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50:偽りの巫女



■ユーフィス・ユグドラシア 樹人族(エルブス) 女

■173歳 ユグドル樹界国第一王女 『神樹の巫女』?



 幼い頃から母に教わっていた。

 母は『神樹の巫女』。

 神樹を守り、森を守り、樹界国を導く者

 大司教様と並び、【樹神ユグド】様の神託を受けられる者。


 私はそんな母に憧れ、毎日勉強をした。

 いずれ私が母の跡を継ぎ、『神樹の巫女』となった時、立派にお役目を果たせるように。



 しかし次代の『神樹の巫女』に選ばれたのは妹のミーティアだった。


 私は驚き、嘆き、悲しんだ。毎日のように泣いた。

 神託により決められたのだからしょうがない、そう皆が言う。

 神は、【樹神ユグド】様は私を選ばなかった。妹を選んだのだ。

 とてもではないが受け入れられなかった。



 ミーティアは私がしていたような勉強を次々に行う。

 歴史、神殿垂教、武芸、魔法、私が羨む速度で習得していく。

 母の期待も、民の羨望も、国の威信も、私が欲しかった全てを奪っていく。


 なぜミーティアばかりが得る(・・)のだ。

 なぜ神はミーティアを贔屓(・・)するのだ。

 そもそも神託は正しかったのか。


 いや、神託は本当にあったのか?

 それは本人以外には証言などできない。


 ……そもそも神など居るのか?

 神が居ると、神託があったと言っているだけではないのか?

 大司教の陰謀により私は嵌められたのではないか?

 父も母も共犯なのか?



 そんな折、ミーティアは神託が下りたと皆に言った。



「創世の女神ウェヌサリーゼ様を崇めよ、そしてその使徒に協力せよ」



 貴族たちはその多くが反発した。

 当然だ。

 樹人族(エルブス)にとって絶対の神である【樹神ユグド】が、よりによって廃れた旧教の【創世の女神】に拝するわけがない。


 やはり神託は紛い物。

 神が居ないのならば『神樹の巫女』とは自分に都合の良い事を言って国を動かしているだけに過ぎない。


 ならば私が『神樹の巫女』を名乗ってもいいのではないか。

 ミーティアに奪われた民の羨望、国の威信、全てを私が奪い返してもいいのではないか。



 ミーティアと父への反発を強めた貴族たちをまとめたのは兄、第一王子のフューグリスだった。

 兄は日頃から樹人族(エルブス)第一主義の選民思想を持ち、他種族の奴隷を増やしていた。


 樹界国は樹人族(エルブス)の国であり、樹人族(エルブス)が動かす樹人族(エルブス)の為の国である。

 そんな考えは父に疎まれ続けていたが、ここへ来てあの馬鹿な神託である。

 【創世の女神】を崇めるというのは神聖国の天使族(アンヘル)基人族(ヒューム)の下に置かれるのも同じ。

 反旗を翻さないわけがない。



 私はそれに便乗した。

 紛い物の大司教の代わりには、兄の手駒の司教が収まった。

 金さえ与えれば言うことを聞く男だ。


 そうして私は『神樹の巫女』の座に就いた。

 ミーティアを罪人とし追放した事で空席となった座に。

 ようやく一つ、しかし私はまだ奪い返さなければならない。


 まずは紛い物の神を排除する。

 私に何も与えなかった居もしない神――【樹神ユグド】を国民の中から消す。


 神樹をなくすのが一番良い。

 あれがあるから信仰などというものが生まれる。

 居もしない神を崇める。


 しかしいきなり伐ってはそれこそ国民の反感を買うだろう。

 何より神樹に辿り着くまでの森を伐る必要がある。

 その為にまずは国の大部分を占める森を減らすことから始める。


 森を減らす、木を伐る事に慣れさせ、神樹への道を作らせる。

 そうしてようやく神樹を伐りおとす。

 偽りの神を引きずりおろす。



「神託がおりました。森を減らし、民の居場所、住まう場所を増やせ。それは益を生み、民の暮らしを豊かにするであろう、と」



 偽りの神託は偽りの巫女で十分。

 新王の座に就いた兄は他種族を蔑み、樹人族(エルブス)絶対体制を築く地盤を欲しがっている。

 大司教は他種族への重税と伐採する森の木材販売に躍起になっている。

 私は神樹を伐り、国民の信頼を一身に受けられれば十分だ。


 新しい人生、新しい国、新しい思想。

 それがようやく始まった。



 しかし、ある時、報告が入る。

 父の代から仕える宰相のゲルルドが、私と大司教を兄の執務室へと呼び出したのだ。



「どうやらミーティア様が生きておいでのようです。カオテッドで発見されました」


『なっ!?』



 兄も大司教も私も、しばし呆然とした。

 ミーティアは獣帝国の奴隷商に売られ、その馬車が国を出たら魔物に襲われ殺されるように、特定の魔物を惹きつける香薬を馬車に仕込んでいた。

 そう兄と宰相が手配したはずだった。


 壊れた馬車も発見され、奴隷商の遺体も確認。

 ミーティアの遺体はなかったが、魔物の胃袋に収まったと思っていた。

 それがなぜ生き延びて……!



「殺しなさい! すぐに!」



 私は声を荒げた。

 私から全てを奪った忌まわしき妹。

 今も国民の信頼が残る()『神樹の巫女』など邪魔だ。


 それだけを告げて私は足早に部屋を出た。

 早く妹を殺さねばならない。

 早く神樹を伐らなければならない。

 でなければ私は―――。



 ふと、石造りの尖塔が目に入る。

 王都の郊外に建てられた、背が高く堅牢なそれは『罪滅の塔』。

 父と母が幽閉されている塔だ。


 樹人族(エルブス)第一主義の兄はいくら邪魔でも樹人族(エルブス)である父母を殺そうとはしない。

 閉じ込め、隔離しているだけだ。


 しかしミーティアは『日陰の樹人』。

 それはもう樹人族(エルブス)とは見なされない。

 白い肌も、黄金の髪も、風魔法までをも失った者は樹人族(エルブス)ではない。

 だから殺す、それはいい。


 けれど父母を生かしたままで本当に良いのだろうか。

 父はともかく、母は元『神樹の巫女』。

 今のミーティアと立場は同じだ。


 あれほど憧れだった母。

 それが紛い物だと気付いた時の絶望は忘れない。

 私を騙し続け、奪い続けた母。


 出来ることならばこの手で殺したい。

 しかし兄は樹人族(エルブス)殺しを許すだろうか。

 下手をすれば私が裁かれる。

 ならば私は―――。




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