冒険者たちの憩いの場⑴
町でいちばん大きな酒場、『Seawind』。
俺はさっそくその酒場に向かっていた。
すれ違う人の中には、見慣れない種族もいる。一体どれだけの種族がいるのだろうと思いながら歩いていると、目的地が見えてきた。
扉を開けて入ってみると、中は大勢の人で賑わっていた。酒を飲む者、話している者などさまざまだ。そこで、近くにいた騎士らしき鎧の男に問う。
「冒険者ギルドの紹介で来たんだが、ここはどういう場所なんだ?」
「君は初めてきたのか。なら詳しい事は、そこの店主に聞くといいよ。」
そう言って騎士は、カウンターにいる大男を指す。彼はたぶん巨人族なのだろう。
「わかった、ありがとう。話してくるよ。」
年老いた大男は俺に気付き、話し始める。
「今日来たのか?」
「ああ、ヴォルテという。あなたは?」
「ジェラルドだ。呼び捨てでいいぞ。ここはな、冒険者たちが集まる場所なんだ。もちろん食べたり飲んだりできる。あとは、お互いに情報を共有したり、依頼したりできる。そこに掲示板があるだろう?」
ジェラルドが指す方向には人が集まる掲示板が2つある。
「なるほど。助け合えるんだな。」
「そうだ。見てきたらどうだ?」
俺は掲示板を見に行く。板に、紙を画鋲で止めてあるようだ。左には、探し物の依頼が貼り出されている。右の小さい掲示板には、一緒に冒険してほしいというような依頼がある。
その中に、「戦士で、世界樹を目指している人を募集します。詳しくは店主まで」というものを見つけた。俺は画鋲を外し、ジェラルドの元へ持っていく。
「何か見つかったか?」
「これなんだが、店主にきけと書いてあるんだ。」
ジェラルドに紙を渡す。
「ああ…これか。これは精霊術師の少年のだな。あいつは毎日ここに来るんだ。今日もそろそろ来るだろう。そこで待っているといい。」
そう言って俺をカウンター席に座らせた。
テーブルに飲み物が置かれる。
「サービスのジュースだ、割と人気なんだ。」
1口飲んでみる。どこかで飲んだことあるような…。
「これってなんだ?飲んだことあるかもしれない。」
「北の方で採れる果物らしいぞ。」
「なら故郷の近くかも知れないな。」
この酒場とは、意外なところで繋がりがあったようだ。
俺は店主と話しながら、依頼人を待つことにするのだった。