表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

アルコのニジ

作者: 無月雨景

みならいニジしょくにんのアルコは、


いつもうみをながめて、ためいきをついていました。


「はぁぁ・・・


どうして、うまくできないんだろう」



きょうも、アルコはニジこうぼうで、


ニジをえがくれんしゅうをしていたのですが、



「また、いっしょくしかでていないじゃないか」


アルカのえごくニジをみて、あきれがおでそういいました。




そうなのです。


アルコは、まだ、


ニジをいっしょくしかえがけないのです。


おやかたみたいに、


まちからまち、みなとからみなとまでかかる


おおきくて、


なないろのニジをかけることができないのです。



アルコのニジのおおきさは、


せいぜい、おうちいっけんぶん。


なによりもいちばんのもんだいは、


いっしょくしかえがけないのです。


それも、ムラサキいろだけです。



「ムラサキのニジなんて、


そんなニジは、だれもみたくないだろう。


どうやらおまえは、


ニジしょくにんにはむいていないのかもしれないな」


おやかたにそういわれて、アルコはしょんぼり。




それで、きょうもみなとのかいだんにすわって、


うみをみながら、ためいきをついていました。


と、そこへ、イルカがやってきました。


「おや、またおちこんでいるのかい?」


「ぼくは、ニジしょくにんには、むいていないんだ。


いっしょくのニジなんて、だれもみたくないんだ」


「そうなのかい?


ぼくは、きみのニジがすきだよ。


きみのニジをくぐるのもとびこえるのも、


たのしいもの」


「ぼくのニジなんて、


イルカくんのゆうぐになるくらいちっちゃいんだ」




アルコは、しょんぼりおかへとあるいていきました。


そこへ、ハチがやってきました。


「やあ、アルコくん。こんなところでどうしたんだい?」


「ぼくは、ニジしょくにんにむいていないみたいなんだ」


「なるほど、それでおちこんでいたのかい」


「だいもんだいさ。


いっしょくしかえがけないニジしょくにんなんて、


ひつようないんだ」


「ふむ、だったら、


ぼくのあつめたハチミツをたべたらいいよ。


ぼくらみたいにキイロくなれるはずさ」


「ぼくがキイロくなったっていみがないよ」


アルコは、とぼとぼとあるいていきました。




きがつくと、そこはもりでした。


こもれびがいっぱいで、


まるでミドリいろのせかいです。


「とても、きれいなミドリだな。


こんなミドリをえがけたらな」


アルコはまた、ためいきをつきました。


そこに、コトリがやってきました。


「あら、アルコくん。どうしたの?ためいきなんて」


「ぼくは、ニジしょくにんにむいていないんだ」


「あら、それでおちこんでいたのね」


「いっしょくしかえがけないから、


しょくにんしっかくなんだ」


「だったら、ここにいたらいいわ。


ここで、あたしたちとうたってすごせばいいわ。


かんげいするわ」


アルコは、くびをよこにふりました。


「ぼくは、きみたちのようにはうたえないよ。


それにぼくは、ニジしょくにんになりたいんだ」




アルコが、もりをぬけてあるいていくと、


そうげんにでました。


いろとりどりのはながさいていて、


とてもきれいなばしょです。


でも、アルコのこころははれませんでした。


アルコは、そうげんのはなばたけに、


ひざをかかえてすわりました。


そこへ、チョウがやってきました。


「あらぁ、アルコではなくって」


「やあ、チョウさん」


「このばしょで、そんなかおですわっているなんて、


なんてしつれいなのかしら。


このはなばたけでは、くらいかおはマナーいはんだわ」


「そうだよね。ごめんよ」


アルコは、しょんぼりしたままたちあがりました。


「まったく、


ここにきたひとをそんなかおのままで


かえすなんてできないわ。


いったい、どうしたの?」


「ぼくは、いっしょくしかニジをえがけないから、


ニジしょくにんにむいていないんだ」


「いろなんて、いっしょくでじゅうぶんだわ。


わたくしたちは、


さいこうのいっしょくをめざしているもの」


「でも、ぼくのえがきたいニジは、


おやかたみたいななないろなんだ」


「なるほどね。


うん。わかったわ。


いまから、みなとにおもどりなさい」


「え?」




アルコは、チョウにいわれたとおりに


みなとまでもどってきました。



くれはじめたそらのたいようが、


うみにむかって、すっかりかたむいています。


「はぁ。もう、きょういちにちがおわっちゃう」


アルコのおちこんだきもちが、


よけいにかなしくなりました。


みなとからみえるうみのなみが、


もうすぐしずむゆうひに


キラキラとひかっていました。


アルコのめから、


ひとしずく、なみだがこぼれました。


それはかなしいなみだでした。



と、そこへ、イルカがやってきました。


「おや、アルコくん。ないているのかい?」


「ないてなんかいないさ」


「そうか、ならよかった。


いわれたとおりに、ともだちをつれてきたよ」


「いわれた、とおり?」


アルコはくびをかしげました。


と、そこへハチがあらわれました。


「おい、イルカくん。


アルコくんにいわれたわけじゃないだろう」


「あぁ、そうだった」


「きみはあたまがいいのに、おちょうしものでこまるよ」


「まったくだわ」


そこに、コトリたちもきました。


「あたしたちも、もうねるじかんだというのに、


チョウさんにいわれてやってきたのよ」


「あ、こら、キミもよけいなことをいわないでくれ」


ハチが、ブンブンとコトリにもんくをいいました。


「チョウさんが?


そうだ、ぼくもチョウさんにいわれてきたんだった」


アルコは、かおをあげてあたりをみまわしました。


うみには、たくさんのイルカのともだち。


アルコのあたまのうえには、たくさんのはちのともだち。


ちかくのきには、えだをうめつくすほどのコトリたち。


きづくと、アルコはみんなにかこまれていました。



「さあ、みんなあつまりましたわね」


そこへ、チョウがやってきました。


チョウもたくさんのともだちをつれています。


「さあ、はじめますわよ」


「え?はじめるって?」


「いいから、いいから」


と、チョウはクスクスわらいました。


「まずはハチくんたち!」


チョウのごうれいで、ハチたちがいっせいにとびました。


「つぎは、コトリさんたち!」


こんどは、ことりたちがとびたちました。


そのくちばしには、このはがくわえられています。


「つづいて、わたくしたちよ!」


ハチたちと、コトリたちのうえをチョウたちがとびます。


「さあ、みんなでアーチをつくって!」


ハチたちとコトリたちとチョウたちが、


とびながらそれぞれかさなったアーチをつくりました。


「さあ!イルカくんたち!


このアーチをじゅんばんにとびこえつづけて!」


「わかった!まかせて!」


みんながつくったアーチをイルカくんたちが、


たえまなくとんでいます。


「さあ!アルコ!わたくしたちのうえに、


めいっぱいおおきなニジをおかけなさい!」


チョウにいわれて、


アルコは、いまじぶんにできる


めいっぱいのニジをかけました。



すると、どうでしょう。



アルコのムラサキいろのニジ。


イルカたちのアイいろのジャンプ。


チョウたちのアオいろのダンス


コトリたちのミドリいろのはっぱのトンネル。


ハチたちのキいろのだいこうしん。


オレンジいろのそら。


しずみゆくアカいろのたいよう。



「ニジだ!!」


アルコは、おおきなこえでいいました。


「どうかしら。これが、あなたのニジよ」


チョウが、とくいげにいいました。


「うん!とってもすてきなニジだよ!」


うれしくて、アルコのめには、


うれしいなみだがあふれました。


「みんな、アルコくんがすきだからあつまったんだ。


まちがいなく、これはきみのニジだ」


ハチがむねをはっていいました。


「このニジに、すてきなうたをそえるわ」


コトリたちがうたいだしました。


「でも、いろはさかさまだけどね」


と、イルカがわらいました。


「よけいなことをいうな」


ハチがブンブンいいました。


そこにいるみんなが、おおきなこえでわらいました。



そうしたら、


うれしくてあふれたアルコのなみだがこぼれおちました。


そのなみだが、


うけとめようとした、アルコのてのひらではじけました。



そのはじけたなみだが、


ちいさな、なないろのニジになりました。






                 おしまい








無力さに落ち込む事ってよくあります。

解決するかどうかとは別として、誰かがきっと頑張っているのを見てくれている。

それって、力になりますね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ