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悪魔と契約した魂は・・・

 生前、悪魔と契約した魂は、死後どうなるか知ってますか?


 地獄に落ちる、消滅する、悪魔のものになる・・・そう悪魔のものになるのです。


 シスター・アンナは生前、悪魔と契約しました。シスターが契約するなんてとんでもない事だと思いますよね。しかし、契約の目的はシスターらしい事でした。

 その目的とは『他の人物と契約させないこと』。そう、シスター・アンナは自身の魂を持って、悪魔を封印したのです。 

 これは、悪魔と契約した後、地獄に落ちたシスターと悪魔のお話。


 豪奢なベット、分厚いカーテンに仕切られた窓、それが今の私の世界のすべてです。私の名前はシスター・アンナ。生前、悪魔と契約した罪深い魂。あぁ、神よ。

「ゴホ、ゴホ、ゴホ」

生前は健康だった私、地獄に落ちてからはとても弱くなりました。私と契約していた悪魔曰く『信仰の力が強いため地獄ではひ弱になった』とのこと。また、神に祈りを捧げる度に、体はさらに弱くなるのです。ですが、祈らずにはいられません。


「アンナ、また神に祈っていたのか」

そう言って、部屋に入ってきたのは私の契約した悪魔のスートラスでした。

「えぇ。いまだに神は私をお守りくださる」

「・・・ここは地獄だ。神の力は届かない」

そう言いながら、私の寝ているシーツを整えるスートラス。

「いいえ。心安くベットで横になっているのが、その証拠」

「違う!まだ信仰を捨てないお前の魂がマズそうだから!だから、お前は閉じ込められているんだ。信仰を捨てるまで、魂を食われるまで」

「私が信仰を捨てる日は無いわ。例え地獄に落ちた魂でも」

「・・・そう言っていられるのも今の内だ」

部屋を出ていくスートラス。私が貴方に感謝していることを知っている?毎日必ず私に会いに来てくれる貴方に・・・。また、明日も来てくれるように神に祈っていることを・・・貴方は知らない。





 部屋から出ると執事のクロウスが話しかけてきた。

「スートラス様、奥様のご様子は・・・」

「お、お、お、奥様じゃないと言っているだろう!!」

「いえ、真っ赤な顔でおっしゃられても・・・」

 そう、このスートラスという悪魔、シスター・アンナに恋をしているのです。それも生前から・・・。召喚された瞬間に一目ぼれ。契約した瞬間、心の中ではガッツポーズ。人間の生なんて悪魔にとってはあっという間なので、死後は二人の生活を楽しもうとしていたのですが・・・。

「はっきりおしゃってはどうですか?信仰を捨てない君が好きだと」

「そ、そんな天使のような台詞が言えるか」

「・・・天使のような恋をされてますのにね」


 このスートラス・・・ツンデレだったのです。日々「お前は地獄に落ちたから天国には行けない」「信仰を捨てろ」などと言っていますが、裏返すと「ずっと側にいて欲しい」「神より俺を好きになって」という意味です。更に魂を食べる気なんて全くありません。豪奢なベットは彼女が少しでも居心地がいい様に。分厚いカーテンは地獄の景色を彼女に見せないように。部屋に閉じ込めるのは他の悪魔にちょっかいを掛けられないようにという心配りがなせる業でした。


 しかも周りの悪魔には「妻の体が弱くて心配だから、次の契約はしない」と言って屋敷に引きこもるレベル・・・。引きこもりのツンデレになっているのです。


「クロウス・・・全部言葉に出ているからな」

「これは失礼しました」

「それに俺は・・・ツンデレではない!!ツンツンだ」

「・・・ご自身で言われていて、悲しくないですか?」


 アンナの事が好きなくせに素直に言葉に出せない。出る言葉は否定ばかり・・・これでは

「ツンデレどころか、ただのヘタレですね」

「うぅ・・・明日、明日こそは、ちゃんと言うんだ」

「そう言って50年経ちましたね」

周りには妻だと公言している癖に、当の本人には何も伝えずに50年。まぁ、地獄に時間の概念なんて、あまりありませんけど。


「明日、明日こそはアンナに告白する」

「はいはい。何年でも何百年でもお付き合いしますよ」


そんなヘタレな主人の恋を見守るのも退屈しのぎにはちょうど良いんです。

なんせ、悪魔ですから。


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