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No.4 ファーストコンタクト

魔剣は王の間、つまり、お父様の部屋にある。歴代の王は肌身離さず魔剣を携帯していたようだが、講和会議以降、張り詰めた空気は消え、式典に出席する場合以外は王の間に保管されている。一般人がそこに入ることは容易ではないが幸い俺は王子の身分だ。普通に入れるし、怪しまれることなど何もない。それに、お父様は王にしては寛容かつ、堅実な人物だ。俺を乳母に育てさせなかったと言う具合に。100年前まで殺し合いをしていた国の人間と協調すると言う具合に。不必要な儀式を行わず、無駄金を使わないと言う具合に。だから、俺が奇妙なことをしていても理由がはっきりしていればおおらかな対応をしてくれるはずだ。

ギィと重い木の扉が開く。きらびやかな装飾品と座り心地の良さそうな椅子、クリスタル製の豪華なシャンデリアが輝いている。そんな王の間の上座、つまり、王の椅子の奥に魔剣がある。金製の女神像の手に握られた魔剣は鞘からして美しい。この刀身は一体どのような姿をしているのだろうか。スーッとなでてみる。人差し指は綺麗なままだった。毎日欠かさず手入れされている証拠である。王の間にやってきた理由を忘れそうだった。魔剣を持ち、引き抜く。刀身は黒い。これはもともと人間だったのだと言われても理解に苦しみそうなくらい何の変哲もない剣だった。鞘を女神の手に戻し、剣を両手でしっかりと持つ。窓から差し込む光に当てて見てみたり、振ってみたり、なにか書かれていないか刀身を見てみたりしたが、マケーン・ケルトロス・バレンタインのマの字もない。ケの字もバの字もない。王の椅子にドカッと座り、呼びかけてみる。

「おまえ、・・・え〜っと、マケーン・ケルトロス・バレンタインさん?起きてます?話しかけられたの初めてですか?お〜い。もしも〜し。・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・」

何も反応しない。何か呪文を唱える必要があるのだろうか。何か手順があるのだろうか。というかそもそもこの剣はただ単に魔剣と言われているだけのただの剣なのだろうか。こいつが話さなければ俺が今やっていることが正しいのか正しくないのか、とんだ検討違いをしているのかそうでないのか、恐怖しなくてはならないのかそうでないのか、全く判断できない状態がずっと続くことになる。

「ウンともスンとも言わないなぁ〜。何とか言ってくれよ」

「・・・」

「お〜い。バレンタインさ〜ん。マケーンさ〜ん。ケルトロスさ〜ん」

「・・・」

「バ〜ンさ〜ん」

ブンブンブンブン!!!剣を片手で振り回す。乱暴に。だらしなく。軽快に。リズミカルに。優雅に。指揮者のように。ブンブンブンブン!!!ブンブンブンブン!!!!ブンブンブンブン!!!ブンブンブンブン!!!

「んっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!っもおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!振りまわすなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

とんだ金切り声である。耳がキンキンする。ってか、熟女がこんな声出すのか。出るのか。出るとしたらどこから出るんだ。木製のドアはしっかりと閉まっている。

「お目覚めですか?」

「聞かなくても分かるでしょ!このボンクラ!」

「ボンクラとは礼がないですね。まあ、ボンクラなんですが。で、あなたはマケーン・ケルトロス・バレンタインさんで間違いないですか?」

「ええそうよ!」

「どうして、反応したんです?」

「どうして反応したんです?って!振りまわされれば反応するでしょ普通!」

「いや、私がお聞きしたいのはそういうことではありません。どうして、私に反応したのかと言うことです。あなたが魔剣として戦場で使用されていたなら今以上に振りまわされていたはずでしょう?」

「・・・何が言いたいの?」

「つまり、どうしてあなたが、魔剣マケーン・ケルトロス・バレンタインがしゃべるということを王家の人間以外誰も知らないのかと言うことですよ」

「みんな知ってるわよ。そんなこと。あの戦いに参加したことがある人ならね」

「ほう。では、どうして誰もそのことを言わないのです」

「そこまで私に聞くわけ?あんたアイツの孫なんでしょ?ってか、なんで知らないわけ?」

「?」

「キョトンとしてるわね。やっぱりアイツはタヌキだったか・・・。まあいいわ。あんたにはそのうち話さなきゃならないことだから、今話しても問題ないわよね。っていうか、私を鞘にもどしなさい!!!」

女神の手に収まると彼女は話しだした。


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