ネームド
今更だけど、僕には僕自身の記憶は無い。
漠然と社会生活を営んでいた日々の記憶と、経験した際、感じた印象の記憶はあるにはある。
実に中途半端だ。でも、それで困ることは無いので、まあ、いっかという感じ。
だから名前も思いだせない。
まあ、必要ないしね。一人だから。
でも、それでは味気ないかも知れない…人生には彩りが欲しい。
ちなみに、今、僕は歩いている。
雨が降ったり止んだり。
梅雨だから、仕方ない。
天候は、自由自在とはいかない。
社会も、天候と同じ感覚ならば争いもなかったはず。
まあ、やられたらやり返すのも、自然現象の一種なのかもしれない。人間も自然の一部だ。忘れがちだけど。
中道と中途半端は違うし、やられたら徹底的に完膚なきまでやり返した方が、相手の為。
心を折るまでは止めてはいけない。
でも、もはや必要無い考え方だ。
だって戦う相手は、もう何処にもいないもの。
さて、僕の名前の話し。
自分の身体をアチコチ探ってみる。
僕は男の子だと分かった。
ちょっとホッとする…良かった。
男女差別の意識は無いです。
ただ記憶では、僕、男だから、その通りであると確認できて、安心したのです。女の子だったら、それはそれで問題は無い。…多分。
雨が降ってきたので、傘を差して、空を見上げる。
そうだね、男ならば名前は、…ソラとか。
安直?
雨粒が地面を濡らす。
人類滅亡しても雨は降るのだな。当たり前だけど。
雨は変わらず、あの雲から落ちて来るのだ。
空は灰色の雲ばかり…グレイだ。
名前は、ソラ、姓はグレイでいいんじゃないかな、どう?
まあ、仮の名前という事で。
どうせ、僕が没すれば煙のように消えて無くなる名前だよ。