四話ガチャ空間「おかえり」
帰って来ましたガチャ空間。ただいま。
何かおかえりと聞こえた気がするけど、きっと気のせいだろう。
先程と変わらない主張の激しいガチャマシンと、少ししおらしい雰囲気を出したナビがいた。気持ち悪い。
「マスターは凄いわね、あの大きな虎に殺されてピンピンしてるなんて」
そう言われてああ、と思う。
確かに一撃で意識を刈り取られてそのまま死んだとはいえ、この短時間で二度も死んだが特に精神的に異常はないな。
でも。
「俺を転生させた神が精神を弄っててもおかしくはないな」
「あー、そうね。
アタシの知ってる限りは特に情報はないけどあの神様なら、そういうことしていても変じゃないわね」
別の神様に造られたとはいえ、こういう態度をとられる神様とかどんだけだよ。
精神に関しては元々俺がそんな感じである可能性もあるが直接聞かない限り解らないだろうし不便じゃないしい、まあいいだろう。
「それより、あの虎は何なんだよ。
絶対に初心者が戦うような相手じゃないだろ、初期スポーン位置間違ってんじゃないの?」
問題はあの巨大虎だ。
正直、剣を当てた感覚からいくと、とてもじゃないがダメージを与えているようには思えず勝てる気がしない。
「一応最初に送られる場所はランダムではあるけど、転生者にはある程度以上は生きてもらわないと行けないから、あんな強いモンスターがいる場所には飛ばされないはずなんだけど……」
そう言いながらナビは空中にSFチックなウィンドウを出して操作したした。なにそれ格好いい。
「なにそれ格好いい」
「これはアタシの持つ情報を表示するスキルよ」
思わず声に出していたがナビはウィンドウと睨めっこしながら答えてくれた。
「アタシはマスターをサポートするため造られたばかりで誕生と同時に必要な情報を与えられてるけど全部把握してるわけじゃなのよ。
分かりやすく言うと頭の中にウィキペディアが入ってる感じね。
知識としては存在するけど自分で学習したわけじゃないからどんな知識があるかは解らないし思い出すのが難しいから、補助するためアタシの記憶に存在する情報限定で表示するスキルってわけよ」
中々分かりやすいのだが、付き合いはまだ短いがこいつが俺と会う前にこのウィンドウと、にらめっこして勉強してる図はあんまりイメージが湧かないな。
そんな失礼なことを考えているとナビはウィンドウから顔を上げた。
「何か、分かったか?」
「ええ、マスターが目覚めた場所は、あの巨大な虎であるジャイアントタイガーの縄張りの端っこね」
ジャイアントタイガーという、あまりにどストレートな名前に思う所はあるが今は話を優先して黙って聞く。
「マスターの様な転生者は数十年に一度位の頻度なんだけど、直ぐに死なないようにある程度は安全な場所に降り立つ様になってるんだけど、マスターを転生させた神様が生き返るのとガチャを引くのが見たいからって理由で、危険だけど直ぐに特定の方向に動けば危険は回避出来る場所にしたみたい。因みにこれはマスターが復活出来るからギリギリで黒よりのグレーって判定らしいわ」
「はっ、マジかよ。その神、クソだな。
というかそんな情報まであるんだな」
まさか転生させた神の方から俺を殺しにきてるとは思わなかったが、どんだけ娯楽に飢えてんだよ。
「今の情報はアタシを造った神様から直接メール的なものがあったのよ。
流石にこれは、ルール的には問題ないけどこちら側の都合で転生させたのに、こういう仕打ちをしていいわけないだろって主神様が怒ったそうなのよ」
「それで、もっと安全な場所に移動とかしてくれんのか?」
「それはルール的出来ないみたいなのよね」
主神様は良い神様かと思ったが融通が利かないのか。
「ただ、お詫びとして安全にジャイアントタイガーの縄張りを抜けられるルートが届いてるから次は上手く抜けられるわよ」
お!
「更になんと! 今なら補償として今回限りだけどガチャを十連で引く事が出来るわ!」
「おい、マジかよ! 主神様ありがとーう!」
手のひらをくるっくるっ回しながら主神様に感謝の念を捧げた。
一頻り全く知らない主神様に感謝を捧げた後に気になることがあったので聞いてみる。
「俺を転生させた神に何か罰とかあるの?」
「特にそういった事は書かれてないし、さっきも言ったけど、一応限りなく黒に近いグレーだから罰則とかはないと思うわ」
「そうか、じゃあさ。その神を殴る方法とかない?」
どうやら俺を転生させた神は上手くやったようでお咎めはないらしいがそれでは俺の腹の虫が収まらない。
どうにかして直接殴る事は出来ないか聞いてみる。
「一応あるわよ」
「あるのか!」
ダメもとで聞いてみたがまさかの返事はイエスだった。
「送られてきた情報の中にマスターを転生させた神に報復する方法も一緒に送られてきてたのよ」
「マジかよ、主神様に一生付いていくわ」
流石は人類を超越し世界を管理する主神様には俺如きの考えなどお見通しというわけか。
「それで、方法は?」
「それはこのガチャ空間を出てからにしましょう。
余り関係ない話をするとガチャを引く前にマスターを転生させた神様に追い出されちゃうわ」
「そ、そうか」
確かに俺を転生させた神は性格はよろしくないだろうし、今すぐに聞かないいけないほど切羽詰まっているわけでもないしここを出てからでも遅くはないか。
「それじゃあ十連ガチャの時間よ、イエーイ! どんどんパフパフー」
そうして促されるままにガチャのレバーを引く。
前回と同じ様にディスプレイの表示が切り替わっていく。
ただ、前回と違い十連であるためか一度止まり表示された文字はその後に空中に表示されてディスプレイは再度表示を切り替えていく。
【受け流し】【ライフ1】【鎧術】【隠密】【ライフ1】【ライフ1】【ライフ1】【氷魔法適正】【ライフ1】【疲労耐性】
《スキル:【受け流し】を獲得しました》
《スキル:【受け流し】はレベル1になりました》
《スキル:【鎧術】を獲得しました》
《スキル:【鎧術】はレベル1になりました》
《スキル:【隠密】を獲得しました》
《スキル:【隠密】はレベル1になりました》
《スキル:【氷魔法適正】を獲得しました》
《スキル:【氷魔法適正】はレベル1になりました》
《スキル:【疲労耐性】を獲得しました》
《スキル:【疲労耐性】はレベル1になりました》
《ライフ1を五つ獲得しましたので残り蘇生回数は104回になります》
怒涛のガチャ結果に気圧されるが兎に角確認だ。
スキルが五つにライフ1が五つだ。
アナウンスから行くと、初めて見るこのライフが俺の残機を表してのだろうがこの残りの百四回が多いのか少ないのかは、悩ましい所だな。
普通に考えれば百回以上、しかも今後のガチャの結果次第ではまだ増えるのだろうかから少ないということはないだろうが、ループ物の小説なんかでは戦わざるえない超強い敵に、何度も殺される場面はよくあり俺の今後の生き方次第では滅茶苦茶死にまくることもあり得るが取り敢えず横に置いておこう。
そして、スキルの方は特に被る事もなくバラバラのスキルがきたが、何と言っても氷魔法適正。
氷魔法ではなく、氷魔法適正なのは気になるが異世界と言ったら魔法は重要なファクターだろうしどんなものか今から胸が高鳴るな。
「ナビ、この結果ってどんな感じ?」
一応、実は地雷だったという可能性も考慮して聞いてみる。
「非常に残念だけど、無駄のないスキルね」
何故か苦虫をかみつぶしたような顔で答えられた。
まぁ、他人の不幸は何とやらとも言うし爆死した方が嬉しい気持ちは分かるが今後の俺の人生な関わるから、もうちょっと表情を隠せない?
「鎧術のスキルはマスターが鎧を持ってないから、今は使えないけど、それ以外は全部使えるしスキルの種類に被りがないから腐ることもないしマスター、どんだけ前世で徳積んだのよ」
「いや、これは俺の徳じゃなくて主神様の施しと俺を転生させた神の悪徳の精算だろ」
「「アハハハ!!」」
一頻り笑うと今回獲得したスキルについて説明してもらおうと思って口を開こうとしたら、既に俺の体は異世界に戻るために透けてきている。
「あれ? もう戻り?」
「あー、本来はアタシが送り出さないと戻れない筈なんだけどマスターを転生させた神様が腹いせに強制送還したわね」
どうやら俺を転生させた神は懲りていないようで俺に八つ当たりしてきたようだ。
「あの神、絶対ぶん殴る」
そうしてまだ見ぬ神への怒りを新たに俺は三度目の異世界に降り立った。
死亡数0
ガチャ獲得・新規スキル受け流し、鎧術、隠密、氷魔法適正、疲労耐性・ライフ1×5
残りライフ104