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コント『昔話のざまぁと鶴の恩返し』

作者: 葦原とおる

B…ボケ T…ツッコミ


B「実はボク、昔話が好きでして」


T「昔話! いいね~、オレも好き」


B「あれっていい話に見せかけて裏がありますから、そういうところが油断できません」


T「裏っていうと?」


B「例えば桃太郎です」


T「犬、猿、キジを仲間にして鬼退治した話だろ? あれ最後は家に財宝を持ち帰ってめでたしめでたしじゃない?」


B「そこに裏があるんです。あまり知られてない話ですけど、桃太郎が財宝を持ち帰ってから分け前をめぐって醜い争いが勃発しました」


T「えっ! めでたしで終わりじゃないの!?」


B「犬、猿、キジはもちろん、お爺さんとお婆さんまで互いに醜く争いました。その様子を見ていられなくなった桃太郎は家出してしまいます」


T「人間の醜さを暴く話になっちゃった!?」


B「このように昔話とは人の醜い部分を隠して歪曲されたもの。そういう裏を知ると素直に読めなくなります」


T「オレが知っていた昔話は大人が都合よく切り取った表面だけだったのか……」


B「そういえばボク、このあいだ罠にかかった鶴を見つけてしまいまして」


T「罠にかかった鶴!? 聞いたことある展開だな!」


B「ふふふ、昔話の裏を知っているボクに死角はありません。まずは鶴を罠から助け、優しく空に返してやりました」


T「それ恩返しに来ちゃう展開じゃね!?」


B「しばらくすると妙齢の女性が現れて、少しの間住まわせて下さいと言ってきました」


T「キターーー!」


B「こんなこともあろうかと機織り小屋を用意しておいたので、そこに案内しました」


T「恐ろしく手際がいいな!」


B「ホームステイでしたらこちらでどうぞと女性に言うと、少し困惑したようでしたが、礼を言って機織り小屋に入っていきました。その際、決して覗かないで下さいと頼まれたので、死んでも覗きませんと断言しました」


T「さすが裏を知る男は違う!」


B「するとその夜、機織り小屋からとんとんからり、とんからりと音が聞こえてきます」


T「さっそく機織りしてるじゃん! 来るよ! 鶴の恩返し来ちゃうよ!」


B「朝になり女性が機織り小屋から出てくると、手には美しい反物を持っています。それをボクに差し出して、こちらでお世話になるお礼です。お受け取りくださいと言うんです」


T「反物、ゲットだぜ!」


B「ありがたくお預りすると、それからも定期的に反物を織ってくれるようになりました。その度に覗いてはなりませんよと念を押されます」


T「もちろん覗かないよな!」


B「当たり前でしょう? ボクが絶対に覗かないでいると女性の念押しは段々と強くなり、そのうち決して覗いてはいけませんよと三回セットで言うようになりました」


T「ははは! 振りじゃん! めっちゃ振ってるじゃん!」


B「もちろんそんな振りに乗ったりしません。すると機織り小屋から怪しい声が聞こえてきます。耳を澄ませて聞いていると、覗け! 覗け! 覗け! お願いだから覗いてよッ! と、しきりに呟いています」


T「鶴のやつ、おまえが覗かないんで焦りだしたな!」


B「ええ、段々本性が現れてきました。ここで確認しておきましょう。鶴の恩返しとか、雪女といった物語に共通する裏の設定。それは『ざまぁ』な展開です。言いつけを破りすべてを失う主人公を見て、民衆は『ざまぁ』と思うわけです」


T「そういえばオレも子供心に、言いつけを破った主人公は自業自得、バカなやつだって思ったわ。今思えばあれこそ『ざまぁ』だったわけだな」


B「そうです。うっかり覗いてしまえば鶴はドヤ顔でこう言って去るでしょう。『あれほど覗くなと言ったのに今更待ってくれと言われてももう遅い。私は国に帰ります。ざまぁ!』」


T「言いそう!」


B「それでこの話の結末ですけど、ボク結局女性には出ていかれました」


T「ウソだろ! 覗いちまったん!?」


B「いえ、実家に連絡したいからスマホを貸してくれと女性に頼まれまして。貸してやると、通話中は決して誰も中に入れてはいけませんよと言って機織り小屋に入ったんです」


T「決して覗くなじゃなくて、決して誰も中に入れるな? 怪しいな、何か企んでないか!?」


B「ふふふ、こんなこともあろうかと機織り小屋には盗聴器が仕掛けてありました」


T「本当に死角がないな!」


B「さっそく盗聴してみると、監禁されて無理やり働かされてると警察に通報してたんです」


T「警察が小屋に踏み込んだら言いつけを破ったとくるわけか! ついでにおまえは濡れ衣で逮捕でざまぁか! 最低だな!」


B「まんまと策にやられましたが、家のあちこちにマイク付き監視カメラをセットし、ICレコーダーを身に付けていたボクに死角はありません。警察には女性に頼まれてホームステイさせていただけだと証言し、その証拠も山ほど提出したので余裕です。むしろ女性が偽証罪で捕まりました」


T「さすが過ぎ!」


B「ふふふ、悔しそうにボクを睨む女性を見て思いました。今更相手が悪かったと気がついてももう遅い。ざまぁ!」



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