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250:三階層の領域主を倒して回ろう!



■ジイナ 鉱人族(ドゥワルフ) 女

■19歳 セイヤの奴隷



 三階層の【領域主】マラソン。

 そう聞くとユアさんでなくても恐ろしく感じるものだが、実際は結構順調だったりする。


 十四人もの侍女たちが固まって行動しているのだ。

 ご主人様たちが居なくとも装備も充実、スキルも含めかつての四階層挑戦の頃に比べれば段違いと言えるだろう。


 ウェルシアさんが<風の遮幕(ウィンドヴェール)>を張り、サリュちゃんが<魔力探知>している現状、そうそう困難な事などない。



 三階層は匂いや魔物も厄介なのだが、現状で一番厄介なのはその広さだ。

 入口から最短で小走りに駆けても、ゴールの『不死城』までは一日掛かるという広大さ。


 そこに散らばる【領域主】を倒して回るのだから、当然一日やそこいらで終わる話ではない。

 【領域主】の数こそ二階層に比べれば少ないのだが、そのエリアに行くまで、移動が大変なのだ。



 もっとも以前の二階層探索と違い、キャンプ地に帰ればご主人様が居るわけで、<インベントリ>から暖かくて美味しい食事が出される。

 夕飯を楽しみにというモチベーションで、皆が嫌いな三階層も回れるのだ。



「やる気の維持が重要だ。だから夕飯は惜し気もなく食材を使うぞ。とりあえず今日はワイバーンステーキだ!」


『おおー!』


「最終日にはドラゴンステーキだからな。これはもう決定事項だから」


『おおおおー!!!』



 拍手喝采。ドラゴンステーキは美味しすぎて、何か特別な時でもなければ食べるのが危険なのだ。

 あの巨体の風竜がどんどん食べられていく。食べ過ぎ注意。

 だがご主人様は今回の探索で出すらしい。それは楽しみだ。


 【領域主】を倒して回る私たちも大変だが、グレートモスを狩り続けるご主人様たちはもっと大変だと思う。

 圧倒的作業感。大して強くもない相手を連続で狩らなければならないし、かと言って油断すると状態異常の餌食となる。

 まぁシャムさんが居れば問題ないが、それでも気を付けるべきだろう。


 そういう意味でも豪勢な夕食というのは有意義だと思う。

 これでお風呂でもあれば言う事はないが、迷宮内にそれを求めるわけにもいかないし。



 ……はっ! <インベントリ>で風呂ごと持ち運べるのでは!?


 ……いやしかし、さすがに誰に見られるかも分からない状況で入るわけにも……。


 ……はっ! ならば風呂を入れた小屋ごと収納すれば!? ……今度ご主人様と相談すべきか。



 さて、話を【領域主】マラソンに戻そう。


 三階層で今までに倒した【領域主】は『不死城』までの最短ルート。

『巨大墓地』のデスコンダクター、『廃墟』のデュラハン、『不死城』のリッチだ。

 そして今回集中して狩るグレートモス、以上の四体を抜いた【領域主】が今回の討伐目標。


 差し当たって、三階層入口の左手に広がる『沼地』エリアから取り掛かった。

 こちら側もアンデッドはほぼ出ない。多少は出るが。その代わりに足元が悪い。いずれにせよ探索は困難だ。


 出て来る魔物はマッドスパイダーやマッドスネークなど沼地特有の魔物が多い。

 足元からマッドワームが出て来る事もあるし、空から虫系・鳥系の魔物も襲い掛かる。


 そこの【領域主】がメデューサボール。ふよふよと浮かぶ蛇の集合体のような魔物だ。

 魔法攻撃に加え、毒と石化の状態異常を使ってくる難敵。

 三階層からは状態異常を使ってくる魔物が多い印象だが、それは【領域主】にも当てはまる。



「三回ほど倒せばいいですかね。ご主人様もこの素材にはあまりご執心でないご様子でしたし」


「そうだのう。ユアよ、特に錬金素材に必要というわけでもないのだな?」


「は、はいっ、だ、大丈夫ですっ」



 エメリーさんとフロロさんが軽く打ち合わせて、とりあえずリポップ待ちから三回倒した。

 浮いているので遠距離から一方的に攻撃するだけだ。状態異常を使う相手に近接で挑むのは遊びすぎだと。


 いつもならばごねていそうなツェンさんも【空拳】のスキルを得てから、中距離での戦いを意識している。今やスキルや武器も含めて完全な前衛と言えるのは、ヒイノさんとドルチェちゃん、パティちゃんくらいではないだろうか。


 ネネちゃんも魔剣を使えば一応中距離の手段はあるわけだし。私も一応【鉱砕の魔法槌】で魔法を撃てる。



 というわけで道中の敵も含め、サクッと倒す。やはり厄介なのは魔物ではなく階層の広さと足元の悪さだなーと実感。

 ご主人様の影響からか、皆が頻繁に<洗浄>をしているのを見ると少し面白い。



 この日はメデューサボールだけに留まらず、『沼地』の奥に当たる『湿地荒野』エリアにも行った。

 ススキのような中途半端な背丈の植物があちこちに群生し、魔物の発見を困難にしている。パティちゃんは完全に隠れるね。

 まぁあくまで視認での索敵だけであって、<魔力感知>には何の問題もないのだが。


 雑魚敵としてゴースト系のアンデッドが多い。ゾンビ系が居ないので匂いは大丈夫だ。

 そして草むらから蛇系の魔物や、空からは鳥系の魔物が襲い掛かる。


 ここの【領域主】はブライトイーグルという大きな鳥。

 アンデッド階層である三階には似つかわしくない真っ白な鳥で、光魔法と風魔法も使ってくる。


 闇ばかりの階層にあってかなり異質な存在だ。お供にシルバースワローの群れを率いているのがまた厄介な所。



「メデューサボールはただの展示用ドロップ集めでしたがこちらは違います。時間内になるべく多く狩りますよ」


『はいっ』



 エメリーさんの号令に皆が返事を返す。

 時間内というのは夕飯までにキャンプ地に帰りましょうと、ただそれだけの事。なんだったら明日また来てもいいのだが、明日は明日で別のエリアにも行きたいという事だろう。


 ブライトイーグルのドロップ品は展示用だけでなく錬金素材にも使う。それは確定している。

 魔石は風属性なので魔法剣に使う予定。

 そもそもカオテッド大迷宮に風属性の【領域主】は少ないので貴重なのだ。土・闇は多いのだが。火も四階層におそらく多くいるだろう。


 念の為、五回ほど狩ってみた。やはり遠距離攻撃がないと厳しい。私だったらハンマーを投げるしかない。

 そんなわけで前衛組は襲ってくるシルバースワローの対処が主になる。

 対処と言っても魔法使いの皆が優秀なので、あっという間に群れも消え去ってしまうのだが。



「あたい、居る意味あるのかなぁ……」


「パティちゃん、私たちはおやつでも食べていましょう」


「わ、私が盾受けする機会をっ! こう、槍でグサッとやりますんで!」



 パティちゃんとおやつをとるヒイノさん。そして戦いをねだるドルチェちゃん。

 私もさすがに鳥相手だと出番はないので、おやつに混ざろうかと思う。

 一応、周囲の警戒くらいはするけども。


 そして翌日。ご主人様たちが戦っているさらに先の『山岳荒野』エリアに侵入。

 緑のない、茶色の岩肌だけが見えるような山だ。

 岩と崖に遮られた幅広の山道をゆるやかに登っていく。


 ここにはスケルトンナイトが群れで出て来る。『廃墟』エリアのようだ。

 さらには上空からボーンバードが骨のみの身体で飛んできたり、ボーンジャイアントというトロール並みの体躯をもったスケルトンもちらほら出て来る。もっともトロールほどの強さはないが。

 あとは石化をしてくる大きなトカゲ、バジリスクに注意。



 【領域主】としては二種。ボーンレオというゴールデンレオのスケルトン版のような魔物と、ドラゴンゾンビ。

 ボーンレオは素早い動きと高い攻撃力、そして闇魔法を使う、いかにも上位アンデッドという強さだ。おまけにボーンドッグの群れを従えている。


 サリュちゃんとマルちゃんが<聖なる閃光(ホーリーレイ)>を使えば終わってしまうが、久しぶりの近接主体。前衛組がようやく出番だと言わんばかりに奮闘した。もちろん私も。



 そしてドラゴンゾンビ。これが三階層でリッチに次ぐ難敵と言われている。

 風竜と同じくらい大きな体躯だが、翼も爛れているため飛ぶことはない。ドラゴンと名乗ってはいるがブレスも吐かない。

 というわけで分類的には竜種ではなくアンデッドになるという話だ。


 しかしその見た目に相応しい体力と攻撃力を有する。


 おまけに近接で攻撃しようとすれば間近でうじの湧いた腐肉を見るはめになるし、ウェルシアさんの<風の遮幕(ウィンドヴェール)>も効果範囲内にドラゴンゾンビを入れてしまえば意味を為さない。近寄るわけにはいかないのだ。



「サリュ、マル、お願いします」


「「はいっ」」



 そんなわけで<聖なる閃光(ホーリーレイ)>一択。

 さすがにツェンさんも何も言わない。ツェンさんだって臭いのは嫌だし近寄りたくないのだ。


 前回の探索で居なかったラピスさんは、まだ匂い対策をしていない状態での近接戦闘を経験していないので少し戦いたいような事を言っていたが、実際にドラゴンゾンビを間近で見て「うわぁ……」と引いていた。


 【魔導の宝珠】の人たちや他のAランクのクランの人たちは倒したのかもしれないが、よく普通に倒せたものだと感心する。

 それくらい近寄りがたい魔物なのだ。汚いし臭い。



 ともかくサリュちゃんとマルちゃんの神聖魔法で一蹴に成功。さすがにリッチほど強くはないらしい。

 リッチはアンデッドらしく神聖魔法が弱点ではあったが、それ以前に魔法防御(抵抗)が高いんだと思う。

 そのリッチでさえ<聖なる閃光(ホーリーレイ)>二発で死ぬのだから、ドラゴンゾンビが生き残るわけがない。


 ……まぁアンデッド相手に生きるも死ぬもないのかもしれないが。



 私たちの【領域主】マラソンはそんな感じで順調だ。

 三階層をぐるりと散歩している感もあるが、これも探索。

 魔物を倒し、時々は採取などもちゃんと行っている。



 そして三階層探索の三日目。


 私たちは『不死城』でリッチを倒そうという話になった。

 錬金素材で使った分の展示用ドロップを集めようかと。

 ついでに未だ探索していない『不死城』の宝魔法陣も回収しようかと。



 そこで私たちは遭遇する事になる。


 同じく探索に来ていた別クラン――【赤き爪痕(レッドスカー)】と。




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ドラゴンゾンビは飛ばない、ブレスを吐かない飛竜です。動きも鈍い。

攻撃力と体力が多い亜竜といった感じでしょうか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です、獣帝国最強さんは個人的に最近の癒しなので、ついに黒の主さんとエンカウントするのは楽しみですね [一言] まぁアンデッドモンスター相手に近接戦闘って普通にやりたくないですよ…
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