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背が低いと抱きついた時、まるでコアラが木にしがみついてる感じがしますよね

「そのうち連絡する、開発しただけじゃなくて、実用化できるようにするまでが、ワタシの研究」


「これも本にして一般向けの娯楽にできるように頑張る…また面白い話を聞かせて」


「ただし、ワタシの家でイチャつくなら殺すからね」


街の中で一番高い場所にあるモノを一つ挙げろ、といわれたら大抵の人は教会の鐘を口にすると思う。

どれだけ神様や信仰という言葉が嫌いな人間でも、時間を告げる鐘の音にだけは従って生きる。

一度だけ直接顔を合わせて会話した事があるせいか、信仰というものに程遠い俺もこの町で空に最も近い場所から聞こえてくる、毎日の礼拝を告げる音はキライではない。

……神様に会うと、普通はその存在を認めて俺とは逆に信仰心が高まるものなのだろうかと考えてしまう。

信心深くなった自分を想像してみて思わず苦笑い、コレは酷い。


それはさておき、教会の鐘の向こう側に日が隠れてしまっているのを見上げれば、もうすぐ日が沈み始めるのがわかったので

ミーニャの恐ろしい視線やら、励ましの言葉やら約束やらに見送られるようにして無駄に大きな屋敷を後にする。

帰る際にちらりと見た空き部屋は何処も埃まみれで掃除なんて、欠片ほどもしていなさそうだった。

これは近いうちにまた、ミーニャ宅でのお泊り会と称した掃除もかねた集まりを催さないとダメかな。

あの純正の引きこもり科学者少女は放っておくと家の中が酷い事になっていくのだ…。

一応、彼女の生活圏内だけに限定すれば乱雑だが人が住める程度の環境である、と言える程度ではあるのが唯一の救いか。

頭の中で取りあえずの予定を立てながら、目の前にある最大の問題について思考を切り替える、すなわち。


「腹減った…晩御飯、何食べよう」

「俺んちで何か食べてくか?」

「…いや何か買って帰るよ、今日はもう自分で作る気にもならないしなぁ…」

「だから俺が作ってやるぜ~?」

「そういう台詞は包丁を持って指を切らないようになってから言おうな?」


うぐっ、と言葉に詰まる気配が隣からするとソレを背後にするようにして歩き出す。

すぐにレリクの方もちょこちょことその短い足でスカートを揺らしながら後をついてくる。

歩幅は俺の方が大きいのだが、足数はあちらの方が上だったらしくすぐに横並びになってしまった。


「でもあれだぞ少しは成長したし!」

「どれくらい?」

「…聞いて驚け!実はな…もう指は切らなくなった、つまり俺が飯を作ってやるっていうのを許された!」

「味の方は?」

「絶賛研究中!!」


ダメじゃんと一言で済ませ肩を震わせて笑い飛ばす。

それから、すぐ傍のちょうど良い場所にあるレリクの頭に手を置いてわさわさと撫でまわしてやる。

しかしこの男、オレと2つも歳が離れていないのに背が小さすぎである。

おかげで並んで歩くとついつい、頭の上に掌かさもなくば肘をおいてしまいたくなるではないか。


「じー」

「ん?どうした…口でじー、とか言うやつ久々に見たわ」

「ご褒美考えてる?」

「違います、お前の頭はいつ見ても肘掛に良いよなって思ってただけです」

「ご褒美じゃん!」

「ちげぇつってんだろ!?」


ぽんぽん、と気味の良い音を立てながら連続で二度ほど軽く頭を叩く。

何が嬉しいのだろうか、その間もレリクは緩みきった笑顔で俺を見つめたり、距離を縮めて寄り添ったりしてくる。

まったく仕方の無いヤツだなぁと思いつつ、俺も悪い気分ではないので思わず口から笑みをもらしてしまう。

多分レリクにつられて笑ってしまったからなのだろう、あとついでに言うとミーニャの屋敷であんな事をした後、だからというのもあるかもしれない。

笑顔のままレリクの方に視線をやり、頭の上から手をどけてやった。

どうして離すのだというレリクの気配を感じ取ったがそれをあえて無視して、そのまま手はゆっくりと動き出す。


「なぁーレリク」

「んー…どしたのん~?」

「いやな…」


声をかけて注意を俺の方へと向けさせながら、手はゆっくりと下へ下へと下っていく。

同年代の女子でも多分ここまではないだろうという華奢な腰はもうすぐそこだ。


「こんな時でもないといわないと思うから言うけど……」

「あ…ちょ、ちょっと待ったヴァル!」

「………なんだよ」


思いっきり気取って、好きだよと伝えると同時に腰を抱いてやろうと思った俺の動きは中断。

おいおい…これから良いところだっていうのに、この男の娘はなんて空気を読んでいないのだ!

…いや、レリクだからしょうがないんだけどね?


「ムラムラしてきた」

「はぁぁぁ?」

「いやぁ、だからねあれだよ…レリクちゃんのスカートの奥にある秘密の花園にある一本の大樹がスカートを持ち上げそう!」

「うっわぁぁぁ……」


これには俺、ドン引きである。


「お前なぁ………」

「あはは、ちょっと待ってね…今萎えさせるから…こう言う時は何を考えて…そうだ、ヴァルと俺の衣装交換!」

「おい待てやめろ妄想の中とはいえ俺を汚すな」

「――――しまったぁぁぁ!ある、オレの中でこれ全然あるよ!ヴァル、今度お前用の服作ってくるから着てくれ!」

「いやキモイから死ねよ」


せっかく俺が良い雰囲気でこう、こう…カップルみたいな事しようと思ったのにこれかよ!

心の中で絶叫したあと隣にいる男を見て、盛大にため息をついてしまうのも、しょうがないよね!

長く長く、肺の中にある空気を全て吐き出すようにため息をついてから、そんな気分ではなくなってしまったせいで抱きしめようとしていた手を、今度は気づかれないように戻していくことにした。


「で、何か言いかけてなかった?」

「好きだよーって言いつつ腰を抱いてやろうと思ったけど、今の一言でその気分が一気に萎えました」

「ちくしょーー!?今のオレってタイミング悪かった、ねぇ、もっかい…ヴァル様、もう一度チャンスをください!」

「やーだよ!」

「うわぁぁん!ヴァルのいけずぅ!」


地団駄を踏んで悔しがるレリクに向けて、引っ込めた手をもう一度、今度は腰ではなくその手に向けて差し出す。

まぁ、気分はなえたけど仕切りなおし的な意味も兼ねて、いいだろうと、華奢な腰ではなくスベスベとした真っ白い手をとり。


「ははは、あきらめるのだな!…ほら、送ってくよ、行こうぜ」

「……うん! ……なぁ、やっぱり連れ込み宿で食事くらいしていかない?大丈夫、休憩だけ、ちょっと休むだけだから」

「なぁそれって俺が言う側じゃねぇー?」


ぐいぐいと俺を歓楽街の方に連れて行こうと、引っ張るやつの頭を今度はちょっと強めに叩いておいた。










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