ジュンユウショウ
青年、尾崎は車で目的地へ進んでいた。その目的は、先日見事全日本少年少女サッカーグランプリにて準優勝を果たした監督を取材する為である。無名の学校が準優勝までを圧倒的な強さで勝ち進み、これから決勝戦だという時に辞退し、その実力から優勝は間違い無いだろうと言われていたものを、直前に諦めたその理由を聞きに行こうと都会を離れ遠い田舎までわざわばやって来たという訳である。
車を走らせ20時間ほどだろうか、薄暗い山道に入り、何かが弾けた音がしたので道路の脇に寄せて確認すると、見事にタイヤがパンクしていた。長時間に走行に疲労の溜まっていた俺は、先程見た自動販売機でジュースでも買おうと財布をとり、来た道を戻り始めたのだった。.....背後の気配に気付かないままに。
自動販売機を目にし、駆け寄ろうとした瞬間、身体が鈍くなった。 いや、重くなったと言うべきだろうか。ま、えに進まな...「ねぇ」「は、はい、何でしょうかッ...」突如として話しかけられ、なるべくバレない様に自然に返事をした。...身体は動かない。すると「優勝できなかった理由、知りたい?」女児とも男児ともつかない声が、そう尋ねて来た。ーーーあぁ、それはもちろん、「是非き、きたいな、ぁ!」絞りだしたその声は掠れてしまっていた。自分でも良くわかる。すると、浮いた女児が目の前に現れ、言うのであった。
「じゃあさ、カントクのとこ、連れてってよ。」
右脚の無い少女はそう言う。
「望むところだ、連れてってやるともさ。」
少々のパニックの混じった青年はそう言う。
これが探る青年と、浮いた少女の出会いである。