山賊
酒の席も終わり、酔いのさめぬうちに二人は、兵500を率い、主君今川義元に会いに行った。
その道中、
「もっ申し上げます。この先山賊により道が閉鎖されておりまする」
「なんと!押し通れ!」
しかし、半刻もたたぬうちに、手勢は蹴散らされ、雪斎や劉備にも危険が迫った。
「雪斎殿!ここは城に戻りましょうぞ。」
「むむむ。我が軍が山賊に負けるとは・・・」
雪斎は声を張り上げて、「退却」 と叫んだ。
「そうはさせるかってんだ。待ちやがれ。」
雪斎も覚悟を決めた・・・
その時、劉備が何かを思い出したかのように、振り返った。
山賊の棟梁の顔をはっきり見ると、劉備は声を震わせながらこう言った。
「ちょっ張飛ではないか!」
そう劉備が声を発すると、その棟梁は動きが止まり、涙を流した。
「兄貴!・・・・・」
雪斎は、首をかしげ、この男が話に聞いた、張飛・・・
顔にも、やっと落ち着きが見えてきた。
その頃二人は、話し合っていた。
「張飛よ・・さぞかし無念だったであろう。」
「関羽に比べれば・・・ところで兄貴。関羽のかたきはうてたのですかい・・・」
劉備は言葉が詰まった。
そこに、雪斎が
「まぁまぁ。お二方、詳しくは城で・・・」
「おお。そうであった。張飛よ、参ろうぞ・・・」
張飛は、山賊に大きな声で、「解散っ」と叫んだが、半数近くは張飛に従った。
「兄貴・・・こういうことでござるが・・・」
「雪斎殿。どういたせば・・・」
「張飛殿ももてるのぅ。しかし我々は主君に会いに行く途中だ。帰るときに、また会おうではないか」
わぁーーーーっと山賊で声が上がり、
「では、張飛様。また会いましょうぞ。」
と言って山に戻った。
「では、参りましょう。」
と劉備は言い、兵は少なくなったが、主君の城に向かって進んだ