プロローグ(2)
私は、生粋のテーマパークマニアである。
始まりは、東京のすぐ近くにあるテーマパーク、東京デルヴィスランドに行った事。
徹底的に作られた非日常。まるで夢のような世界に、私がとりこになるまでさほど時間はかからなかった。
そのままの勢いで年パスを買った私は、仕事帰りや休日の時間を使って東京デルヴィスランドに通い続け、夢の世界に入り浸り続けた。
もちろん、東京デルヴィスランドだけじゃない。アメリカにある元祖デルヴィスランドにも行ったし、デルヴィス系列ではないテーマパークに行ったこともある。お金は瞬く間に消えていったけど、あれはたしかに充実した時間だった。
それなのに、私が今いるこの世界ときたら!
たしかに剣術はかっこいいし、魔法もかっこいい。
でも、国民が楽しめる娯楽というやつが、まるで発展していない。
マンガやアニメはもちろん、絵を描くだとか、曲を奏でるだとか、裁縫をするだとか、そういったことが徹底的に禁じられているのだ。
なんでも、この国は長いこと戦争をしているらしく、娯楽なんてやっている暇があったら戦争に必要なものを作れ!という方針らしい。まったく、馬鹿げてるにも程がある。
おかげで、私がいまこうしてド田舎の舗装されてない道を歩いていても、すれ違う人々はうつむいて、暗い顔をするばかり。誰ひとりとして笑っていないし、家々からは余裕の無い怒号や泣き声が聞こえてくる。
私がこのド田舎に引っ越してきたのは5才の時だったが、ここの人たちはずっとこうだった。
それって、きっとすごく苦しいことだと思う。
ああ、この世界にもテーマパークがあったらいいのに。
みんながテーマパークで遊んだら、きっとみんな笑顔になれるのに。
……待てよ。
私は立ち止まり、いま思い浮かんだその考えを、もう1度頭の中で言ってみた。
この世界にも、テーマパークがあったらいいのに。
……これだ。
どうして気づかなかったんだろう。
そうだ。この世界にも、テーマパークがあればいいのだ。
この王国は、各地方にある都市は栄えているものの、その外はあまりにも国土が広大で、開発しきれていない場所も多い。幸い、あのクソむっつりファッ○ン国王野郎は、私が何をしようがどうでもいいようで、私が服を買おうが本を注文しようが何も言ってこなかった。
ということは、テーマパークを建てようとしても、特に何も言われないはずだ。
隣に立つシーバが、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
私は彼女のほうを向くと、にかっと歯をむいて笑ってみせた。
貴族の間でははしたないと言われてるらしい笑い方だが、知ったこっちゃねえ。私は私だ。
私は私のやり方で、この王国に歯向かってやる。