第35話 戦術対抗戦2
俺達の電子機器が急に使えなくなり、焦っていたところに遠くから初級魔術が飛んでくる。みんながそちらの方向を見ると、眼鏡をかけた男子生徒が高い岩の上からこちらを見下ろしていた。
「誰だお前は!」
「俺の名前か?俺はAクラス1組 連道 真也だ。お前たちは既に囲まれている。大人しく降伏をすることをおすすめする」
「何を言っているんだ?」
「分からないのか。お前たちは既に囲まれていると言っているんだ。抵抗はやめておけ。お前達は7ペアしかいないが、俺達のチームは50ペア以上でお前たちを狙っている」
「50!?もうそんなに集まってんのか?」
「待って、今あなた俺達のチームって言った?」
「ああ、その通りだ。俺達は協力してお前たちを倒そうと思っているからな」
そういう事か。あいつの言葉から推測するに、あいつは他クラスと協力しているのだろう。
委員長は他クラス同士で協力することはないって言っていた。この根拠の前提にあるのは、撃破報酬が目当てで格下のCクラスを互いに狙っているから、協力なんてするわけが無いというものだった。
なら前提が違ったら?俺達Cクラス1組が格下では無いクラスがあったとしたら?それこそCクラス2組以降のクラスとか。
連道の作戦は多分だが、Cクラス2組以降のいくつかの組に協力を持ちかける。2組以降のクラスは生存報酬が難しいため、簡単に撃破報酬を得られると思いその提案にのる。Aクラスは見返りに協力関係にあるCクラスを撃破し報酬を貰う。
この作戦なら同じCクラスを狙うBクラスも、Cクラスと協力して倒しやすくなるしな。
さっき《索敵》をした時にペアの数が少なくなっていたのはBクラスが倒されたからだろう。
それに1回目の《探索》を使った時に俺達のペアを狙うのが早いと思った。あれは最初から俺達を狙うと決めていないと無理だ。俺達1組を狙うのは最初から決まっていたのだろう。
Cクラスと協力することで奴は、広い情報量と、数という戦力、そしてBクラスとCクラスという報酬を手に入れたのだ。
「察しの悪いヤツのために言っておこう。俺達はCクラスと協力している。お前たちとBクラスの連中を倒すのを協力するためにな。1組に近い連中には断られたが、後ろの方は喜んで協力してくれたよ」
「なんだと!」
「おかげでいくつかのBクラスも倒せた。Cクラスに報酬は少し譲ったがな。後はお前たちだけだな。他の奴らが来る前にさっさと片付けようか」
まんまと敵の罠にかかってしまったわけだ。敵が協力している以上、俺たちの作戦は失敗になる。
「どうする委員長」
「ど、どうしよう」
「敵が一斉詠唱し始めたよ、どうしよう」
ダメだ。みんな焦っている。リーダー的な委員長も作戦が失敗したせいで判断ができていない。
「みんな聞いてくれ」
「レンジ君?」
「僕とロウカ君で囮になる」
「ぼ、ぼく?」
「僕達は耐久に優れている。僕のスキルにはヘイトを集めるものもあるしね、だからその間に逃げて欲しい。何人かはやられるかもしれないけど全滅するよりもましだ」
「だったら俺が煙幕を持っている。これを使って全員で違う方角に逃げよう。周りは岩山や川で見通しも悪いしな」
対抗戦前に色々買っておいたことが幸いした。
「もう相手の上級魔術が完成する。急いで逃げてくれ。ロウカ君頑張ろう」
「わ、わかったよ」
「じゃあ行くよ!マッスルゥゥ!!」
レンジがそう言って筋肉を見せつけるのと魔術が放たれるのと俺が煙幕を使ったのは同時だった。
レンジが使ったのはヘイト誘導スキルだろう。急に狙いがレンジになることでいくつかの魔術は変な方向に飛んで行った。
俺たちは煙幕を使ったのと同時に四方八方に分散するが思ったより正確に魔術がとんでくる。まるで煙幕を使うのが分かっていたように。
このようにして俺達の戦術対抗戦は、全員がバラバラになるという最悪のスタートで始まるということになった。




