第42話 戦術対抗戦9
目の前の岩壁は頑丈で普通にやってはどうも壊せそうにない。
「リンネ!大丈夫か!」
「こっちは平気。それより敵はどうなってるの?」
「こっちに2人、リンネの方に1人向かってる」
俺たちの周りは建物があり少し見通しが悪いので、目視ではまだ敵が見えない。
「それぞれで戦うしかないみたいだな」
「アルス、勝手に負けたら許さないからね!」
俺はリンネの言葉を皮切りに、時分が戦いやすい位置へと移動した。
☆☆☆
俺は現在、見通しの良い広場のような場所にいる。周りには建物が並んでおり、敵はまだ姿を表していない。ここなら銃を使う俺は戦いやすい。ただ、相手が魔術を使ってきた場合は相手も戦いやすくなってしまうが。
敵は歩いて俺の元へ向かってきている。敵の姿が見えるまで後少し。
「こっちの方にいるはず。なんかそんな感じがする」
「ラナはいっつも適当すぎなんだよ。まぁいつもだいたい当たってるんだけどね」
建物の角から現れたのは2人の少女。片方は目が赤く、片方は目が緑だが2人の容姿は似ている。いわゆる一卵性双生児、双子と言うやつだろう。
「初めまして、出来れば見逃して欲しいんだけど?」
「うーん、私たちまだ戦い足りてないから無理かな?」
「ラナ、どちらにしろ撃破報酬があるんだから、見逃しちゃダメだよ」
「ならせめて1対1で…」
「ペアと一緒に居ないのは君達のせいでしょ」
「でもレナ、可哀想じゃない?」
「油断したらダメだよ、そういうのお姉ちゃんの悪いとこ」
相手の強さが知りたいが、今はイデアル端末が制限されているので、所属クラスが分からない。
それに2対1という状況も不利だ。どう動くべきだ?どちらにしろ相手はやる気なのでこちらもエニグマを顕現させておく。とりあえずは連射ができるオートマの方だな。
「とりあえずは、様子見で行くよ」
「っ!」
最初に動いたのは赤目のラナと呼ばれる方だ。物凄い速さで接近してくる。武器は拳だ。ガントレットの様なものを2人とも付けている。
上手く避けながら観察するが、この近接戦闘の上手さからして魔術士タイプではないはず。当たってしまえば少なくないダメージを受けるだろう。
レナの方も見てみるが、あちらは何もせずこちらを見ているだけ。
「おにーさん、やるね。私の戦闘中に余所見してるなんて」
「そっちはまだ全然本気出してないだろうがっ!」
「まだ様子見だったからね」
ラナがおおきく跳び、レナのところに戻っていく。すかさず銃を撃ち込むがレナの方に拳で弾かれる。双子の両方とも拳術使いかな?
「多分だけど、強いと思うよ」
「ラナが言うなら間違いないと思いうけど、今のところはそんな気はしないね」
「ちゃんとやらないと負けると思うから全力で行くよ!」
「分かったよ」
「「《共化》」」
2人がそう言うと2人の拳にそれぞれ赤と緑の光が纏われる。そしてそのまま2人が同時に接近してくる。
やっぱり2人とも拳術使いか。2人同時に責められて、何とか避けているが、反撃する暇がないな。ここはダメージが少ないように1発受けて反撃するか。
タイミングを伺いながら攻撃を避ける。1番ダメージを受けないタイミングは不利な体勢からの攻撃。
攻撃の中でラナの体勢がほんの少し崩れる。少し力が入りにくくなるだけだがここしかない。
俺はラナの赤い拳を左手で受け止める。ガントレットの硬さで少しダメージが入るが我慢する。
手を捕まれ動けなくなっているラナに銃で攻撃をする。レナが物凄い速さでシールドの魔術のようなもので銃弾を防ぐが、俺の本命は庇おうとするレナの方だ。
ラナを守ることにいっぱいになっているレナは、銃弾を避けようとするが、こちらは連射型なので避け切ることができず数発喰らってしまう。
だが俺の攻撃は思ったよりもダメージを与えれておらず、体勢を整えたラナに攻撃されている間に回復されてしまう。
ずっと銃を使い続けているから分かるが、明らかに銃の威力が落ちている。考えられるのは
「デバフがかかっている?」
「よく気づいたね!せっかくだから教えてあげる。私の攻撃を喰らうと全ての攻撃力とスピードが下がっちゃうよ!」
「ちなみに私の方を喰らうと、全ての防御力と魔術関係の能力が下がってしまいますよ」
丁寧に説明してくれる2人。言葉通りさっきより俺のスピードが落ちたせいか、2人の攻撃が避けづらくなっている。だがまだまだいける。
俺が今1番喰らったらまずいのがラナの攻撃だ。銃の威力は固定だからそれが下がるのはまずいし、スピードが今より落ちていくのはまずい。レナの防御力を下げる方だったら攻撃を当てられていない今なら効果は無いし、実戦では魔術を俺は使えないからな。
俺が受けるべき攻撃はレナの方だ。レナの攻撃が弱くなるタイミングを見計らって…今だ!
緑の光を纏うレナの拳を受け止め銃を発射する。確実にダメージは与えられている。だがその攻撃はさっきよりもダメージを与えられていない。
「どういうことだ?」
「えへっ!気づかなかったね!」
「まぁ、気づかないようにしたからね」
俺の前で双子の目の色が変わる。手の光の色も同じように。
多分見た目を入れ替える手段を持っている。俺がさっき受けた攻撃はレナではなくラナの方だったという訳だ。
さっき丁寧に能力を説明してくれたのは親切からではなく、俺があえてレナの方の攻撃を受けるように誘導するためだったのだろう。
この2人、強いな。このまま闘っていれば確実に負けてしまう。リンネのためにも直ぐに負ける訳にはいかないから、少し本気を出していくか。




