24:そして舞台は【混沌の街カオテッド】へ
■ミーティア・ユグドラシア 樹人族 女
■142歳 セイヤの奴隷 『日陰の樹人』
イーリスの街では結局、四日ほど足止めをくらいました。
淫魔族の尋問はすんなり終わったそうで、報奨金は二日目には貰えました。
街をスタンピードから救い、重要人物の魔族を確保したという事で、かなりの金額です。
魔族自体が人類共通の敵ですので、街からだけでなく国からも出ているのかもしれません。
時間がかかったのは魔物の解体のほうです。
ゴブリンやコボルトはともかく、ウルフは毛皮を剥ぎますし、オークは肉が欲しい。
オーガも皮は丈夫な防具となります。
何より地竜は亜竜と言えどもさすがに竜種。
捨てるところがないらしいので、優先的に解体していました。
私たちの装備に使えそうな部位も少しずつ貰っています。ついでにオーク肉も。
カオテッドの街で装備を見繕う際に活用できるようならしたい、という事です。
装備と言えば、四日の間にタイラントクイーンのドロップの【鉄蜘蛛の糸袋】から反物を作りました。
さすがに装備品を作り上げるような時間はありませんでしたが、反物にするくらいの時間はありましたので。
とても綺麗な生地。
樹界国の王家でも滅多に見られないような素晴らしいものです。
これで侍女服をつくると言うのですから非常に贅沢だと言わざるを得ません。
しかし私たちの場合、戦闘服も兼ねるわけですからそれも考慮してという事でしょう。
そうしてご主人様が気になったものを買いこんだり、私たちへお小遣いを渡して自由に買い物などさせて頂きました。
しかしご主人様、奴隷にお金を与えるのはどうかと……。
しかも金銭感覚がどうも麻痺しているご様子……。
とりあえず下着などの必需品や気になった調味料、香辛料を買わせて頂きました。
それでもおつりが山ほど残りましたが。
四日後、無事に解体が終わり、組合長のチアゴさんと臨時の依頼で賑わった組合員の皆さんに感謝されつつ、今度こそイーリスの街を出ます。
狩りをするのも久しぶりという事で、さっそく街道を外れ、スタンピードの戦場となった森へと向かいます。
しかしなかなか魔物に出くわしません。
どうやらあのスタンピードは近隣の魔物を集めていたらしく、倒しきった今となっては極端に数が減っているようです。
ならばと山沿いに進むことしばらく。
「……なんでこんなに山賊多いんだ」
そうご主人様がぼやきます。
すでに三組の山賊組織を殲滅していました。
「やはり魔物が一か所に集められていた影響で山賊が住みやすかったんでしょうか」
「カオテッドが栄えているというのもあると思います。そこへ出入りする商人狙いもあるでしょう」
エメリーさんとイブキさんがそう言います。
なるほど、確かにユグドル樹界国でも栄えている街の周囲は山賊や盗賊が多かった印象があります。
カオテッドほどの街ならば闇組織もありそうですし、そことの繋がりもあるかもしれません。
私は巫女として若干ではありますが国政に携わっていた経験もあり、そうした輩は出来る限り排除すべきだと思っています。
こうして山賊を次々に退治していくご主人様を頼もしく思います。
「もはや山賊がCPと金にしか見えないな」
それはどうかと思いますが……。
ちなみに私のように捕らえられている人を見つけることは出来ませんでした。
檻はあったのですでに売られた後なのかもしれません。
そうして山賊の住処を潰し、魔物を倒し、山と森と街道を進むこと数日。
我々の前にカオテッドの街が見えてきました。
♦
大陸の北部にはドラゴンが住むと言われる山々、【マツィーア連峰】があります。
そこから南に流れる川はいくつもありますが、その中でも三本の大河があります。
三本の大河は一つの地点で交わり、さらに大きな大河となって南に流れていきます。【Ψ】こんな形状ですね。
大河は国境の代わりも果たします。
南西が今居る【ボロウリッツ獣帝国】
大河を挟んだその北側に鉱人族など『土の民』が多く住む【ドボルダート鉱王国】。
獣帝国の東、大河を挟んで、私の故郷【ユグドル樹界国】。
樹界国の北側はまた大河を挟んで、魔法技術が盛んな【エクスマギア魔導王国】となります。
十年前のある日、三つの大河の合流地点、その中心に大迷宮の入口が突如現れました。
川の中にポツンと地下への階段があるわけではありません。
合流地点が大地の蓋で覆われ、その中心に迷宮の入口が出来たのです。
迷宮への入口を中心に、大地の蓋の上に作られた都市。
それが【混沌の街 カオテッド】なのです。
そして当然のように四か国全てが迷宮の権利を主張しました。
国境が大河なのであって、大河の上はどこの領土でもないのですから。
迷宮という資源を求めるのは必定です。
揉めた結果、大地の蓋を五つの区画に分割し、防壁で区切る事になりました。
迷宮の入口がある中央区は迷宮組合による自治区。
北東区は魔導王国領、南東区は樹界国領、北西区は鉱王国領、南西区は獣帝国領。
それぞれ大地の蓋の端にさらなる防壁を設けました。
つまり迷宮への入口を中心に中央区を囲む『第一防壁』。
その周りに四か国の統治区があり、さらにその周りを囲むのが『第二防壁』となります。
その外側には農耕地帯が広がり、カオテッドという巨大都市の食生活を賄っているというわけです。
「はぁ~、どうりでバカデカイ街なはずだ。防壁は見えるが一向に近づけないしな」
街道の両側に広がる麦畑を見ながら、ご主人様が感心しています。
ここから獣帝国側の第二防壁は左右にどこまでも広がって見えるのですから。
あの先が全てカオテッドの街かと思うとその広さは想像を絶するというものです。
「ここはまだ大河の上じゃないんだよな。本当に大河の上に大地があるとは信じられないな。地下は川が流れてるのか?」
「それが不思議なことに蓋を掘っても大河にはぶつからないらしいです。井戸とかは掘れるらしいですが」
「迷宮の入口も下層への階段だそうですが、大河で浸水しているという事もないらしいです」
「それなのに、大河は上流も下流も流れは変わっていない。カオテッドの下を流れているという証拠なのですが……」
「ほぉ~、つまり蓋も迷宮も異空間ってことか。イーリスの迷宮も異空間だったのかもしれないな」
ご主人様は何か道理がいったようです。
私たちは理解できないまま、カオテッドの在り方を認めるしか出来ないのですが。
「異空間ってのが分からないのか。うーん、なんと説明したらいいか……世界が異なるというのかな。俺の居た世界と今居る【アイロス】の世界は全く違うけど、俺はここに来ているだろ? その境界線みたいなものが『大地の蓋』だと思う。蓋の地面から下は別の世界。だから掘っても今居る世界にあるはずの大河に辿り着けないんじゃないかな。というか蓋自体が異世界なのかも。とすると、カオテッドは別世界の街ってことになるのか?」
後半、考え込むように呟いていましたが、結局よく分かりません。
私たちもそろって首を傾げます。
ともかく歩きながら、話しながら進み、やっとのことで防壁まで辿り着いたのです。
【混沌の街 カオテッド】。
私たちの最初の目的地です。
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第一章終了です。
登場人物紹介を挟んで第二章に入ります。




