3-1:炎の剣士、混沌の街へ
アフター3開幕。
章の終わりまで毎日20時投稿です。
■セキメイ 纏炎族 女
■135歳 Aランク組合員
世界で一番強い戦闘系種族とは何か。
大陸全土でそう聞いた場合、最も多い声は【竜人族】ではないだろうか。
体術をメインとした攻撃力、その速度、さらには竜鱗による物理防御・魔法防御もある。
おまけに竜魔法と呼ばれる高位魔法まで使えるらしい。まぁ竜人族で【魔法使い】というのは聞いた事がないが。
一見万能に見える竜人族。とは言え、特化型の種族に劣る部分もある。
魔法だったら導珠族のような魔法使い系種族に劣るだろうし、水中戦であれば水棲種族が上だろう。
空を飛べる上に神聖魔法が得意な天使族が最強だと言う人も多いかもしれない。
しかし竜人族にしても天使族にしても数が少ない上に閉鎖的な種族だ。
その力を実際に見た事のある人なんかまず居ない。だからこそ過大評価される部分もあるとは思う。
特に大陸西部ではそれが顕著なのだ。
見たことのない竜人族よりも見聞きしやすい強種族を挙げる。
それが纏炎族だ。
大陸西部の民は最強の種族と聞いて纏炎族と答える者が多い。
外見的特徴は赤く燃える髪と、赤い目くらいだろう。それ以外は最弱と言われる基人族と変わりない。
しかし纏炎族は炎を操る。
身体を炎に変える事が出来、それにより物理攻撃を無効にも出来る。
竜人族や岩人族のように物理防御が高い、ではなく無効とする。
火魔法の適正は種族全員が持っていて、魔法使いとして活動する者も少数ながら居る。
とは言え多くの纏炎族は近接前衛職として戦う事がほとんどだ。
武器に炎を纏わせ、それでもって攻撃する。そんな戦いを好む者が非常に多い。
私の家も類に漏れず、長剣一本での戦いを幼い頃から父に叩きこまれた。
そして集落を出て、国を巡り、父と二人で武者修行のような旅を続けている。
「セキメイ、斬り返しが遅い。左足に体重が乗っていない」
「はいっ!」
父――グレンは知らない人は居ないと言われるほどの剣の達人だ。【白炎】という異名も持っている。
操る炎の威力が高すぎて白く見える事からそう言われているらしい。
魔物討伐組合にしても迷宮組合にしてもSランクとして登録されており、どこの街に行っても注目の的だ。
私はそんな父に修行をつけて貰いつつ組合にも登録したが、未だAランク止まり。
まぁ父とパーティーを組めば共にSランクなのかもしれないが、あくまでソロ二人という事で登録している。
どんな強敵であれ、一人で倒せるくらいに強くなければならない。それが我が家の家訓のようなものだからだ。
ちなみに父は一人で迷宮を制覇した事もあるし、最強の亜竜として名高いファイアドレイクにも勝った事があるらしい。
世界一の剣士なのは間違いないだろう。
「いや、セキメイよ。世界は広いのだ」
「父上より上の剣士がいると?」
「少なくとも一人は知っているな。ガーブという獅人族だ。【剣聖】と言われている。私も過去に一度戦った事があるが、あれは強かった。剣技だけで考えれば完敗と言えるかもしれん」
「なんと……! そこまでですか……!」
「まぁ昔の話だがな。獅人族の寿命を考えればすでに死んでいるかもしれんが」
いくら昔の話とは言え、父にそこまで言わしめるガーブという男が気になった。
とは言え、その男が居るであろうボロウリッツ獣帝国はエンディール砂漠の先にあるはるか東の地。
修行の旅を続け、いつか行ければ……程度に考えていた。
ところが旅の途中で立ち寄った迷宮組合である噂を耳にする。
何でもSランクを超える『SSSランククラン』というのが生まれたらしい。
「さすがに名誉称号みたいなもんだと思いますがね。グレンさんみたいなSランクだって規格外の強さなのに、それを超えるとか想像出来ませんよ。それに仮に居たってSの上なら『SSランク』でしょ? 『SSSランク』って何だよって話で。だから名前だけの称号なんじゃないかって思いますよ」
情報をくれた男はそう言う。
さらに詳しく聞けば、迷宮組合の本部があるカオテッドとかいう街に所属するクランらしいのだ。
その男は本部だからこそ、そういった称号めいたランクを渡せたんじゃないかと勘繰っていた。
しかし父の考えは違っていた。
「あの本部長が名誉称号など作るはずがない。仮にどこかの貴族が権力にものを言わせてもそれに従うようなタマではない」
「お知り合いですか?」
「私をSランクに認定したのがスペッキオ本部長だからな」
当時はカオテッドという街に本部などなく(そもそもカオテッド自体がなかったようだ)、武者修行で訪れていた魔導王国での事だったらしい。
スペッキオという人もその時は本部長ではなく支部長だったらしいが、その頃からの知り合いのようだ。
俄然興味の湧いた父に連れられ、私は東へと渡った。
デュオート連合国からハムナムド造王国を経由しエンディール砂漠に入る。
いくつものオアシスを通り過ぎ、砂漠を越え、ボロウリッツ獣帝国へ。
さらに北進し、四か国の中心地、大河の交わるその土地――【混沌の街カオテッド】へと真っすぐに向かった。
修行の旅を始めてからこれほどの距離を行く事はなかった。
新しい街に行っても腰を下ろさず、修行もせず、ただひたすらに進む。
段々と故郷から離れる怖さ。想像出来ないほど遠くの地へ向かうという怖さ。じっくり修行の出来ない怖さ。
それらを抱えながら過酷な砂漠を渡るという、ある意味これも修行なのだなと思わせるほどのものだった。
やっとの事で辿り着いたカオテッドの街は、これが出来てまだ十年ほどの街なのかと疑うほど立派なものだ。
これまで見てきた街の中でも特に大きい部類だろう。率直に言えば短期間で急速に発展しすぎている。
聞いた話では大迷宮を中心に資源が多く採れ、また周囲の四か国がこぞってそれを欲し、我も我もと励んだが故に大きく賑わう街になったのだとか。
さすがの父も「この街はすごいな」と感心するばかりであった。
とりあえず迷宮組合の場所を衛兵に聞くと、中央区という場所の真ん中にあると言う。
私たちは大通りを進み、まずはそこを目指した。
正直疲れているのでどこかで休みたい気持ちもあるし、立ち並ぶ屋台からは良い香りが漂って来て思わず立ち寄りたくなる。
しかし主目的は父とスペッキオ本部長との面会なのだ。
まずはそれを済ませようと私たちは歩みを進めた。
「おい、あれって纏炎族か?」
「だな。初めて見たぜ。珍しい」
さすがにここまで遠くに来ると物珍しく見られるようだ。
砂漠の西側では時折見かけるし、そこまで希少な種族というわけでもない。
おまけに父が有名人なので、連合国や造王国では結構騒がれたりもしたものだ。
それがないのは有り難いが、滅多に見ない希少生物を見つけたかのようにヒソヒソ話されるのは、それはそれで居心地が悪い。
とは言えカオテッドが四か国に跨った雑多な街だというのは確かなようで、これまで立ち寄った獣帝国の街よりも反応は幾分かマシだ。
今歩いている南西区も獣帝国領らしいが、獣人系種族でない者もちらほらと見かける。
種族が入り乱れた街だからこそ纏炎族であってもそこまで珍しがられる事はないのだろう。
そんな事を思いながら、第一防壁と呼ばれる中央区への入口に来た。
ここは国境も兼ねているそうで、ちゃんとした検問となっている。
「おお、纏炎族ってだけでも珍しいのにSランクとはな。迷宮に行くのかい?」
「ああ」
「カオテッド大迷宮は迷宮組合の中だからな。大通りを進めば中心に大きい建物があるからすぐに分かると思う」
「ん? 組合の中に迷宮の入口があるのか?」
「まぁ余所じゃ考えられないと思うけどその通りだ。詳しくは組合で聞くといい」
「分かった。恩に着る」
普通、迷宮というものは街から少し離して入口があるものだ。氾濫が怖いし、魔物が蔓延る迷宮が街中にあるというのは住民にとっても恐怖でしかないだろう。
ところがカオテッド大迷宮は街の中心。それも迷宮組合の中に入口があるという。
カオテッドが出来た経緯は聞いたからある程度は納得出来る部分もあるが、何も入口の上に組合を建てなくても……と思ってしまう。しかも世界に跨る組合の本部だ。よくぞ思い切ったものだ。
しかしあの衛兵は父がSランクだと知ってもさほど驚かなかったな。
やはり本部ともなれば珍しくないものなのか。他にSランクが居るのか……いや、そうそう居ないはずだが。
それとも例のSSSランクというのが関係しているのか……色々と不可解な街だ。
ともかく中央区へと入ったわけだが、明らかに南西区とは様子が異なる。
南西区でも、これまで訪れてきた獣帝国の街に比べて多種族を見かけたり、売られているものを眺めても一風変わった趣きを感じた。
しかし中央区は壁一枚隔てただけとは思えない景色。
それは種族の多さ、建築様式、屋台の並び、売られているもの、そして圧倒的な組合員の多さだ。
見るからに迷宮に潜るであろう装備で通りを歩いている者が多い。
「ほう、これはすごいな」
父も感心といった様子だ。世界中を武者修行で巡った父であっても感嘆の声が出るものらしい。
私たちは大通りをそのまま真っすぐに進む。もちろん周りを観察しながらだが。
物見遊山の観光といった雰囲気になってしまうが、それも致し方ない事だろう。
世界は広い。
私の知る大陸西方の国や街のどことも違う。見分を広めるとはこういう事を言うのだろう。これもまた修行だ。
そうこうしているうちに迷宮組合に辿り着いた。
まさしく砦といった外観だが、組合員が引っ切り無しに出入りしているから間違いないだろう。
これもまた、今までに訪れたどの組合とも全く違う。頑強さを前面に押し出したような造りだ。
まぁ中に迷宮の入口があるというから、こういった造りになるのだろうが。
父に続いて組合に入れば、人の多さや広さは想像通りといった所。しかし配置自体はどこも変わらないらしい。
右手に受付、奥には酒場か。
私たちはたまたま空いていた羊人族の受付嬢に組合員証を見せ、取り次ぎを願った。
「Sランクっ……のグレンさんですね。それとAランクのセキメイさん。拠点変更ですか?」
「その前にスペッキオ本部長に会いたいのだ。グレンが来たと伝えて貰えるか?」
「お知り合いですか。只今聞いてきますので少々お待ち下さい」
やはりSランクと聞いても驚きは少ないようだ。本部という事で訓練されているのかもしれないが。
受付嬢は階段を上がる。本部長室が上階にあるのだろう。しばらくすると下りてきた。
「お会いになるそうです。ご案内します」
「よろしく頼む」
受付嬢に続いて私たちは階段を上った。どうやら三階らしい。
階段を上ってすぐの部屋が本部長室のようで、前に立つなり、受付嬢はノックし私たちが来た事を伝える。
老人の声ですぐに返答があり扉は開かれた。
「おお、本当にグレンではないか。久しいのう」
「お久しぶりです。さすがに老けましたな」
「纏炎族と一緒にするでないわ。導珠族とて長命な部類だというのにのう」
旧知の仲といった感じで顔を合わせるなり談笑を始めた。
導珠族の老人がスペッキオ本部長か。
しかし私は本部長の対面に座る男の方が気になっていた。
見るからに基人族。真っ黒な貴族服を着た基人族が居たのだ。
しかも幾人ものメイドと共に。
全く意味が分からず、私の頭には疑問符ばかりが浮かんだ。
吸血鬼を出したかったのですが、そうなると見た目が基人族だなーというのが難点でした。この小説の場合、セイヤくんを一見して基人族だと分からないと意味ないんで。
で代わりに作ったのが纏炎族です。
吸血鬼の高膂力・高魔力・身体が蝙蝠や霧になる、という特徴を、近接特化・火魔法得意・身体を炎に変えられる、としたものです。
ちなみに、他の身体的特徴としては燃えている髪(熱くない)、真っ赤な瞳です。寿命は約800歳。
セキメイは高校生くらいな見た目です。グレンは486歳で壮年といった感じ。
身体を炎に変えるのは固有魔法のような感じで任意で変化しますが、炎の時は物理・火無効です。(着ている服がどうなるかは分かりません)
武器に纏う炎は、肉体に纏う事も出来ます。その熱量は個人差があり、グレンさんのはめっちゃ熱いらしいです。
イフリートの炎とどっちが熱いんですかねぇ。




