えちち
「転校生ーカモオオオオン!!」
「「「うおおおおおおおおおー!!!」」」
2年1組の教室で爆発する大歓声。
なんだこの盛り上がり方は。
父親がよくテレビで見ていたサッカーワールドカップの試合が脳裏に浮かんだ。
ゴールが決まった時のスタジアム内はきっとこんな感じなんだろうと思った。
あまりの迫力に恐怖を感じた俺は廊下で独りガタガタと震える事しかできなかった。
「よーし! みんなで名前を呼んでみよう!!」
「「「おおおおおおおおおおー!!!」」」
やめてくれ……。
「いくぞ! せーの! はるた! はるた!」
「「キャーー!」」
「「はるた! はるた! はるた!」」
俺は震えるひざを両手で押さえつけ、はるたコールをききながら俯いてただただ自分のつま先だけを見ていた。
「「「 はるた!! はるた!! はるた!!」」」
いやだ……教室に入りたくない……。
はるたコールはますます大きさを増す。
「どうしよう……逃げようかな……」
ぼそっと口からこぼれた一言。
「逃げよう!」
後ろから突然聞こえた声にびっくりした。
振り返るとビキニ姿の金髪美少女がいた。
白地に桃の絵柄が描かれたビキニ。
内股ひざに両手をついて、かがんで覗きこむようにして俺をみている。
まつ毛がクルンとしててキラキラした薄茶色の瞳。
「ちょうど私もホームルームかったるいな~って思ってたんだ、うふ!」
彼女は海外のインスタスタスなどでよくみる大人っぽいセクシーセレブ美女のような近寄りがたい見た目なのに、喋るとまるで汚れを知らない無垢な少女という感じがした。
二の腕によせられ強調された胸はまるでメロンが2つ付いているみたいに大きくて丸い。
俺はその迫力に圧倒されて言葉を失いただ見つめるだけだった。
教室からは元気にはるたコールが響く。
「行こう? 一緒に逃げたら楽しいよ!」
そう言って彼女が手を差し出した。
彼女の腕は日に焼けていてピカピカでキラキラしていてとても綺麗だった。
「あ! えちちじゃん! お前ら何してんの?」
間の抜けた声がして振り返ると、こんがり焼けた上半身裸の金髪の美少年が教室の窓から体を乗り出していた。
「ほら、行くよ!」
えちちと呼ばれたその少女は俺の腕を強引につかんで引っ張るとビーチサンダルをパタパタ鳴らして駆けだした。
「あっ! お前らどこに行くんだ!?」
えちちは後ろを振り返らずにきゃははと無邪気に笑いながら走った。
「みんなー! えちちが転校生連れてどこかに行ったぜ! 俺たちも行くぞー!」
少年が叫んだその一言で教室の中から今一度大きく歓声が沸き上がるのが聞こえた。
俺はえちちに連れられるままに走った。
外階段を降り建物を出て、ダイニングレストランの前を通り、テラスを抜け、プールの前を通り、フィットネスジムの前を通り、テニスコートの横を通った。
転ばないようにするのに必死で、ほとんど地面ばかりみていた。
えちちが「大丈夫?」ときいてきた。
俺は上がる息を必死に抑えて「はい…‥‥」とだけ答えた。
えちちは無邪気に笑って言った。
「もうちょっとだよ!」
そして走るスピードを上げた。
こんなに走ったのは何年ぶりだろう、脇腹がいたくなってきた。
多目的広場を通り、庭園を抜け、芝生の上を走り、駐車場横を進んだその先にある坂を下ると海が見えた。
「着いたー!」
そう言ってえちちは白い砂浜の上で突然立ち止まった。
俺は急には止まれなくてそのままよろつき体をひねって仰向きに倒れた。
「きゃっ!」
俺の腕を強く握りしめていたえちちも引っ張られ、俺の上に覆いかぶさるようにして転倒した。
彼女の胸が俺のお腹を直撃。
熟しすぎて少し柔らかくなった2個のメロンを腹の上に落とされたような痛みが走り、思わず吐きそうになる。
「ごめんっ」
そういって彼女は起き上がり俺の股間の上にまたがった。
「だいじょうぶ?」
俺は痛みでゆがんだ顔のまま首を縦に振った。
彼女は突然何かを思いついたようにいたずらっぽく笑うと、こちょこちょこちょ~っと言いながら俺のわきや脇腹をくすぐり出した。
楽しそうに一生懸命こちょこちょしてくるが、ヘタクソなのか俺の体が鈍感なのかわからないが全くくすぐったくない。
「あははは! こちょこちょこちょこちょ~くすぐったいか~! きゃはは!」
どうしよう。
くすぐったがる演技をしたほうがいいのかな……。
彼女はお構いなしにくすぐってくる。
「こちょこちょこちょこちょ~きゃははは!」
何がそんなに楽しいのだろうか。
「うへへ~、ちくびはどこだぁ~! こちょこちょこちょ~」
今度は彼女は人差し指だけを立てて、制服のシャツの上から俺のちくびのあたりをこねくりまわした。
そんな事をしても全然くすぐったく……ビクッ!
何だこれは!?
彼女の爪先がちくびの上をふれるか触れないかくらいの絶妙な距離感を保って通り抜けた時だ。
何とも言えない切ないようなくすぐったいような気持ちいいような甘ずっぱい電撃が身体中に走ったような感覚がした。
「きゃはは、あっ! 今ビクッとしたな!? ここか!? ここが君の弱点だなぁ? あははは!」
味を占めた彼女の指は氷上のフィギュアスケーターのようにシャツの上で爪先をすべらせた。
チクビに触れるか触れないかくらいの距離感を保ったまま。
ビクッ!
「あ゛ッ!」
再び身体中を走り抜ける感覚が起こり、つい変な声を洩らしてしまった。。
ビクッビクッ!
「く……!」
やめろ……やめてくれ……。
ビクビクビク!
「う゛わ゛あああ!」
「きゃはははは~! おもしろ~い!」




