一話ポンコツ妖精
本日二話目の投稿です。
異世界に降り立った時を同じくして、とある深い森の山中にある小屋の中に一人の女がいた。
部屋の中は、床に魔法陣の様な複雑な模様が描かれており、所々に宝石の様に美しく、しかし自ら光り輝く奇妙な石が置いてある。
そして、魔法陣の中心にはその女がいた。
黄金の美しい髪に、深いブルーの瞳、知性と好奇心を併せもつ顔、服の上からでも分かる抜群のスタイルと非の打ち所がなく、時折動く長い耳もチャーミングだ。
服装は緑色を中心にコーディネートされており大きな三角帽子とマントの様に羽織っているローブとで魔女の様なイメージを与える。
「この反応、異世界人が来たようね」
そう言うと魔法陣が淡く輝き、光を放つ奇妙な石はその輝きを一層強める。
その間にも魔法陣の外側にある机の上では独りでにペンが動き出し紙に何かを書き出している。
女が机に手を向け指を降ると今まで何かしらが書かれていた紙が宙を浮き女の方に向かってくる。
「場所はちょっと遠いけど射程圏内ね」
女は紙を読むとそう呟き部屋から出る。
扉の先は一人住むには少し広いかなという生活空間があった。
「セバス、私今から出るから家の管理よろしくね!」
「リョウカイデス、オジョウサマ。
ソレト、コチラノオニモツヲ」
そこには女にセバスと呼ばれた執事の格好をした精巧な人形がいた。
陶器のようなツルツルの肌をしたセバスは恭しく一礼をしてから、事前に準備していた鞄を手渡す。
「流石はセバスね、ありがとう。行ってくるわ」
「イッテラッシャイマセ、オジョウサマ」
受け取った鞄の中も見ずに女はそのまま外に出る。
「んー、いい天気ね。
えーと、方角はこっちね」
小屋の外は少し空けており庭の様になっており、そこで先程読んだ紙の情報を思い出しながら準備をしている。
「射出角がこれくらいで、出力がこんなもんかな。
多少ずれてても着くまでに十分以上かかるし、着いてから探せばいいでしょマテリアルバリア展開」
女の言葉に合わせて彼女を中心に球状の透明なバリアが展開される。
「さぁ、いくわよ。アッサルト・ヴォラーレ」
そう唱えるとバリアの斜め下に何か模様が浮かび上がり、爆発した。
凄まじい衝撃を伴い、爆発の勢いで女を囲うバリアが彼女ごと空を飛び高速で移動していく。
バリアに守られて軽減されているとはいえ、体に掛かる衝撃は常人であれば一瞬にして気を失っておかしくはないが彼女は。
「やっぱりこの移動は早くていいわね。あ、ドラゴン」
ノリノリで景色を楽しむ余裕まであった。
因みに女の使ったアッサルト・ヴォラーレとは古代に使われ、今は存在しない魔法であり。彼女が偶然発見した古書に書かれていた魔法を再現したものであるが、この魔法は岩などの質量のある物質に付与し飛ばすことで城壁等を破壊する魔法版カタパルトと言ったものであって決して人を飛ばして高速移動するためのものではない。
この魔法の開発者がこの光景を見たらきっと卒倒するであろう。
そんな事はつゆ知らず、女は空を飛んでいくのであった。
◆
「パンパカパーン、二度目の死亡おめでとうございまーす!」
巨体な虎に吹き飛ばされて意識を失った俺は、気付けば妙な空間に来ていた。
「いやー、良かった。
上手く森を脱出して死ななかったら、下手すりゃ数年はここで待ちぼうけを食らうハメになりましたからね」
距離感の狂う程真っ白な広い空間に奇妙で派手な機械と15cmから20cm程の大きさのチンチクリンな羽の生えた妖精っぽいのがいた。
サイズは小さいが見た目自体は整っているが喋り方のせいか妙に腹立たしい。
「それにしても、お兄さんは中々運が無いですね?
ランダムで転送されたとは言え十分もせずにモンスターに殺されちゃうなんてプークスクスクス」
何故か笑われているが一般人からすれのば普通の虎だって脅威であるのに、見たこともないないような大きさの虎を素手でどうにか出来る訳ないだろ。
そんなことより。
「お前は何なんだ?」
俺が声を掛けるとチンチクリンの妖精は妙に驚いた様な表情をしたが、直ぐに子憎たらしい笑みを浮かべた。
「アタシ? アタシはあんたの二度目の人生をサポートする為に創造された美少女型サポート精霊アイ・ナビよ。
こぉんなに美しいアタシにサポートされるのだから感涙に咽び泣いて土下座して感謝してもいいのよ。あ、既に殺されてるのだから三度目かしらね、おーほっほっほっほ!」
無性に腹が立つし、そこはかとなくポンコツ臭がするこの精霊は一々こちらを煽らないな喋れないのだろうか。
認めるのは癪だが見た目が良いのと大きさが小っちゃいから多少は我慢出来るが初対面でこの言動をされたらガン無視を決めるかもしれないが、今は少しでも多くの情報が欲しいので我慢して聞き流す。
「それでサポート精霊と言う位なんだから、今の状況について教えてくれるのか? それと一回目の元いた場所で死んだ記憶ないんだけど」
「いいわ、教えてあげる」
そう言うとポンコツ精霊もといナビは一瞬だけ光に包まれると妖精っぽい衣装から何故かスーツに眼鏡とバインダーと指し棒の様なもの持っている。
どうも形から入るタイプのようだ。
「先ずはあっさりと死んだあんたでも分かっていると思うけど、あんたは異世界に転生したの。
死んだ時の記憶が無いのは寝てる時に亡くなったからね、あんたの死因は心臓麻痺。社畜として会社の為に働き過ぎて体がボロボロになって寝てる時にそのまま亡くなったようね。
一人暮らしだったから発見も遅れて見つかった時には既に手遅れってわけ」
成程、事実かどうかは確かめようもないがそう言うことなら死に際の記憶がないのも納得だ。
俺の上司は特に調整とかをすることもなく、こちらに仕事を投げて残業させてくる癖に自分は定時に帰る様な人だ。会長の親族ということもあり他の上司に掛け合っても最終的にはなあなあになってしまう事がよくあった。
そうなると気になってくることがある。
「なぁ、所で……」
「みなまで言わなくてもいいわ」
俺が質問しようとするとナビは分かっているといった顔で遮る。
「あんたが死んだ後はギリギリで保っていた部署は崩壊したは」
聞けば俺の死自体は会社とは関係ないということにされたらしく、その時点では特にダメージにはならなかったそうだが俺が死んだ後も上司は前と同じ調子で仕事を振っていたようで、そこから一か月もしない内に耐えられなくなった人がどんどんと辞めていったそうだ。
引き継ぎをしていれば違ったのだろうが突然の死ということもあり本来は上司も知らなくてはいけない事を知らなかったこともあり会社かなりの損害を与えてそのままクビになったようだ。ざまぁ。
その出来事について身振り手振りと熱く語ったこのナビは最初はポンコツと思ったが、かなりの良い精霊なのかもしれない。
「とまぁ、死んだ後のリアルの方は大体こんな感じね。
それであんたは偶然選ばれて異世界に転生したって訳ね」
「いや、飛びすぎだろ」
訂正、やっぱりポンコツだわ。
「そう言われてもね、あんまり細かく説明出来ないわよ」
「どういう意味だよ」
「そのままよ、概要は問題ないけど細かく説明する権限がないのよ。
それでも良いなら説明してあげるわ」
そうしてざっくりとした説明では、この世界では調整の為に数十年に一度位の割合で異世界から人間の魂を転生させているようなのだ。
ただ、転生者が何かしらする必要はなく生きているだけでいいらしく、何故転生させる必要があるのかは知らないし選ばれた理由も分からないということなのだ。
「それ可笑しくないか? 俺はそれこそ秒でしんだぞ?」
そう、俺は蘇生のうえで転生させられたらしいが(ついでに若返りもしたらしい)即効で死んでいる。
これでは意味がないのではないか。
「そう! そこで効果を発揮するのがあんたに与えられたスキル【死に戻りガチャ】よ!」
バーン! という様な効果音が付きそうな動きで指し示したのは起きた時から置いてあった奇妙で派手な機械室だった。
本作品に興味を持ち読んで下さりありがとうございます。
もしよろしければ、スキルを募集していますので感想欄に頂ければ本編内に登場する可能性があるのでこれはというスキルがあれば記入お願いします。
スキルの仕様上、生産系のスキルは使わないのでそこだけご留意ください。