第6話 ドラゴンを仲間にしよう!
ガーネットの足の裏から装置を剥がして、よく観察してみる。
ドラゴンの体重で粉砕されてはいるが、細かな部品がたくさん使われているし、だいぶ精密な機械であることは分かった。剣と魔法の世界にも、こんな精密な機械があったんだな。
……もしかして、これかなり値の張るブツだったんじゃなかろうか。売り飛ばせばよかったかも。
そう思って少し後悔していると、私の肩を誰かがちょんちょんとつついてきた。
ブプルギスだった。
「あ、あの……。さっきは俺の主人が、大変失礼いたしました。」
「ああ、別によいのですよ。アレには1度、思い知らせてやらねばなりませんので。」
ブプルギスはその言葉を聞いて、少しだけほっとしたようだった。
「ナコリス様は、お優しいのですね。……俺の主人も、こんな人だったらよかったんだけどなあ。」
ブプルギスが、残念そうにつぶやく。
たしかに、このまま彼を城に帰せば、ドリゼラは容赦なくブプルギスをいじめるだろう。
何かできることは……あるかもしれない。
「あの、ブプルギス。」
「なんすか……?」
「魂の結びつきって、上書きできたりしないのかしら?」
それを聞くと、ブプルギスは小さく飛び上がった。
「な、え、は……?」
「だって、ドリゼラの元に帰りたくないのでしょう?それなら、ここにいればよいのではないかと思いましたの。」
ブプルギスはかなり驚いた顔をしていたが、じいっと私のことを見て、首をひねった。
「普通は無理っすよ、そんなこと……。でも、姫さんの魔力だったら、できなくもない、かも……?あーでも、俺、そんな話聞いたことないっすよ。そりゃもちろん、姫さんのとこにいられたらいいなあ、とは思うんすけど……。それに、どうやってやるんすか?」
「どうやって……?そうね……。」
私も正直言って、どうやったらそんなことができるのか分からない。
でも、もしかしたら。
「新しく名前をつけるのはどうかしら。サファイアとか。」
瞬間、ブプルギスの体が光に包まれた。
マジか。本当にこの方法でできるんか。
ブプルギス、いや、サファイアの体が地面に降り立つ。
相変わらずおなかはでっぷり丸々としているものの、くすんでいたウロコはピカピカに光り輝き、心なしか、顔が少しだけすらっとした気がする。それに、小さかった翼は、力強く大きなものへと変わった。
サファイアは数秒間ぼーっとしていたが、はっと気がつくと、私に対して全力で平伏した。
ガーネットよりおでぶさんなせいか、腹ばいになるのはちょっと辛そうだ。
「ありがとうございます!!これであのバカの元に帰らなくて済みます!!!」
私もまた、こんなに簡単にいくとは思っていなかったので、しばらく呆然としていた。
え、魂の結びつきって、こんな簡単に書き換えてしまっていいのかな……?
周りにいた国民の皆さんも唖然としていたが、1人が声をあげると、それに続くようにしてわあっと歓声があがった。
「すげぇや!!ドラゴン2頭持ちだ!!」
「こんなことってあるんだな……。」
「女神じゃ……女神様じゃ……。」
「女神様の降臨だーーー!!!」
後から聞いた話なんだけど、こうやって強い魔力を持つ者がドラゴンとの結びつきを奪い取った事例は過去に無く、大変歴史的な瞬間であったのだとか。
その晩は、サファイアの歓迎会と題して、みんなで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをした。
けしてお城で開かれるパーティのような品の良さは無いけれど、私はこっちのほうが性に合っているみたい。
その夜は、忘れられない楽しい夜になった。