエルフに質問する。
「私の目的? 一応は転生者の保護になるかな」
「だとして何でこんなに早くここにこれたんだ? 別に転生者がこの世界に来ること自体は知らされている訳じゃないのに来るのが早すぎるだろし、何で転生者を保護する。何処か国の機関なのか?」
そう、一番の疑問はそこだ。
仮に言っている事が本当だとしても察知するまでが早すぎる。
「うーん、転生者がこの世界に送られて来た時にね、時空の歪みが発生するのよ。
私が初めて転生者にあった時も偶然近くに送られてきて、その歪みを感じて発生源に移動して転生者にあったの。
で、紆余曲折あってその子と友達になってその子が寿命で死ぬときに言ったの、私が死んだ後にもし他にも転生者が来たら自分と同じように助けてあげてって。
だから、私は転生者が来た時に発生する時空の歪みを察知する魔法を開発したの。それから何回か転生者さんを助けてあげて、周期的にそろそろ次が来そうだったから待ってたら貴方が来た時に発生した時空の歪みを察知して急いで飛んできたってわけよ」
『どう、思うマスター』
俺と同じように話を聞いていたであろうナビが問いかけてくる。
サポート精霊なのだから聞くのは俺だろうと思いながらも考え整理する意味も含めて話す。
『本当かは分からないが、嘘は言っていないように思う』
転生者が世界に降り立つ時に時空の歪みとやらが本当に発生しているかは分からないし、昔話もその真偽は分からないが嘘は言っていないように思う。
一応、信用しても良さそうな気がする。
「それで保護って具体的にどうするんだ?」
「近くの大きな町まで連れてって自立できるまでの支援が主ね。
今まではそれで大体何とかなったけど何処か行きたい場所があれば案内するわよ」
案外まともそうだ。
異世界にきたばかりで何で行きたい場所を聞いたのかと思ったが鑑定のような情報を取得出来るスキルを取得していると思われていたな。それなら既に目的があるかもとは考えてもおかしくはないな。
『なぁ、ナビ。そういえばそのダンジョンのある町の名前聞いてなかったな』
『そう言えばそうね。
目的の主神様のダンジョンのある街はグーバリーよ』
「グーバリーだ」
「え?」
余程、想定外だったのかエルフは珍妙な声を上げた。
「聞こえなかったのか? ダンジョンのある街のグーバリーだよ」
もう一度言うと、エルフは恐る恐るといった様子で訪ねてきた。
「その、差支えなければでいいんだけど、理由とか聞いてもいい?」
「ああ、ダンジョンを攻略して俺を転生させたクソ神の面を一発ぶん殴らなきゃ、気が済まねぇ」
「えぇ……」
凄いドン引きされている気がするが、まぁ初対面の外国人が自分の国の宗教の神をぶん殴るとか言ったらそりゃ、こいつ大丈夫かとなるよな。
なので、乗りかかった船ではないが、いっその事全部話してしまおう。べ、別にエルフさんが美人な人だったからとか、そんな理由じゃないんだからね!
そんなこんなでここまでの経緯を掻い摘んで説明する。勿論エルフさんに一度殺されたことは黙っておこう。一緒に行動するのに負い目を持って嫌な空気になると俺がたえられないし、あれは偶然起きた不幸な事故だしな。
「俄かには信じがたいわね」
「なんなら、何か一つ秘密とか教えてくれれば一度死んで証明してもいいが?」
流石に疑われているようだからなんなら一度死に戻って証明しても良い。
「いいえ、信じるわ。今までの転生者も凄いスキルを持ってたし」
「ちなみに他の転生者はどんなスキルを持ってたんだ?」
俺より前の転生者も凄いスキルを持っていたようだが気になるな。
「どんな場所でも安全安心にお風呂に入れるスキルでしょ」
「ん?」
「他にも超高性能なメイドさんロボを召喚するスキルとか、どんなに汚れた水でも一瞬で飲めるようにしちゃうスキルとかいたわよ」
確かにすごいが、どうやら今までの転生者は直接戦闘に使えるスキルは貰っていないらしい。
「それじゃあ改めて、私の名前はシャルロット・マジョリーナ・クロトカゲ・マッズイーノ・ナンデダロよ。長いからシャルって呼んでね」
何か長いうえに、変な言葉が混じってる。
「シャルロットはともかくその後が変なんだけど、何か意味があんの?」
「さぁ?」
「さぁ⁉」
意味を聞いたらさぁ? とか返ってきたんだが、何故?
「私エルフでこう見えて結構長生きなんだけど、色々と研究で人間の国に貢献したら何か名前貰えたのよね」
爵位的な奴だろうか?
「それで、貴方は?」
「俺は勝山ラルフだ、よろしく」
名前を聞かれたので今度はこちらが名前を教えてそれから握手をするために手を出す。
でも、よく考えるとアニメとかでよくあるので自然と手を出したが初対面で異性に握手を求めるのちょっとどうなのだろうか?
「ラルフね、よろしく」
しかし、そんな考えは杞憂だったようでシャルは笑顔で手を握ってくれた。柔らけ~、こんな美少女に無償で手を握ってもらえたなら、もう死んでもいいかも。死んでも蘇るけど。
前世では経験はなかったから分からなかったが、今ならアイドルの握手会に行く奴らの気持ちもわかるかもしれない。
「それじゃ、このまま真っすぐグーバリーに向かう?」
手を放すのは名残惜しいが質問に答えよう。
「グーバリーに向かいつつも、先ずはある程度レベル上げを優先しながら移動しようと思ってるんだけど、ダンジョンに挑むために最低限のレベルとか資格があるのかな?」
ここは当初の予定通り目的のダンジョンがあるグーバリーを目指しつつも道中でレベルを上げようと思っている。
とは言え、現地人の協力者が得られたのだからダンジョンに必要なものを尋ねてみた。
この世界のシステムや法則的なものではなく世間一般の常識ならナビより彼女に聞いた方が良いと思ったからだ。
「ん-、私は一応、昔だけどグーバリーのダンジョンに挑戦したことがあってその時はダンジョンギルドに登録すれば特に資格とか条件はなかったから、変わってなければ特に問題ないと思うしダンジョンに出現するモンスターはレベル1からだからレベルも大丈夫だとは思うけど、流石にレベル一桁は止められそうだからレベル上げは賛成かな」
ほぅ、何と彼女は目的のダンジョンに潜ったことがあるらしい。
その彼女に賛成して貰えたのなら予定通りレベル上げしながら移動で問題なさそうだ。
「じゃあ決まりかな、シャルはここからグーバリーまでどれ位かかるとか分かる?」
「さぁ?」
「そっかぁ」
本日二度目のさぁ? 頂きました。
「あはは、結構転生者って降り立ってすぐ移動するから探知して急いで飛んできたからね。
私が飛び立った所から方角からいって一週間から二週間もしない位だとは思うけど正確な距離となると大きな道やら村なんかに行かないとちょっとわかんないかな」
まぁ、何もなければ転生者が降り立ってすぐに町とかを目指して動くのも定番だし、今まで保護とかする時にそういうことがあったのなら急いで飛んできて分からなくなるのもしかたないのかな?
「じゃあ、ある程度俺たちの位置が分かればレベルさえ上がれば飛んで来た時みたいに一飛で行ける?」
「あ、それは無理。あの魔法は出力と角度を調整して射出するだけだから微調整できなくて町とかに行くのには向かないのよね」
「それって、ただのミサイルでは?」
「ミサイルが何かは知らないけど、便利なのよ。微調整が効かないから、さっきも言った通り町とかに行くのには向かないけど、通常の移動の数百倍の速さで移動できるし、バリアの中に入るんだけ、中がぐるんぐるん回って楽しいんだから」
確かに高速で移動できるのは魅力的だが、あの勢いで飛んでいて、中が固定されてないとか悪夢でしかない。これが普通だとすると異世界人恐るべし。
「でも、前に人を乗せた時は、次は絶対に乗らないって言われたのよね」
当然だろうし、異世界にも普通の感性の人がいるようで安心した。
「まぁ、いいわ。これからよろしくね、ラルフ」
「おう」
こうして俺の異世界での生活が幕を開けた。
「それで街道はどっちかしら?」
迷子という形で。
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