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リウだって、逃げられるものなら逃げただろう。
しかし彼にはその術が無かった。
ただ黙って笑顔で聞いているしかなかったのだ。
それも限界を迎えていたんだろう。
「でも何で僕だって気付いたの?」
「…お前がわざわざ裏切り者がカズサじゃないかと言いに来た時には、お前に不信感を抱いていたさ」
「ありゃりゃ。ちょっと動き過ぎたか」
リウは本家のことをあまり好きではない。
なのにあえて本家のことを言いに来るなんて、おかしいと思った。
それであの時、リウの両親に連絡をするフリをして、ヒミカに電話をした。
リウの身辺調査をするように、と。
すると最近、リウがカズサと一緒にいるところを、多く目撃されていることを知った。
そして極めつけはリウの能力だった。
リウの力は、『操作』。
人や動物に自分の気を込め、思い通りに操るのが能力だった。
思い通りに動かせる内容や時間は、込めた力の分量による。
だがリウはその力を使いこなしており、自由自在にいろいろなモノを操作できるようにまでなっていた。
おそらくカズサは最初に強い力を込められた。
その後、用がある時だけ『操作』され続けたのだろう。
『操作』された相手は、その間の記憶を失う。
つまり証拠が残らない。
しかし今回は幹部から情報が洩れていることが分かっていた上、『操作』能力を使うリウが、疑わしい人物の側にいれば、そんなに難しい推理でもなかった。
「…いつからマノンに協力していたんだ?」
「実はマカがマノンを見つける前、だったりして」




