60:ネズミ小僧っぽい辻ヒーラー
本日投稿分の3/4です。
■ライアン 人馬族 男
■40歳
王都から派遣された徴税官は二〇人ほどの軍を率いてやって来た。
突然告げられた重税。青天の霹靂どころの騒ぎではない。
高圧的な態度で全てを毟り取っていくソレは山賊と同じだ。
我らは狩りの部族。
戦う術はあっても相手が軍ではどうしようもない。
食料の蓄えはほとんどが持ち去られ、次に来る徴税の際にはとてもではないが納める事など出来ないだろう。
いや、その前にそこまで生きていられるのかという不安がある。
なにせ食うものがないのだ。
農作物などもまだ育っているわけではない。
だからこそこうして夜間であっても狩りをしなければならない。
危険な森、そこで食料を確保しなければ我々に明日はないのだから。
「うわあっ! トレントだあっ!」
油断していたわけではない。
しかし夜間の狩りの上に焦燥もあったのだろう。
木に擬態したトレントに仲間が殺されそうになっていた。
くそっ! 間に合わないっ!
何人もの仲間が危機を迎えようとしている。
このままでは―――
―――その時、暗闇に一陣の風が吹いた。
なんだ?
そう思ったのも束の間、気付けばなぜかトレントは全て斬り殺されていたのだ。
何が起こったのか、しばし呆然とした。
すると、仲間の一人が大声を上げる。
「お、おい! こっちに魔物の死体が山のようになってるぞ! オークやウルフもある!」
なに!? すぐに駆け寄ると、そこには確かに魔物の死体があった。
しかも殺されて間もない様子。
これはすぐに解体すれば食料になる!
おまけに皮や魔石、牙なども売れば金になるだろう。トレントの素材もある。
もしかするとこれで次の徴税も凌げるかもしれん。
私はすぐに指示を出し、皆で解体を始めた。
しかし一体誰が……。
先ほどの″風″が原因だとは思うが……。
途中、仲間の一人が口にする。
「さっきの風……俺には一瞬、人に見えたんだ。黒い人と……まるでメイドみたいな……」
馬鹿な事を。
こんな夜中に森を走るメイドがどこに居るというのだ。
しかし誰かのおかげで助かったのには違いない。
俺は「それは神の使いじゃないか?」とだけ言っておいた。
それが誰であれ、感謝すべきだと思ったから。
■スシャ 草人族 女
■25歳
「こんなとこに居られるか! 俺は国を出ていく!」
夫のその言葉に便乗した人は多くいました。
皆がこれ以上耐えられないと思ったのでしょう。
育てた薬草はとられ、農地の新芽まで抜かれる始末。
もはや先はありません。
しかし決死の脱国はそんなに簡単にはいきません。
すぐに危険な目にあったのです。
イブルプラントの大群です。
どうやら群生地に足を踏み入れてしまったようです。
村を出て早々、私たちは死ぬはめに―――
―――ザクザクザクザクザクッッッッ!!!
……なぜか全て刈り取られました。
遠くから誰かが風魔法を放ったのでしょうか。
しかしその姿は見えません。
呆けていた皆が我に返ると、イビルプラントの死骸に群がりました。
イブルプラントは最上級の肥料になるのです。
そしてそれを用いて作られる薬草は発芽も早く効能も高い。
皆が脱国をやめ、すぐに村へと持ち帰ろうとしました。
「なぁ、さっき『ひゃぁぁぁぁっ!!』って悲鳴聞こえなかったか?」
「助けられた時か?」
「俺、森の向こうで黒っぽい人とメイドっぽい人が見えたんだが……」
「そんなばかな」
皆が口々に言いますが、誰かに助けられたのは間違いありません。
私には感謝する事しかできません。
そして皆で村に帰ると、そこには見慣れない黒い鉄の塊のようなものが……
「こ、これ……もしやタイラントクイーンの……」
「どうしてこんなところに……」
神様の使いではなかろうか、そんな声がそこら中から聞こえました。
■モーデ 蝶人族 女
■16歳
「ほら、とっとと歩け! 虫どもが!」
森を伐られ、花畑を潰され、それでどうやって蜜を集めろと言うのか。
私たちは徴税官の人たちに食い下がりました。
その中で斬られた者もいます。
なんという横暴、これが国の徴税官の仕事なのか。
しかしいくら文句を言っても何も変わりません。
私たちは軍に盾突けるほどの力も持ってないのですから。
結局は全ての村人が捕らえられ、王都へと連行されます。
殴られ、怒鳴られ、無理矢理歩かされます。
ああ、私たちはこのまま王都で奴隷として―――
「ぎゃあああ!!」「な、なんだ!」「敵襲!?」
徴税官を含めた軍の人たちが次々に倒れていきます。
一体何が何やら……そう思っているうちに立っているのは私たちだけになりました。
「おい、今、向こうに黒服とメイドの姿が……」
「じゃあそいつらが助けてくれた……?」
「どうでもいいさ! 今のうちに逃げるぞ! 一度村に戻ろうぜ!」
飲まず食わずで歩かされた私たちは、なけなしの気力を振り絞り、村へ帰ろうとしました。
「お、おい! こっちに大量の飯が落ちてるぞ!」
「飯だと!? 何言ってんだ!」
「ホントだって! 串焼きにパンにスープまである! なぜかどれも熱々だ!」
ああ、神は見捨てていなかった。
私たちは助けてくれた誰かに感謝をしつつ、食事をとったのです。
■ニュルオ 蚯人族 男
■83歳
「おい、見ろ! なぜかこんなところにミスリル鉱石が!」
「良かった! これで税が払えるぞ!」
「そんなことより聞いてくれ! さっき黒服とメイドが―――」
……全く訳が分からん。
……ただ神に感謝を。
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人馬族:ケンタウロス
草人族:聖剣伝説LOMの草人的な人
蝶人族:蝶々の翅と触覚をつけた小人
蚯人族:HUNTER×HUNTERの陰獣の蚯蚓っぽい何か




