第5話 組み分け帽子じゃないです
「じゃあ改めて教室にでも向かうか」
「そうだな」
入口に入り近くにあるエレベーターに向かう。
イデアル端末越しに声が聞こえる。
〈ようこそ、アルタ王立学園へ。どこに向かいますか〉
「教室エリアまで頼む」
〈教室エリアへ転移します。確認したら了承してください〉
了承しますか?
はい
いいえ
もちろんはいだ。
目の前が光に包まれる。隣の姫音も目を瞑っている。
☆☆☆
「ここが1組の教室かな?」
転移後俺たちは1組の教室に向かって歩いていた。上を見ても1組と書いてあるし。
「失礼しまーす」
「失礼する」
挨拶しながら入るがあまり人がいない。っていうか1人しかいない。まだ早い時間だしな。
「とりあえず前の座席表見るか」
「そうだな」
電子黒板の前に行くと、座席表が表示されている。1組は20人ほどのクラスらしい。4×5の間隔で席が並べられている。
俺の席は窓際の後ろから2番目。いわゆる神位置。俺は勝ちを確信した。
「私は前の方だな」
「俺は窓際。とりあえず荷物置いてくる」
席に座って、荷物席の横にかけて教科書を席の中に入れる。そして隣を見る。
隣に座ってるのが1番最初にこの教室にいた人。制服から女子だと思う。机に突っ伏して寝ているのか?身体の肺辺りが上下に動いてる。
頭には巨大なとんがり帽子。髪の毛とかも全部覆い尽くしていて何も見えない。
「何見てんだよ」
「…………え?」
「何見てんだよって言ってんだよ」
え。帽子が動いて喋ってる?
皺の部分が口になって動いてる。
「えーと…初めまして?」
「ああ?」
「そんな怒んなよ…」
「怒ってねぇよ」
「とりあえず喋ってる人は被ってる人?」
「俺が喋ってんだよ」
「えーと…とりあえず帽子さん、初めまして」
「俺にはハットっていう名前があんだよ!覚えとけ」
「はい…」
ハット…めっちゃそんままやん。
なんで帽子が喋ってんだろ。魔法か?スキル?いやエニグマの方が有り得そう。聞いてみるか。
「ハットはなんで喋ってんの?」
「いきなり呼び捨てか。まぁいいだろう、その方が楽だ。いいだろう教えてやる、俺はこの偉大なる我が主、エアリアル・シルフィーdボゲェ!??」
「うるさい」
帽子が喋ってると、皺の口に拳が放たれる。被ってる子が殴ったらしい。
そのまま寝てた子の顔が上がる。綺麗な金髪をした可愛らしい美人だ。よく見ると耳が尖ってる。所謂エルフという種族だ。
「ご、ごめん。起こしち待ったか?ほらお前も謝れ。」
「え?俺も?あー、なんか起こしちゃたみたいで、ごめん?」
遠くで姫音がこっちを見ながら爆笑してやがる。
「別に怒ってないわ。それよりうちのハットが迷惑かけたわね。コホン。
初めまして私の名前はエアリアル・シルフィード・リンネよ。名前はリンネだからよろしくね!」
「初めまして、俺はアルス・クラウスだ。よろしく。それと別に迷惑と思ってないから大丈夫だ。むしろ丁度いい話相手だった」
「私もいいか?私の名前は正村姫音だ。出来れば姫音と呼んで欲しい。よろしく頼む」
こっちまで来ていた姫音も挨拶する。教室にはまだ3人しか来ていない。
「アルスに姫音ちゃんね。よろしく」
「あぁよろしく。ところでその帽子はなんなんだ?」
「こいつね。これは私のエニグマ。名前はハットよ。こいつには良睡眠効果があって、少し早く着きすぎたから寝てたの」
「帽子型のエニグマか」
「そういうことだ。今後とも主様をよろしく頼むぜ」
「こちらこそよろしく頼む。ハット殿」
自己紹介も終わり、少し話している内に少しずつ人も増えてきたようだ。