No.1 終戦記念式典
時は聖暦2021年。神聖ローマニア帝国とラーマニア魔星帝国の激しい戦いはヘーゲル帝政講和会議をもって終戦を迎えた。それから100年後、ラーマニア魔星帝国の王ノール・キーンが携える魔剣マケーン・ケルトロス・バレンタインは終戦記念式典をよそ目に、神聖ローマニア帝国の王チャーリー・ロビンソンが携える聖剣セイーン・バレーン・クルセイダーをうっとりと見つめていた。
「あぁ、あの黄金に輝くあの鞘から引き抜いて彼の刀身を見てみたい・・・。もう!こんな形式だけの式典なんて意味ないわ!はやく!はやく!!はやく!!!もう待ちきれない!抜刀の儀式をはやく!!!」
彼女の声は鞘を抜けて、魔星王の耳に届いていた。彼は思い出す。かつて祖父から聞いた話を。
「ノール。お前は王となる身じゃ。ゆえに知らねばならぬことがある。あの魔剣のことじゃ」
「魔剣?」
「そうじゃ。あの魔剣じゃ。あれは話すことができるのじゃ」
「えっ!?・・・いや、お祖父様、からかわないでください。いくら魔剣であろうと話すはずがありません。というより、話す剣があれば魔剣だろうと、聖剣だろうとパーシーの『奇物見聞録』に載っているはずです」
「ほっほっほっ。お前ならそう言うと思っていたよ。ノール。だが、『奇物見聞録』は完璧ではないのじゃ」
「どういうことです?エリーリ師からそんな話は聞いておりません」
「そうじゃな。その通りじゃ。なにせ、このことは王家の、それも王になる者しか知らないことじゃからな。師が知らないのも無理はない。ほっほっほっ」
「そんなことが・・・」
「まあ、ついてきなさい。証拠を見せてやろう」
そうだ。あの冬の夜、俺はこの魔剣の真実を知った。あの、秘密の部屋で。
お祖父様がなにやら口ずさんで、壁をなぞった。どうやらヴァール語の呪文と魔法陣を書いたらしい。お祖父様が動きを止めると、魔法陣が現れ、紫色に発光しだした。未知の陣に未知の発光現象だった。背筋がすーっと寒くなった。
「いい姿勢になったな。ノール」
お祖父様は笑いながら、見えないドアノブを回す。