幕間 白いユメ
夢を見ていた。ズタズタに切り裂かれたフィルムを、無理矢理継ぎ接ぎして作った映像を見せられているような感じ。当然、画像はコマ落ちだらけ。それを、淡々とガラスの様に無機質な視線で見つめ続ける。
振るわれる大鉈は、稲穂を刈るように。沢山の命を一瞬にして摘み取っている。
鉄と血と怒号で彩られた場所。鉄火場めいた命の火は、既に消え去っている。
命の火が消えた去った場所。大鉈を振るっていた男は能面めいた無表情で佇んでいる。
工作機械がそうするように。与えられた性能で、与えられたタスクをこなしただけ。
故に彼の相貌に色が宿ることはない。いかなる英雄にも到達しえない隔絶された武技と膂力を誇りながらも、その眼は疲れ切った奴隷よりも気力というものに欠けていた。
タスクを終えた彼は消える。何物をも生み出さず、ただ破壊のみを振り向いた虚無は虚無に帰るが道理なのだから。
私が消えるほんの一瞬の間。私は初めて『私』を知った。
消えたくない。
重要なシーン は当然のように、コマ落ちする。かわりに、漂白されたような白い空間が俺の目を焼く。白い空間には、こちらに背を向けた少女が一人。70年代を思い起こさせるような、ダイヤル式のテレビを見ている。その画面に映し出されているのは、既視感を覚えるとある日常。少女は手を伸ばす。それに触れられぬことなど、知っていながらも、そうせずにはいられない、といったふうに。
フィルムが朽ちたのだろうか。徐々に錆色に染まる白い空間。俺の意識は弾きだされるように、転げ落ちるように、その座標を失った。