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ちぇんぢ!!  作者: 草加人太
暗黒大陸編
3/37

建国ルートの推察と空からくるモノ

 終始楽勝モードな戦闘に慣れた主人公ですが、そんな展開ばかりが続くほど、この世界は甘くなかった…!!


 みたいなお話です。

 ディノとの心温まる交流を終えた俺は、隊長室に帰り、読書の続きを楽しんでいた。元の世界にいたときから本の虫だったので、活字を浴びるように読んでも苦にはならないし、むしろ未知の知識を吸収できる喜びに心が躍る。


 暗黒大陸の魔物や自然環境を記載した書物を読み終えた頃には、太陽が頂点に達していた。お腹も減ってきたし、もうお昼だろう。パチリ、と指を鳴らしてシーフードピザとコーラを作成する。元いた世界では高価すぎて、滅多に食べることがなかったピザだが、こっちの世界に来てからというものの、片手で食べられるうえに美味しくて、しかも高カロリーということでお昼の定番食になっている。


「しっかし、これだけ調べたのにあの鉱石のことも、ディノのことも結局は分からずじまいだったなー」


 この世界に来てからというものの、爆発的に頻度が増えた独り言を呟きつつ、机に積み上げられた書籍に目を遣る。とりあえず、あの本棚にある自然科学や雑学系の本は全て読み終わった。しかし、そのいずれにもディノとあの赤い鉱石のことは記述されていなかった。まぁ、ここは人の手がほとんど及んでいない暗黒大陸だ。本に記載されていないことがあっても、別におかしいことはないだろう。というかむしろ、分かっていないことの方が多いのかもしれない。


「明日辺り、フィールドワークに出てみるか…」


 ここ1か月は基本的に砦に引きこもって、襲いかかってくる魔物だけを討伐していたわけだが、さすがに退屈というものを感じるようになっていた。人間、やはり多かれ少なかれ目的意識というものがないとダメなのかもしれない。この本棚の本を全て読む、という目的も、そろそろ達成してしまいそうだし、ここいらで新しい目的を設定しておいた方がいいだろう。


「うっし。明日から周囲の探索を始めよう。ディノにお願いすれば、案内してもらえるかもしれないし」


 ディノは先程の反応からもわかる通り、なんとなくではあるが言葉や仕草の意味というものを理解している節がある。通常、爬虫類は脳が未発達であり、そうした情緒理解をする部分が存在しないハズなのだ。魔物という存在に、現実世界の生物知識がどこまで適応できるか疑問ではあるけど、今まで相手にしてきた他の恐竜っぽい魔物は俺のことを餌としか認識していなかった。だとすると、もしかしたらディノは恐竜というよりも、龍に近い生き物なのかもしれない。見た目腕が逞しくて、赤い角と棘があるティラノサウルスだけど。


 この世界における龍は、いわゆる超越種というヤツである。万軍を率いて戦っても、討伐は困難を極める。しかも龍同士で仲間意識に近いものがあるらしく、龍の鱗や牙といった強力な素材に目が眩んだ国王が、国軍総出で龍を討伐したところ、別のより強力な龍の逆鱗に触れ、国土の全てを焦土にされたという例もあるらしい。


 ちなみに長い年月を生きた龍は人語を理解し、縄張りさえ侵さなければ基本的になんのアクションも起こさないことから、触れたら恐ろしい『災害』といった扱いを受けているのだそうだ。最弱レベルの龍と比べても、格段に力が劣るはずの亜龍を使役しているヘラクレア帝国が、大陸最強の戦力を誇っているということからも、その力はおして知るべし、ということらしい。


 まぁ、今のところディノが龍だろうが恐竜だろうが関係はない。ディノがかわいくてかっこいいヤツだという事に変わりはないのだし。そう結論して思考を打ち切り、デザートとしてショコラアイスを作成した。


 ちなみにこの作成能力なのだが、作成する物によって消費MPに大きな開きがあることが分かった。俺の最大MPが10000だとすると、俺が一度でも食べた…つまり体内に入れたことがあるものなら、1か2程度で作成できる。触ったことがあるものなら50くらい。見たことがあるだけなら100から500。仕組みや作り方が分かるという程度のものは1000から3000くらいのMPが必要となる。しかも、たとえ物を作成できなかったとしても、MPは消費されてしまう。初日に、それほど沢山作成していなかったにも関わらず、覿面に疲労を感じたのは、到底作成できないものを作成しようとしたせいだったらしい。


 なので、AKを大量生産し、傭兵に渡して国家転覆を図る、といった無双はできないっぽい。ぶっ倒れるほど頑張って作成しても日産10丁が限界なのだから。数百とか数千単位の戦いなら、それなりの優位性を発揮できるんだろうけど、数万単位の戦いになれば、数を揃えられる分、弓矢や弩の方がマシだろう。まぁ、国家転覆なんて面倒くさいこと、するつもりはないけどね。働かないで食べる飯は美味い、という事実を知ってしまったので。


 とは言いつつも、である。中央大陸のほうで魔物に蹂躙されていたり、無理やり奴隷に落とされて、ヒドイ目にあっている人々がいるのなら、助ける為に行動するのはやぶさかでもない。俺の能力を使えば、ほぼ無制限に食料が手に入るわけだし、様々な書物を読むに、この大陸はいわゆる無主地のようだ。


 その為、俺が開拓したのなら即ち俺の国である、と強弁できる余地がある。全ての差別階級を排することで人を集め、無料の食料で懐柔する。豊かな鉱物・自然資源に裏打ちされた経済力で各国が無視できない発言力を取得していき、武力を伴った圧力には俺という戦力、そしてただの農民を一端の兵士に変えてしまえるAKで断固対抗する。


 うん、そんなうまくいくわけないかな。外交というのはひどく複雑なものらしいし。俺みたいな、海の者とも山の者とも知れない人間が新しい国を、全く新しい制度で運営するなんてことになれば、最悪全ての国が敵に回りかねない。議会制民主主義を取り入れたフランスみたいなもんである。フルボッコにされるのがオチだ。ってか人殺しなんてそうできるもんじゃないし、したくもない。


 奴隷制というのも、21世紀の時代に生きていた俺だから、非道だなんだと言える訳で、この世界の文明水準では必要な制度なのかもしれない。ここはスーパーに行けば安価で食料が手に入り、気軽にエアコンで涼や暖をとれる世界ではないのだ。何をするにも人手がいるし、時間がかかる。いやはや、建国の大義名分がもう霞んでしまった。建国ルートは今のところお蔵入りかね。


 建国は無理ゲー、と結論して思考実験を終了する。それから、程よく溶けて食べ頃になったショコラアイスを食べた。うん、甘くて冷たくて、ビターで美味い。現実はこのアイスのように甘くはないけど。願わくば、こんな美味しさを全世界の人々が楽しめる日が訪れたらいいな。



 お昼を回り、午後になってからというものの、お客さんが大量に現れた。主だったものを挙げると、触手が生えた巨大キノコに、1mほどの大きさをした、サソリと蜥蜴を合成したような魔物の集団。そして火炎を吐き出す巨大コンドルといった面々である。

 

 キノコは切っても切っても再生してきて面倒な相手だったが、キノコの頭上に砦を囲む塀を作成して、叩き潰した。サソリ蜥蜴は俺が相手をするまでもなく、ディノが踏み潰してしまった。なんかプチプチをつぶす作業に似た愉悦があったらしく、嬉しそうな声を上げながら踏み潰していた。かわいい。コンドルに至っては、俺のAK射撃の的にされた挙句、蜂の巣にされて、墜落して首の骨を折って死んでしまった。ちなみに、いずれのモンスターもディノが美味しくいただきました。


「なーんか、今日は魔物の襲撃が多くないか?なぁ、ディノ?」


 傍らにしゃがみこんでいたディノにそう声をかけると、ディノはうんうん、とうなずいた。なにか嫌な予感がする。異世界召喚モノにおいて、魔物が常ならぬ挙動をする時というのは、大抵事件の始まりだったりするのだ。たとえば…そう、より強力な魔物から逃げてきた魔物が主人公たちに襲いかかる、みたいな。


「はは…まさかな…。」


 そんなフラグめいた思考とセリフが、この世界の創造神の琴線に触れてしまったのだろうか。強烈な光が辺りを包み込み、視線の先にあった森が突如として吹き飛んだ。鳴り響く轟音と、魔物や動物の悲鳴が耳朶を突き刺す。爆発を引き起こしたと思しき、光弾が飛んできた方向を見遣ると、そこには。


「いやはや…本当に飽きない場所だよ、ここは…」


 空中に浮かぶ、巨大な一つ目の化け物がいた。気味の悪い紫色の体色。球形をした体躯の中央に見開かれた、血走った眼には全ての生き物を憎み切っているかのような、憎悪が感じられた。瞳が赤く輝く。次の瞬間、強力な光と光弾が放たれ、光弾が命中した森林は爆音と共に吹き飛んだ。


「さーて。どうしたもんかね」


 そう呟いてから、俺はハルバートを握る手の力を強めたのだった。

 主人公が踏み抜いたフラグは、異世界召喚モノではうんぬんの方ではなく、戦闘が退屈だ、と心の中で呟いた方でした。皆さんも異世界に召喚された際には慢心なされぬよう、お気を付けください(笑)


 ちなみに無主地とは、国際政治学の用語で、主権を持つ国が存在しない土地のことを指します。遠距離航海が可能になってからというものの、列強国はこの理屈を使って、競い合うように先住民が住む土地を簒奪しまくったという歴史があります。

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