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317:終わりと始まり



■ボディオ 猪人族(ボエイル) 男

■19歳 獣帝国 帝国騎士団 新人



「くそっ! 何だってんだよ、一体っ!」



 俺は一人戦場から走って遠ざかっていた。

 いや、正確には俺だけじゃない。同じように逃げ出すヤツが何人も見える。


 走りながら悪態をつき、混乱した頭を整理していく。



 とりあえずあの基人族(ヒューム)のメイドたち、その初撃の魔法でやられたのは間違いない。

 とんでもない射程から魔法を撃たれ、足元は凍り付き、戸惑う間もなく火魔法だの土魔法だのよく分からん光線だのが放たれた。


 そして地面に着弾した魔法の衝撃で俺の身体は吹き飛ばされ……気付けば前線から離れた地面で寝ていた。



 目覚めて最初に覚えたのは恐怖(・・)だ。

 そして混乱。パニック。脱兎の如く逃げ出す事しか出来ない。


 もうあの初撃だけで勝てない相手だと分かる。

 恰好や種族で油断していたのは確かだが、それでも何かあると気を張っていたのは事実だ。しかしそれでも程遠い存在だった。


 Sランクだからとか、そういう次元じゃない。

 あいつらは戦ってはいけない存在だったんだ。



 だから俺は一目散に逃げ出した。


 あいつらの存在が訳分からない。あいつらに挑もうとした国が訳分からない。俺がここに居る事が訳分からない。


 頭を整理なんて出来ない。考えれば考えるほど混乱していく。



 とりあえず戦場から離れなくては。やつらから逃げねば。

 それだけだ。それしかもう考えられない。



 もう騎士団なんてやめてやる!

 こんな無謀な戦いをする国なんて潰れちまえ!


 そう叫びながら、俺はイーリスに向けて走った。




■イブキ 鬼人族(サイアン) 女

■19歳 セイヤの奴隷



 獣帝国軍の総大将という豚人族(トンポーロ)は捕らえられた。

 その周囲にいた大将格の貴族連中も一通り殺したらしい。


 しかし戦争は未だに続いている。


 騎士団と思われる一部が逃げ出したのは見えた。

 しかし大多数は相変わらず、特に樹界国軍と魔導王国軍の方でぶつかり合っている。



 生き残っている諸侯貴族の私兵なのか、傭兵や組合員の集まりなのか、それとも止める切っ掛けがないだけなのか。

 指揮官級の貴族が減った事で瓦解すると思われたが、意外にも戦いは継続されている。



 とは言え、完全にカオテッド連合軍が優位なのは明らか。


 樹界国軍と魔導王国軍の戦い方は盾を最前列に並べ、敵を抑え、後方から弓や魔法を撃ちこむというオーソドックスなものだが、それが獣帝国軍に見事に刺さる。


 さらには序盤は見に徹していた神聖国軍も上空から神聖攻撃魔法を撃ちこむようになった。もちろん回復も怠っていない。



 こうなると獣帝国軍に防ぐ術はない。

 元より魔法に弱い獣人系種族が多いのだ。そこへ来て魔法の雨あられ。これは辛い。


 鬼人族(サイアン)は獣人系種族以上に極端なのだが、同じような攻撃に晒されれば私とてキツイだろう。

 むしろこの攻撃を受けて、よくまだ戦っているものだと感心するほどだ。

 やはり撤退を指示する指揮官が居なくなったという事なのかもしれない。



 私たち【黒屋敷】も最前線に居ながら出番が少なく、侍女たちからブーブーと不満が出る始末。

 士気は高いのだが肝心の敵が我々を避けていくのだから仕方ない。わざわざ追いかける真似も出来ない。

 ツェンやラピスはもちろんなのだが、意外にもエメリーやジイナまでもが魔剣を振るいたがっている。


 まぁエメリーは何となく分かる。

 ご主人様に盾突いた輩に鉄槌を食らわせたいのだろう。

 しかし【魔剣グラシャラボラス】では鉄槌どころの騒ぎではなくなるのだが。


 ジイナも【魔剣マティウス】を振るいたいだけだと思う。

 あいつは魔剣を持つとテンションがおかしな事になるからな。危険なやつになったもんだ。



 周りの組合員も騒いでいる。私の【魔剣イフリート】は有名だったが、それ以外にも魔剣を持っているのかと。

 エメリーの魔剣はともかく、ジイナの魔剣は【氷の魔剣】で目立つからな。すぐに魔剣だとバレる。

 ともかくそんなわけで戦争の最前線だというのに意外と暇なのだ。



 ――と、その時だ。



 後方、カオテッドの方から急ぎ駆けて来る伝令があった。


 自軍の波を掻き分け、最前線に未だ留まる私たちの所までやって来た彼。見た事のある組合員だ。



 ランクが低い組合員などは参戦したくとも組合側から止められ戦場に出る事は出来なかった。

 それでもカオテッドの危機に立ち上がりたいという組合員は多い。

 そういった者は後方支援。補給や伝令、住民の避難誘導などにも駆り出される。

 息急き切って走って来た彼もそんな一人。


 てっきり先ほど捕らえた豚人族(トンポーロ)の件で何かあったのかと思ったが、どうも様子がおかしい。

 切羽詰まっているように見えたのだ。



「【黒屋敷】!!! 伝令だ!!!」


「どうした! 何かあったのか!」


「はぁっ、はぁっ、し、至急カオテッドに戻ってくれ!」


「分かった! 南西区の前線本部か!? それとも中央区の組合か!?」


「違う! 北西区に向かって欲しい! すぐにだ! 頼む!」



 北西区? その言葉に私たち全員が疑問を覚える。


 今回の戦争はカオテッド全体で準備を行っている都合上、連合軍全体の司令本部は中央区の迷宮組合であり、前線基地と呼べる前線本部は南西区にあるのだ。


 その他の地区は一時的に南西区の住民を避難させたり、万が一に備えて衛兵を警戒させていたりと、それくらいの用途でしかない。



 だと言うのに伝令の彼は北西区へ行けと言う。

 どういう事だ? 全く話が見えない。

 そんな顔をする私たちに彼はさらに言葉を繋げる。









「ま、魔族が来たんだ! 鉱王国の方から! 大軍で!」


『魔族!?』



 鉱王国から魔族の大群……それはまさか――



「【ゾリュトゥア教団】か!」





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連戦はこの小説にはよくある事。

果たして章タイトルの聖戦とは獣帝国との戦争の事か、そんなわけはない。

こんな片手間な蹂躙劇が聖戦のはずがない。

という事でここからが本番です。

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村娘に転生してスローライフを夢見ていたのに就いた職は【毒殺屋】!?
暗殺者とか嫌なんで、こうなりゃもう冒険者になります!
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