刀娘と俺と
「良いか?だから剣や刀の握りというのは本人に合わせて作られるべきものなんだ」
「はぁ…確かに俺らも握りの所を自分達で改造したりするけど…」
「そうだ、良い武器は自分の手足のように扱わないといけない…私は自分の刀をそうだと思って振るっている」
年頃の男女が肩を密着せんとばかりに寄り添いながらする話が、武器と己についてというのは少しどうなのだろう。
納得できる部分はとても多いが、凄く場違いな事をしている気がしてならない。
「ほらまぁ飲みたまえ…安心しろ、今日は私の奢りだ」
「うんこれっぽっちもおごりじゃないよな?みんなで稼いだお金で楽しんでるだけだよな」
「細かい事は気にするな…まぁ、それよりほら…私の言わんとしてることはわかったか?」
「わかったわかった…武器や防具は装備しないと意味がないぜ、ってことだろ」
「違う!君は一体何を聞いていたんだ!」
「アリアの話、かな……」
後は俺も含めて酔っ払いってのは絡みづらいなぁ、と考えていたことかな。
多分そういうと殴られるので黙りつつ、この真面目な話についてこれそうな奴を目線で探す。
レリク…いやあいつそういうのやらないしアウト、ショウ…どうみても一般人じゃんアウト。
頼りになりそうなクロウは既に離れた場所で飲み始めているし、これはこの相手は俺がするしかないという事だろうか。
「…しかし、確かにこういう場所で物騒な談義をするのは似合わないな…つまりヴァルはこう考えていたのだろう」
「私とラブイチャしたいと」
「何言ってんのこの人!?」
紅玉のように真っ赤な瞳が静かに細められて俺を射抜く。
僅かに持ち上げられた唇の端は微笑を形作っているが、それは決して柔らかさを感じさせるものではない。
どちらかといえば獰猛で、ソレでいて攻撃的な魅力を感じさせる類のそれだ。
言っていることがコレでなければ、さぞかし似合っていた事だろう。
「照れるな、良いじゃないか…ほら、酒のお代わりはどうだ…あと一杯飲んだら私は酔いつぶれるから、お持ち帰りできるぞ?」
「お前何処でそんな知識覚えた、お持ち帰りとか、女の子が気軽に言わないの」
「…そうか、ダメか…うぅん……ではそうだな、私の子宮がお前の子供を欲しがっている、とかいうのはどうだ」
「余計性質がわりぃ!!」
そこでようやく、あっはっはと楽しそうに笑うと腕に柔らかく心地良いぬくもりが触れてくる。
視線だけをそちらに向けると腕を組まれた事がわかる。
何がとは明言を避けるが、アリアのはあまり大きくないが…こうして甘えられる事、それ自体に思わず緊張してしまいそうだ。
「アリア、片手ふさがったから酒が注げない」
「どれ…美人が酌をしてやろう、嬉しいか?」
「…色々残念な所がなぁ」
「ははは、飲み潰れて死ね」
片手で酒瓶を握ったアリアがまた俺のグラスに注ぎ、俺もそれに対するように注ぎ返す。
空になった瓶は脇に置いて、新しい分が俺達の間に置かれる。
「なぁ…レリクとか、メリアもそうだけど、俺の何処があれなんだ?」
「うん?好きかってことかい?」
正面から好きとか堂々と言わないでください、恥ずかしいです。
「色々あるぞ?優しい所やんちゃな所バカな所へんな知識を持ってる所それなりに顔が良い所…あ、でもこれは他に良い奴もいるな」
「ひでぇ」
「ま、一番の所はお前だからだな…子供の頃から好きだぞ、結婚しろ」
「だが断る、俺はまだ人生の墓場に片足を突っ込む気はない」
「大丈夫だ私がいるから墓場にはしないんさ…天国だ」
「どっちにしろ墓場に埋まってるじゃねーか」
おいおい、と思いながら肩を竦めながら笑っていると俺の手にアリアの手が重ねられる。
「っ!?」
突然の事にびくっとなって思わず身体を引きかけたが、意外と手を重ね合わせてきたアリアの力は強く、逃げられずに落ち着いてしまう。
白い肌と飾り気のない爪、武器を握って過ごす彼女の手は若干水滴で湿っているが、ほんのりと暖かいし俺よりずっと硬い。
こんな些細な触れあいでも、あー…まだまだ俺は勝てないなぁと酒の廻った頭でぼんやりと考える。
「あーあ…私にも女らしさがあれば、なぁ」
その言葉と、掌の温かさに次いで俺に寄りかかってきた白銀色の軽やかな重みに意識が思考から戻らされる。
何か言おうとして口を開こうとするけれど、そこにかける言葉が見つからなくて閉ざしてしまう。
女らしさか…アリアは十分に備えていると思うんだけどなぁ。
ダメだ…幾らなんでも陳腐すぎるしそんな適当な慰めの言葉かける俺だって気まずくなるぞ。
うーん何かないもんかなぁ、何か……。
なでり。
なにかー、なにかないかーと気の利いた言葉を捜している間に、グラスを掴む事を忘れた手が、行き場を求めてさ迷いだす。
そうして暫く宙を漂った後にアリアの頭の上に着地、肌触りの良い髪の毛が指先に気持ち良く半ば無意識で撫で回してしまう。
頭のてっぺんに人差し指の先を置いて、すぅっと下へと流していく。
相当長い髪の毛なのに何かに引っかかるという事もなく、キレイに指が通っていくのが楽しくて何度か往復。
「ヴァ、ヴァル?」
今度は掌全体で丁寧に撫で回し、たまに指先に髪の毛を絡めて悪戯する。
こういうキレイな髪の毛や、強気に見えて実は乙女なところとか。
体全体がすんなりとしていて、立っているだけで絵になる所とか。
数え上げたらキリがないくらいの良い所、があるはずなんだが…ううん、何処をどう褒めれば良いんだろう。
「…幸せだ」
……気がついたら、アリアが蕩けていた。
俺の手の上に重ねられているだけだった彼女の手はいつの間にか強く握り締められ、元々触れあい気味だった肩は更に密着している。
あー、撫でてたら機嫌良くなったパターン?これがナデポ?
「なぁ、ヴァル…キスしようか」
「……しょうがないな」
少しだけ悩んだ後で肯定の言葉を返すと、アリアは薄く微笑みながら目を閉じた。
別にキスくらいで今更恥ずかしがるような感じでもないし、別に良いやと思いながら俺は期待で震えるアリアの唇へと吸い込まれていく。
「んっ……」
触れ合った瞬間に普段の立ち振る舞いからは考えられないような、小さく甘い声が漏れ聞こえる。
けど俺はそれだけでは満足できず、触れ合った部分から感じられるアリアのアルコール臭交じりの吐息を貪るように舌を伸ばし、彼女の口腔へと進入する。
ちょんっと優しく、アリアの歯を舌先で突いてやると俺の侵入を受け入れるように開かれ、誘われた。
互いの呼吸が互いの顔をくすぐりあう中で俺とアリアは必死にお互いの唾液を貪り分け与えあう。
二人が離れる頃にはアルコールでは何かに互いが酔いしれていた
gdgdな内容が続きますが、この作品は一応ハーレムです
ヒロイン達とのラブイチャは頑張って書いていきたいです