表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

閑話シャルロット・マジョリーナ・クロトカゲ・マッズイーノ・ナンデダロ/輪廻神

 日の出の少し前の早朝、魔法を使うことにより木を生きたまま家にするエルフの伝統的な家の中でシャルロット・マジョリーナ・クロトカゲ・マッズイーノ・ナンデダロことシャルロットはぐっすりと布団の中で惰眠を貪っていた。


 六十年前にやってきた転生者が寿命で死んでから三年が経ち彼女は此処最近は健康的な生活を送っていた。


 既にエルフとして三百年以上生きる彼女だが、好奇心が旺盛で気になることがあれば寝食を忘れて研究や勉強に没頭し、昼夜が逆転することは日常茶飯事で酷い時は三日起きてその後は丸二日寝るような体に悪い生活もしばしばだが、寿命が長い程レベルが上がりずらいこの世界で、彼女はかなりレベルが高いこともあり多少の不摂生では不調にはならない。


 そんな彼女が規則正しい生活をするには理由がある。

 それは近い内に転生者がこの世界にやってくるからだ。


 エルフは基本的にと深い森の奥で世界樹と呼ばれる木の成長に種族全体で取り組むのだが彼女はその旺盛な好奇心が抑えきれず外の世界に飛び出した。

 飛び出して何年か経ち、人の世界に慣れたころに初めて転生者に出会った。


 研究の為のフィールドワークで森の浅い所を歩いていた時にふと、彼女は何かが揺れたような気がした。

 後に分かることだが、これは転生者がこの世界に降り立つ時に起こる時空の揺れであり、これに気付くには空間魔法への適性か高い感知能力が必要になる。


 初めて感じた揺れに何時も通りに好奇心から揺れの元に感覚を頼りに向かうとそこには一人の女の子がいた。


 そうして初めて出会った転生者である彼女と仲良くなったシャルロットは、そのまま一緒に過ごすことになった。

 転生者である彼女の異世界の話は実に興味深く、あれやこれや質問したり、逆に彼女がこの世界で分からないことを教えてあげたり転生特典のスキルに目を輝かしたりもした。


 更にシャルロットがいつか挑戦しようと思っていたダンジョンの攻略も一緒にした。

 シャルロット自身も優秀ではあったが転生特典のスキルも優秀だったこともあり、いくつかのダンジョンを彼女と共に攻略しそれなりに有名にもなった。


 そして最も難易度の高いと言われるダンジョンの一つである主神が用意したグーバリーのダンジョンを攻略している途中にあることが切っ掛けで転生者の女の子がダンジョン攻略を引退した。


 悲しくはあったが、その後も彼女とは仲良くしていたしシャルロット自身もダンジョン攻略だけが生きがいであった訳でもなかったので好奇心を満たすために研究等していた。


 そして数十年が経ち転生者は寿命を迎えようとしていた。

 その最後の時に彼女は言われた。


「貴方に逢えて本当に良かった。二度目の人生で嬉しさと不安が入り混じってた時に優しくしてくれて、私この世界で生きていいんだなって思えたから。

 だから、出来ればでいいんだけど、私以外に転生者に会ったら、ちょっとだけでいいから手助けしてあげてね」


 その言葉を最後に彼女の初めての親友は息を引き取った。


 その後は落ち込みはしたが親友の最後の言葉を叶える為に行動した。


 とは言え、彼女が生きていた時にも他に転生者がいないかと何度も探したが、見つける事が出来なかったからアプローチを変える事にした。


 既に来ているかもしれない異世界人てばなく、初めて彼女と出会った時に感じた何かの揺れを探知して異世界から来た直後に探しだして来たばかりの異世界人を助けると言うものだ。


 最初は難航した。

 あの時の揺れが何かが分からなかった事もあり、感覚を頼りに幾つもの探知用の魔術を組み上げて、反応があれば行って調べては空振りの日々が続いた。


 そうして五年の月日をかけて当たりを引いた。


 いつもの様にそれらしき反応を探知して現場を訪れて、痕跡を調査してから周辺の町や村へ行って、それらしき人物が居ないか聞き込みをする。

 最近流れてきて居着いた若者がいると聞いて確認すれば異世界人だった。


 一目見れば、彼女もそうだったが年齢の割には保有する魔素、つまりレベル低く過去に彼女から聞いた異世界の話をすれば同じ世界から来たらしく直ぐに反応してくれた。

 手助けをと思ったが既に町に馴染んで働いていたから、何か困った時に連絡を貰える様に魔道具だけを渡して去った。


 それから、あの時感じた揺れが転生の際に発する時空の歪みでありその後はスムーズに発見できる様になり何人かの異世界人に会ったとか、その後に現れる異世界人は全て同じ世界から来ているとか、異世界人は同じ時代に二人以上存在しないで死んだ後に三年から五年の間に現れて比較的安全な場所に明るい時間帯に降り立つとか色々分かった。


 その間にも他にも色々と古代の研究して人間の国からの爵位を貰ったり異世界人のスキルを解析して奉仕人形を作ったりとか、迷子の子供を弟子を取ったりして過ごした。


 そうして過ごしていて、ふと思うのは彼女との生活であり、心残りである攻略出来なかったグーバリーのダンジョンだ。

 しかし、初めての親友であり仲間だった彼女以外と理由もなくダンジョンを攻略する気にもなれず漫然と研究の日々を過ごすが、それでも時折思い出しては一人溜息をつく。

 もしもう一度、あのダンジョンに挑むとしたらその時はきっと、また転生者が絡むのだろうなと思いながら。


「んー、今日は何となく気分が良いわね、いいことありそう」


 窓から差し込む朝日に照らされて伸びをしながら起き出す。

 気分が良いのは、ここ最近の規則正しい生活のおかげである。

 しかし彼女の思い通りに、この日は転生者、勝山ラルフが異世界に降り立ちそして直ぐに出会えるのだが、その前に彼を一度ひき潰してしまうことを彼女はまだ知らない。


 ◆


 私こと輪廻神は困っていた。


 私の楽しみと利益の為にちょっと今回の転生者に時間を巻き戻すスキルを与えて降り立つ場所を危険だけど、ちゃんと行動すれば安全に抜けられる場所にしただけなのだが主神の奴に怒られてしまった。


 正直、私からすれば神格も持っていない一生命体なんてさしてどうなっても構わないと思っているのだが主神の奴はそう思っていないようで、こちらの都合で異世界からこちらの世界に呼んだのだから確りと責任を持つのは神格を持つ上位存在として当然の義務だとか何とかを真面目腐って言うのだ。


 これだから真面目ちゃんはと思いつつも、真面目だからこそ、この世界の主神を任されているともいえる。


 この世界は主神の更に幾つもの世界を運営する大主神(仮称)が存在しそいつの為の兵士を作る為に存在する。

 魔素を吸収してレベルが上り強靭になった魂を本人の承諾を得て死後回収して専用の肉体に付与して保管して来るべき時に備えるらしい。

 らしいというのは、私はそう聞いているだけで来るべき時が何なのかは一切謎だ。


 そして魂も何でも良い訳ではなく、選別の基準があり、その基準を満たす物は十年に一度出れば良い方で酷い時は百年に一つも出ないということもある。


 そして輪廻神である私の仕事はその選別基準に満たなかった魂の漂白である。

 生きている内に魂についた魔素を落としてから新たに生まれる命にその魂を送る。

 継承出来れば効率が良さそうなのだが魂が魔素を吸収したままだと、どうも新しい体に定着しないようなのだ、これだから下等生物は不便だ。

 毎日毎日飽きもせずに生死を繰り返す下等生物には辟易する。


 労力としては大したことはないしある程度システム化して自動でしてくれるているのだがそれでも、ずっと同じ事をするのは面倒なのだ。


 そして私はある事を思いだした。

 過去に魔術を極めて時間を巻き戻す事に成功した魔術師がいて、その時に私達神には大きな影響を与えなかった事を。

 理由は神がいる場所と人間種共の住まう世界の次元の相違等色々あるが重要なのは、人間は時間を巻き戻しても私の主観は変わらないことだ。

 それまでにした作業はなかった事になってしまうが、自動で出来る様にしておけば一度した作業をそのまま繰り返すだけで巻き戻った時間の分だけ自由に使える時間が増えるなら全然有りだと思い、私の業務の一つである転生者に時間を巻き戻すスキルを与える事にしたのだ。


 この世界には魔素を生み出す世界樹という世界の運営に重要な樹が存在するのだが現在は世界樹の成木は一本も存在していない。

 何故なのかの理由は省くが世界樹の成木が一本も存在しない今の状況は世界の運営上よろしくなく、魔素の生成量が足りないと最悪は世界の崩壊に繋がりかねないらしい。

 専門ではないから仕組みまでは知らないが主神が言っていたからそうなのだろう。

 それで最悪を回避するために異世界から人間を送り込むらしい。

 異世界の人間に与えられた肉体とスキルには表向きの効果とは別に世界樹の幼木の機能や成長を促進する機能があるらしくそれなり効果はあるらしい。


 今生きている人間に時間を巻き戻す効果のあるスキルなり道具を与えるというか、神が主神の許可なく積極的に業務以外で干渉することは出来ず、あの真面目な主神が遊ぶ時間が欲しいので人間に時間を巻き戻す手段を与えたいと言っても却下されるのは火を見るよりも明らかだろう。

 だからこそ私はまだ世界に降り立つ前の異世界人に与えるスキルを時間を巻き戻す効果を持つものにするという画期的なことを思いついたのだ。私ってば天才じゃん。


 そうして私は友神にも相談して計画を詰めて準備をし、実行した。

 与えるスキルは異世界人の願望によって生成されるのだが、そこは神様パワー使ってちょちょいと意識に干渉して私が望む様に変えて送り出した。

 その際に何度も死んでも精神が耐えられる様に改造も施したその際に記憶の欠落とか発生したけど些細なことだろう。私、優しい。

 早く効果を実感したいために少し危ない場所に送り込んだりしたが、流石に一分では余り効果を感じられなかった。


 そして、主神に即効でばれた。


 今まで一切問題なくやっていたし直ぐにバレないだろうと思っていたんだけどまさか、主神がわざわざ転生者を観察していたなんて思わなかった。


 それでも既に送り出した異世界人に真面目な主神が過度な干渉は出来ないだろうと高を括っていたのだがどうにも雲行きが怪しくなってきた。


 主神が管理するダンジョンを攻略したら私を殴る権利を与えるとか(のたま)っているし、異世界人はそれに乗り気だという。

 主神が管理するダンジョンを攻略すには最低でも500レベルが必要な最難関のダンジョンではあるが異世界人に用意された肉体はこの世界の人類の基準でも最高峰の物であることや今の時点でまだ百回以上死ねる【死に戻りガチャ】のことを考えると安心してはいられない、何かしら対策を打たないといけないだろう。


 そう未来に対して思考を巡らせていると観察していた異世界人が空から降ってきた隕石のような何か吹き飛ばされて死んだ。


 腹を抱えて笑った。

 これまで何人もの異世界人を送り観察したが、その理由から異世界人には長生きしてもらった方が良いために基本的に穏やかな性格の人間が多い。過去には積極的にダンジョンを攻略したり建国した変わり者も居ない訳でもないが、それでもここまで笑ったのは初めてかもしれない。


 それによくよく考えれば、主神のダンジョンは百層もあり攻略には十年単位の時間が掛かるだろうし、一人で攻略出来るものでもない。

 途中で心が折れる可能性も考えると、ある程度様子見をしてから手を打っても、そんなに遅くない気がしてきた。

 よく考えれば輪廻神である私が人間一人に気を揉む方がおかしい。


 そうとなれば今後増えるだろう空き時間のためにも漫画を準備しなければ。

 人間は下等な生き物だが、こういった創作物に関してだけは認めてよいのだが残念ながらこの世界の娯楽文化は低く、今のところ私を楽しませる物は異世界人の世界の物だ。

 別の世界の物を取り寄せるには非常に手間が掛かるがしかたあるまい。


 そう思いながら私は読む漫画の選別作業に入ったのだ。

今話で第一章異世界転生編が終了になります。

ストックが切れた為に毎日投稿は今日までになります。

次の投稿は十話程溜まったら投稿しようと思っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ