僕の名前は室井あきのり
時は6月に遡る……
僕の名前は『室井あきのり』。
ピンと来た方もいるだろう。
そう、銀河の果てからメテオに乗って参上する室井あきのりだ。
自慢ではないが、ryokiという名前で配信を学生時代から続けており、ニコニコ生放送のコミュレベ57の中堅生主である。
趣味である配信を頑張りながら、IT系の一流企業で働くエリート。と言いたいところだが、現実はそう甘くはない。
現実は、三流大学の東京電〇大学を留年し、就活はことごとく失敗。ニートで親のすねをかじりながら、一日中家に引きこもって女配信者の配信を監視したりゲームに勤しむ毎日だ。
僕が日頃から監視している女配信者は3人いる。
一人目はめめこさん。ゲーム配信や料理配信を得意としていて、博多弁が特徴の女配信者だ。ここ数か月で人気に火が付き、僕の中では今一番来ている配信者となっている。
二人目は左むねむさん。自動ドアだ。
三人目はしのしのさん。ボイチェンを使ったような高い作り声で、リスナーからは猿扱いをされている。とにかくゲームが下手くそで、配信でおなじボスとの戦闘を10時間以上繰り広げたこともある。
これはいけない。女の人が好きすぎて、ながながと書いてしまった……
僕はこういう自分の現状がひたすら嫌になる……
しかし、僕には配信がある。
僕にとって配信は『生き甲斐』と言っても過言ではない。
今日もまた僕は生き甲斐である配信で、リスナーさんのコメントと愉快な会話を繰り広げながら、楽しくデトロイトのゲーム配信を終えたばかりだ。
配信の余韻に浸りながら眠りにつこうと思い、ベットに横たわると一通のメールが届いた。
僕にはメールを送りあう相手など、ママとパパ、彼女のなみと浮気相手のめめこぐらいだ。
「こんな、時間に誰からだよ」
ややめんどくさげに枕元に置いたスマホでメールを確認してみると『非通知』である。
( ん?このメアドを知っているのは、さっきの4人と妹だけのはずだが…… )
送り主を見ると、『室井あきのりから』!?
この『室井あきのりから』というセリフは、僕のリスナーさんたちが他配信者の放送にコメントを打つときのテンプレの挨拶のようなものだ。
本文は『銀河の果てからメテオに乗って室井あきのり参上!w』と画面の上から下までびっしり書き込んである。
リスナーさんからなのか?
いや、そんなはずがない。じゃあ、なみかめめこのイタズラ!?
僕は頭をフルに使って考えた。
しかし、あきのりは「まぁ、いっか」と呟くと、枕元にスマホを戻して眠りへとついてしまった。
留年の原因となった面倒くさいことを後回しにする癖がここでも出てしまったのである。
このことが僕、室井あきのりに降りかかる災難の序章だとは知らずに……
続く……