七話 人降る森の道~
「何じゃ、ありゃー!」
起き抜けの開口一番に叫んだが勘弁してほしい。
いくら異世界とはいえ、あんな前触れもなく隕石だかミサイルみたいな飛翔物体が飛んでくるとは想像できないだろう。
「アッハッハッハ、マスター大丈夫?」
一頻り憤慨しているとナビが腹を抱え笑いながら声をかけてきた。なんなら笑い過ぎて目に涙まで溜めてやがる。ムカつく。
「い、いひゃい、マスター」
余りにムカつくので気づいたらナビの頬っぺたを掴んでムニムニしてた。柔らかい。
気が済むまで柔らかい頬をムニムニしてか解放する。
「結局、あれは何だったんだ?」
そして、話題を俺が死んだ原因にシフトする。
ジャイアントタイガーはノーカンとして、初めての戦闘で周囲への警戒を怠っていたというのはあるが、いくら何でも空から高速で向かってくる物体は気づいても驚きで回避等出来なかっただろう。
「うぅ、ヒリヒリする。
分かんないわよ、それに言ったと思うけどワタシの観測出来るのは飽く迄もマスターの五感を介してだからマスターが認識できない物は認識できないし、教えてもらったのも、あのデカイ虎から上手く逃げる方法であってその後までは教えてもらってるわけじゃないわ」
主神様も世界の管理でお忙しいところを部下の神の後始末として俺への対応をして貰っているし流石にあの飛翔物体は予測出来なかったのであろう。
そうなると俺に出来ることは。
「なぁ、この後の復活で一分前を選んでその後死んだら、一時間前や覚醒時とか選べんの?」
一度、一分前に戻ってから飛翔物体について調査してどうにもならないようならより前に戻って遭遇そのものを回避するしかないだろう。
幸いあのゴブリンなら時間をかけずに倒せるだろうから五分か十分位あれば俺を直接狙ったものでなければ、それなりに飛翔物体が到着する前に距離を置くこともできるだろう。
「大丈夫よ。死に戻りの基点は連続する時間の中で覚醒した瞬間で死に戻った時じゃないから、一分前に戻った後にそのまま死んでもそのまま一時間前や覚醒時でも戻れるわよ」
それなら問題ないだろう。
「あのミサイルみたいなのから声が聞こえた気がするんだが聞こえたか?」
「ああ、そういえば確かに誰かを探しているような声が聞こえた気がするわね」
死の間際に飛翔物体の着地点から人の声が聞こえた気がする。それも誰かを探しているような声だ。
「その探し人って、俺の可能性はあると思うか?」
あのタイミングで森の中に突然現れた誰かを探す人物。普通に遭遇したのならまだしも、あんな奇抜な登場をした人物が普通の人を探しているとは思えない。
この世界での異世界人の扱いは知らないが可能性はあると思う。
「それはないと思うんだけどねぇ」
「理由は?」
だが俺の推測はナビに否定されてしまった。
「そりゃ、マスターを探している可能性が全く無いわけじゃないけど、転生者が世界に降り立つ瞬間なんて告知する訳でもないし、ましてや降り立って一時間もしない内に異世界から来た人間を補足して人を向かわせる何て、流石に無理があるわ」
確かに、ある程度時間が経ったのならまだしも、まだ異世界に来て殆ど時間が立っていないのに俺の存在を知って探しに来るのは確か普通に考えて有り得ないが、あんな登場の仕方をする奴に常識を当てはめるのは違う気がする。
「此処でこれ以上考えても仕方ないな。
ガチャを引いてから確かめるとするか」
「ドンドン、パフパフー」
それ毎回言ってる気がするが言わないといけないルールがあるのだろうか?
そう思いながらガチャのレバーを引く。
《ライフ1を獲得しましたので残り蘇生回数は104回になります》
ガチャの結果はライフ1だった。
復活出来る回数が増えるのでハズレではないが、今はスキルの方が良かったからちょっと残念。
「そういえば死ぬ前に何か言おうとしてたけど、何か聞きたいことでもあった?」
「ああ、今俺のレベル低いじゃないか」
「そうね」
今の俺のレベルは三だがナビの説明から行くとこれは、平均的な三歳児と同じ位のレベルになる。
一般的な成人と比較して、とても低いレベルは疑惑を呼ぶかもしれないし、見ただけでレベルを判別出来るようなら、目的地であるダンジョンのある町に真っ直ぐ行くよりも途中でレベル上げをしたりする必要があるのではないかという俺の考えを伝える。
俺の考えを伝えている間にナビは格好いいウィンドウを開いて何かを確認しているが、こいつ話聞いてんのか?
話を聞いた後にナビはウィンドウを閉じた。
「うーん、調べた感じだと魔素感知のスキルで相手の魔素量や大雑把にレベルは分かるようだけど、それなりにスキルのレベルが高くないとはっきりと判別出来るわけじゃないから大丈夫だと思うけど、ダンジョンの方はレベルで行ける階層を制限しているみたいでダンジョンを管理している組織も簡単にレベルが分かるみたいだから途中でのレベル上げはいいんじゃないかしら」
その後も時間ギリギリまで話し合い、詳細な地図はないのでダンジョンのある町に向かいながらレベルを上げる方向で方針は決まり時間が巻き戻る。
◆
《レベルが上昇しました。レベルが3になります。》
《レベルが上昇しました。レベルが4になります。》
ゴブリンを殺した直後に巻き戻りレベル上昇のアナウンスがなるのだが、先程と違い一度死んでガチャを引いた事によるジョブによる魔素獲得で更にレベルが上がったようだが、直ぐに移動しなければ飛翔物体が落ちてくる。
『ナビ、方向は正面で問題ないか?』
『ええ、そのまま正面に向かって問題ないわ』
簡単に確認して駆け出す。
レベルが上がったからか気持ち、足が早くなったような気がする。
走りながら上を見れば頭上には高速で落ちてくる飛翔物体が迫ってくる。
後十数秒もすれば地上に落ちて被害をまき散らすだろう。
『マスター、もう落ちるわ。木の後ろに隠れて』
言われるがままに近くにあるなるべく大きな木の裏側に身を寄せる。
直後に飛翔物体が地面に着弾し大きな音と衝撃をまき散らす。
前回と違い至近距離ではなく離れていたのそれ程ではないが、見た所爆発等ではなく着地の衝撃だけであれほどの威力と中に人が居るのを見るに敵地に被害が出しつつ突入、制圧をするスキルか魔法かは分からないが、あんな登場をする位だからきっと中に居る人は緊急な用事でもあるのかもしれない。
『どうするマスター、声掛ける?』
『いや、少し様子を見よう』
ナビに声を掛けるか聞かれたが、相手の素性や目的も分からないので、ここは様子見をする事にする。
しばらく様子を見ていると着地の衝撃で舞い上がった砂埃が段々と収まっていく。
『エルフ?』
そうして砂埃が完全に収まるとクレーターが出来ておりその中きら一人の女性が現れた。
距離があるためにハッキリとは見えないが緑色の大きな三角帽子の下に通常の人間と比較して尖った耳が出ており思わずエルフと脳内で呟いてしまったがエルフでいいのだろうか?
『なぁ、あの女性ってエルフか?』
なので手っ取り早くナビに聞く。
『そうね、エルフよ』
エルフ。
ファンタジーでお馴染みの定番種族。
森に住み、色白で見た目も美ししものが多く、魔法が得意だったり精霊と仲が良かったり、人間と比べて寿命が長く人間の上位互換のような存在だが、性格は傲慢で人間を見下すのも多く、寿命が長い所為か人間に比べて数が少なくあまり纏まって生活しない印象がある。
元々の原典は線が細いスレンダーな種族たが、日本で魔改造された結果、かなり豊満な体型のエルフも増えている。
『異世界なのにエルフなんだな、てかナビも日本語とか使ってるよな? 自動翻訳的な奴か?』
エルフは元いた世界の空想種族で異世界に同じ名前の種族がいるとは偶然だろうか?
それにナビはまだしも、一つ前の死ぬ時にあのエルフが喋っていたのも日本語だった気がする。
さっきは、突然の事で気にする余裕はなかったがよくよく考えるとおかしい。
説明を受けてないだけで自動で言語を翻訳するスキルでもあるのだろうか?
『あぁ、それね。
この世界はなんと日本語が公用語なのよ』
『な、何だってぇ!?』
まさかの事実。
異世界で公用語が日本語なんてことがあるなんて一体どういうことだろうか。
『この世界何度が滅びかけてるんだけど、前に滅びかけた時に日本人の転生者が残った人類を纏め上げて世界統一したのよ。
その時に色々あって日本語に言語を統一したらしいわ。
それ以降は日本語が、正確には古代統一語が共通言語とした浸透したし日本語が通じるから転生者は日本人が選ばれるようになったらしいわ』
おいおいマジかよ、そいつ凄いな。
一体どういう経緯でそうなったかは知らないけど、王様になって言語すら変えちまうなんて途轍もない奴だな。
そうやって驚愕の真実を聞いているとエルフの方に動きがあった。
何かしら魔法を使ったのか着地の際に出来たクレーターが瞬く間にならされていき、元の状態に戻っていく。
完全に修繕が終わったのを確認して隠れている木から出てエルフの元に向かう。
『あら、行くのマスター』
『ああ、情報を得るためにもいつまでも隠れてても仕方ないし、ああやって綺麗にしているってことは、悪い人じゃないかもしれないだろ』
『自分がここに来た痕跡を隠すためかもよ?』
言われてそうだな、と思ったが最悪は自殺なりなんなりすれば逃げられるだろう。
一応、頭の中で有るかも分からない近くの村人という設定を練りながら近づいていく。
ある程度近づきエルフがこちらに気づいたようなので声を掛ける。
「おーい、そこのアンタァ、この辺りで大きな音が「あ! 転生者さん発見!」……」
即効でばれたんだが?
死亡数0
ガチャ獲得・ライフ1
残りライフ104