2
「…確かに、クイナが襲撃されたり、シキのことを庇い立てするような行動を見る限り、こちらの情報が向こうへ流れていると考えた方が良いだろうな」
犬神使いのクイナ、そして同属でありながら離属したシキのことは、内部で極秘として扱っていた。
なのにマノンは現われる。
「能力者狩りのことと言い…。大分向こうに情報は流れているんだな」
「そうね。特に同属じゃない者の能力者の情報はトップレベルの秘密。幹部でなければ知りえない情報を、マノンは知っているんだものね」
ヒミカは深く息を吐き、前髪をかき上げた。
「ぶっちゃけ、マカの方で心当たりは?」
「残念ながら一部の幹部を除き、あとは全て私の敵だと思ってる」
「あっそ」
呆れながら肩を竦めるヒミカだが、その本意は知っていた。
現当主であり、マカの祖父は、マカが生まれてすぐ次の当主として決めた。
そこに同属達の反感はもちろんあったし、今でも完全には消えていないことを知っていた。
「でもマノンさんに加担して、何の得があるんでしょうね?」
「ああ、それは簡単なことだぞ。アオイ」
「えっ?」
マカはソファーに寄りかかり、腕を組んだ。
「私ではなく、マノンを次期当主にしたいのさ」
「マノンを? …ありえない。確かに力は強いでしょうけど、あのあり方は認められないわよ」
ヒミカは思いっきり険しい声で言い放った。
「確かにな。しかし元々ウチの同属達は、力社会だ。私が今でこそ仕方なく認められているのも、同属の中では指折りの力の持ち主だからだろう?」
「それはっ…!」
「マノンは私の対だ。力としても血縁者としても、次期当主としては申し分ないのは、アイツも同じだからな」
「…むぅ」
ふくれるヒミカの姿を見て、マカは苦笑した。
「まっ、裏切り者の魂胆は目に見えている。自分では当主になることは難しい。しかも私が次期当主では、自分は甘い汁を吸えない立場。だからこそ、マノンを利用しようとしているんだろう」