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四葉のカケラ  作者: 真夜
1/1

第一話 ~スバル編~

今回で三作品目。

かなり気合入れました。時間かかったな……多分五時間くらい。

今回は女の子の視点で話が進んでいきます。初挑戦の女の子。難しい…気持ちわかんねえwって感じで書きました。

ちょっと長いですが、読んでいただけると嬉しいです。


 この物語は私、風間かざま すばるの大切な、とても大切な思い出の話。私にとっては最初で最後の……恋。


 私は、幼かった。そうそれは、小さな小さな恋心。

 当時小学一年の時に初恋をした。そう、あれは今となって初恋とわかった。今の私は今年で高校三年生。三年生になって少し日がたった時に起こった出来事。それを語るには、まず私の昔の話を知ってもらいたいと思います。




-遡ること十一年前のお昼休み-


 私は上級生の男子三人にボール遊びを邪魔されていた。お友達の柳田やなぎだ 彩香あやかあだ名であやちゃんと一緒に遊んでいた。当時私は小学校一年生。入学して半年したころからだろうか、妙に上級生からからかわれる事が多かった。

「返してください」

 私は泣きながら、何度も何度もお願いしていた。あやちゃんも一緒にお願いして二人で泣いていた。

「ったく、低学年が俺たちの縄張りで遊んでんじゃねえ!」

 上級生の男の子たちの一番偉そうな子がそういった。お昼休みに遊ぶのは自由。幼い私たちには縄張りとかわかっていなくて……ただひたすら泣いていた。

「お前ら何やってんだよ。アホじゃねえか!」

 突然男の子が一人現れた。どうやら私たちを庇ってくれるらしい。その当時の私は、何が起こっているのか泣いてばっかりで何もわかっていなかった。

「誰だよお前」

佐藤さとう あゆむだ!」

 男の子の名前だ、私が小学校に入って初めて覚えた男の子の名前。そう、この人こそ私の初恋の相手あゆちゃん。しかもあゆちゃんは上級生で5つも年が離れていた。

「ばっ、名前なんか聞いてんじゃねぇ。邪魔すんな!」

「カッコ悪いなお前ら、ホント最低だよ」

「は?何言っちゃってんのお前」

 その時には既に攻撃対象が私たちからその男の子へと変わっていた。

「女の子イジメて何が面白い、最低じゃねえか!」

「チッ、こいつムカつくぜ。やっちまおうぜ!」

 一番偉そうな男の子の掛け声とともに、残り二人が『おう!』と言って、男の子を囲む。そこからは男の子のケンカだった、でも一方的に殴られていたのはあゆちゃんだった。

 数分後、傷だらけになっていたあゆちゃん。その喧嘩を止めたのはまたしても上級生の男の子。その男の子の一声だった。

「先生!こっちです。早く早く」

「チッ、やべえ先公呼ばれちゃたまんねえ。逃げるぞ!」

 一番偉そうな男の子が言うと残り二人も『おう』といって、すぐに逃げ出した。

「なんてな。実は先生なんてどこにも居ないんだけどね♪」

 さっきの一声の男の子が笑いながらこっちに来る。そう、この人が私たちを助けてくれた、名前は須藤すどう あきら。あだ名はあきちゃん。後にこの人は私の友人あやちゃんの恋人になる…けどそれはこの話とはまた別の話。

「歩、散々だったな♪」

「ああ、もっと早く助けてくれよ」

「いやぁ、なんか良いやられっぷりだなって。ホントごめん♪」

 またしても軽い。私は当時、この人のことをあまり好きではないタイプだったと思う。でも今となっては私の大切な友達。そう、私とあゆちゃんを繋いでくれた大事な大事な絆、その一人です。

「ッツ!? 痛って~、ったく。何やってんだよ俺は」

「ホント何やってんだよ、でも…ホントカッコ悪いな♪」

「カッコ悪い言うな!」

「あれで勝ってたらカッコ良かったんだけどな」

「ちぇ、どうせ俺は弱っちいよ。お前とは違うんだよ」

「あれぇ~?拗ねちゃった。かっわいい~♪」

「うっせぇ。っと、そういえばお前ら大丈夫か?」

 その時にはもう私は泣き止んでいた、正確には泣き止む寸前の『グスッ』っとしていた。ふと声を掛けられた時に私はびっくりしてそこに座り込んで腰が抜けていた。

「あ…、え……っと。」

 声にならない声。なんて言っていいのか、ただ怖いという感情はなくなっていてなんだかホッとするような感覚だった。

「あっちゃ~、やっちまったな歩」

「やっちまったってなんだよ」

「女の子助けるどころか怖がらせてるじゃん♪」

「うっせ、もう何も言うな。はぁ~、お前らに何があったか知らんけどまた困ったことがあったら助けてやるよ」

「ひゅ~、カッコイイね。でも俺は手伝ってやんないけどな♪」

「うっせぇ、黙ってろって言っただろ。てか助けろよ!」

「俺は喧嘩はしないの、てか痛いのやじゃん♪」

「へぇ~へぇ~そうかいそうかい。っと、じゃあな」

 そう言ってあゆちゃんとあきちゃんは去っていった。呆気にとられっぱなし、それは隣に居たあやちゃんも一緒だった。

 その後、私は何とかあゆちゃんを探し出して六年生だったことがわかった。何度も何度も六年生の教室に足を運んだ。でも私にはあゆちゃんの前に出る勇気が無かった。

「ねぇ、あなた。いつも来てるけど、誰かに用があるの?」

 背が高い、サラサラのロングヘアー。更に落ち着いた物腰、簡単に言えば美人という言葉でが正しいと思った。

「ああ…、あの」

 声が出ない、怖い。とてもじゃないけどこの場に居れない。その場で私は俯いたまま立ち尽くしてしまった。

「ねぇ、誰かに用なんだよね」

 その女性が優しく語り掛けてくれた。本当はそんなこと耳に入ってこなかったけどたぶん優しい感じだと思った。

「よし、お姉さんに任せて!」

 本当に何気ない一言。でも少しほっとした、その一言は耳にすんなり入ってきた。

 お姉さんは扉の向こうの教室へ顔を向けて大きな声で言った。

「誰か~、この可愛い女の子の知り合い居ない~?」

 沈黙……。誰も何も動かない。一分…長い時間ではないが、私にはそれが一年以上に感じられた。

「あ、その子知ってるよん♪」

 軽い声。そう、あきちゃんである。

「あ~そこのちっさいの知ってるよ、おい歩お前だろきっと、行ってやれよ」

「え、あ~。あの時の。」

 気付いてくれた。あゆちゃんは本を読んでいたので流石に気付いていなかった。本を閉じ、机に置いた後メガネをケースに入れこっちに近づいてきた。

 ドキドキする。心臓が止まらない……あやちゃんこんな時になんでいつも付いて来てくれないんだろう。もう心臓のドキドキで死んでしまいそうになる。

「あ~、あゆっちの知り合いだったんだ」

 一瞬、チクリと胸を刺されるような感覚。痛かった、実際に刺されていないのに胸がきゅんとした。

「じゃあ、私は行くね。頑張って!」

 お姉さんが優しくファイトとガッツポーズをしながらウインクをして去っていった。それと入れ替わりにあゆちゃんが私の元にきた。

「えっと、俺に用……かな?」

 しゃべれない、心臓が止まらない。苦しい…でもなんか少しほっとする。

「お、歩~下級生口説いてるのか」

「ヒュ~ヒュ~」

 そんな声が飛び交う。私には何も聞こえない。心臓の音が高鳴りすぎて何も聞こえなかった。

「ば、そんなんじゃねぇよ」

 その時のあゆちゃんは顔が真っ赤だった気がする。私は俯いてて全然見てなかったけど。

「えっと、ここじゃなんだから場所……変えようか」

 そして私は、あゆちゃんに手を軽く握られた。

「ふぇ…」

 驚いた。声が一瞬だけ出た。でも情けなく恥ずかしい声だった。

「じゃあ、行こうか」

 私は連れられてく、十数メートル先の階段。さほど歩いていないけど、とても長く感じた。

「えっと、俺に用なんだよね?」

 赤面…私は何を行っていいのかわからなくなった。それは数秒間だったけど頭の中が真っ白の世界になった。

「あの…、あの…」

 必死に搾り出した声。多分あゆちゃんには何も伝わってない。

「緊張しなくいい…なんていっても無理か。」

 そのあと、何かを気付いたように『あ、そうだ!』といってポケットから飴玉をくれた。イチゴ味…好きなんだろうか?そんな飴を見てたらなんだかほっとした。

「えっと、ん~。こういうときなんて言ってあげればいいんだろう?俺って情けないなぁ~」

 あゆちゃんは困った顔でふと口にしていた。勇気…こんな時こそ頑張らないと。私はその時だけ、多分今までで最大の勇気を出した。

「この前、あ…ありがとう…です」

 小さい声で、聞こえたかどうかもはっきりしていないそう思っていた。

「あ、うん。別に気にしなくても良かったのに」

 簡単だが返事が返ってきた。声は出なかったけど気持ちは伝わったと思う。

「それで、その後大丈夫?苛められてない?」

「はい、大丈夫です…」

 またしても小さい声。この時の私にはそれが精一杯だった。

「もう一人いたよね?その子も大丈夫?」

 少しちくりと胸が刺された様だった。

「あの………、大…丈夫……です」

 消え入りそうな声で言った。

「そっか。でもまた苛められたら俺に言えよ。助けてやるよ…。俺は約束は守るから絶対!」

「えっと、あの…本当にありがとうございました」

 そう言って頭を下げ、その場に居るのがとても辛くて逃げてしまった。

「あ……、いっちゃった」

 その声だけが私に聞こえたその日最後のあゆちゃんの言葉。


 それからというもの、毎日あやちゃんも連れて行って、六年生のクラスに言ってはあゆちゃんとあきちゃんたちとお話してたっけ。最初はあまり喋れなかったけど、一ヶ月たった頃くらいだろうかもう私たちは普通に喋れるようになっていた。

 だがそんな関係も半年しか続かなかった。


 あゆちゃんたちの卒業式。あゆちゃんが遠くに行ってしまう。卒業と同じ日に引越しだったからだ。

 卒業生が花道を通ってくる。すぐに私はあゆちゃんに駆け寄った。

「卒業おめでとう…、あれ……なんでだろ涙が」

 泣かないって決めてたのに。なのに……なのに……。涙が止まらない、止まらないの。

「卒業おめでとうございます」

 あやちゃんがそういった、別れだというのに平然としてた。少しもやもやした感じ、でも少しほっとしている。

「あ、うん。ありがと」

 あゆちゃんはそう言うとすぐに他の卒業生の所へ行ってしまった。悲しい…最後の別れがこんな別れなんて嫌だ。そう思っていた時にあゆちゃんが駆け寄ってきてくれた。

「忘れてた」

 そういって、ポケットの中から小さな紙切れを私の手にそっと握らせてくれた。

「えっと、昴……恥ずかしいからその紙……帰ってから見てね」

 その後、また違うポケットから一本の四葉のクローバーを取り出して、葉を一枚…二枚切り取って私とあやちゃんの手に置いてくれた。

「最後になっちゃうから友情の印として二人に。後の二つは俺と晶の分。」

 そういって赤面したあゆちゃんはまた卒業生たちの下へ橋って行ってしまった。

 待って…とも言えないで私は後悔し続けながらその紙とクローバーの欠片をポケットの中にしまって見送った。その光景が私があゆちゃんを見た最後の光景だった。


 ポケットの中の手紙?完全に忘れてて洗濯されてしまったみたいで、実際になんて書いてあったのか今となっては知ることができない。


 そして現在。私はいつも通りに学校に行こうとした。そこでお母さんに呼び止められた。

「ねえ、すぅちゃん。貴方に今日手紙が届いてたわよ」

 そして、手紙を受け取るとすぐさま差出人を確認した。しかし差出人には何も書いてない。ちょっと不思議だけど中を開けたら一枚手紙が入っていた。

『もうすぐそっちに戻る…だから待ってて』

 その文字だけだった。戻る?待っててやっぱり名前が書いていない。そういえば前にもあゆちゃんから一通だけ手紙もらったっけ。確か私が中学校に進学した頃だ。

 確か内容は必ず戻るだったはず。でもその時には名前も入ってたしあゆちゃんからの手紙がうれしくて、学校でずっと泣いてたな。あの時は本当にあやちゃんにも迷惑をかけてしまった。

「あとね、まだあるの」

 そうお母さんは言って、手紙の束を私に手渡した。

「なに…これ?」

「それ、全部歩君の手紙よ」

 そういって全部の手紙を渡してくれた。

「え、何で?お母さんなんであゆちゃんからの手紙持ってるの?」

 わからない。あゆちゃんの手紙を何故お母さんが持っているのだろう?

「実はね………」

 そう言って、お母さんは真相を話してくれた。実は手紙には小さい紙が張り付いていて、時が来るまで私に渡さないでという内容だったらしい。確かに手紙の裏側になにか剥がしたような跡がある。

「お母さん…ありがと」

 そういって私は手紙をかばんの中に全部しまい学校へ向かった。

「おはよう」

 通学路の途中であやちゃんから朝の挨拶。こっちも『おはよう』と挨拶を返した。

「今日の昴なんか嬉しそうだね、いいことでもあったの?」

 顔に出てたんだろうか?確かに朝からとてもすごいことがあって私は確かに嬉しい気持ちになっていた。

「あのね…今日、あゆちゃんからの手紙が来たの」

「そう、遂に決心がついたのね」

 あれ?見当はずれの回答。その前に、あやちゃん…もしかして手紙のこと知ってた?

 その後、しばし無言のまま教室まで着いた。教室に着いた時にあやちゃんから声をかけてくれた。

「そういえば、昨日のニュース見た? 柳田やなぎだ すばるアイドル突然引退宣言だって」

 え、なんでこんな時にそんなこというの? 私はあゆちゃんのことが話したいのに…

「え、見てないよ。私アイドルに興味ないし」

 そんなそっけない返事を返した。

「昴、まだ気付いてないんだね。でも、もうすぐわかるから黙ってるね」

 そう言ってあやちゃんはそういってまた自分の席に戻っていった。

「ねー、そういえば今日全校集会だったよね。体育館いこっか」

 クラス全員が体育館へ向かう。もちろん私も向かった。手紙が早く読みたいのに…集会なんか早く終わっちゃえそう思っていた。

 そんなことを考えている時だった。

「続いて、本日より新任していただく教員二名の紹介を行いたいと思います」

「では、佐藤先生よろしくお願いします」

 佐藤と名乗る新任教員が壇上のマイクまで行き新任の挨拶を始めた。私はどうでもいいと思ってた。

「はじめまして、本日より世界史を担当します佐藤です」

「至らないところが多いと思いますが、よろしくお願いします。長い話は好きではないのであと少しだけお話したいと思います。」

 普通の挨拶だった。ただ次の瞬間までは。

「え、あれってまさか柳田 昴?」

「うそ~なんで~」

 女生徒が騒ぎ出す。

「あ~、えっと困ったな…。よし、言っちゃうか」

 そういって新任教師の佐藤先生は困った顔をして言った。

「確かに私は先日引退宣言しました柳田 昴です。ですが、私は教員になるから引退したわけではありません。ある女性に会うために全てを捨ててきました」

『ざわ…ざわ…』

 そんな表現が一番適切。とてもじゃないけど爆弾発言過ぎるでしょ。はっきり言ってなに早く終わってしまえ、そう思っていた……。

「私のこの芸名は昔好きだった子の名前と、その友達の名前を借りてつけました。本名は佐藤 歩と言います。はぁ~、言ってしまった。内緒にして驚かすつもりだったのに。それでは私の挨拶は以上とします」

 え…今、なんて。なんていったの…。まさか………あゆちゃん。そんな、居るはずが無い。そうおもってあやちゃんのほうを見ると、Vサインとともに軽くウインクをした。

「え~、静粛に」

 周りのざわめきが静まる。

「佐藤先生には産休でお休みの加藤先生に代わって三年二組の担任をしてもらいます」

 え、二組。私のクラスだ。そういえば、加藤先生産休に入るっていってた。

「続きまして、須藤先生お願いします」

 須藤先生が壇上のマイクまで行き挨拶がはじまった。

「はじめまして、須藤 晶と言います。教科は体育を勤めます。なんか歩の奴が爆弾発言したけど私は普通にします。あと……役二名にははじめましてじゃないんですけどね♪」

 え…この軽い喋り方……それに晶って…。まさか……まさか……。

「二人のうち一人はわかってないみたいだけど、とりあえず今日から頑張りますのでよろしく♪」

 こうして新任二人の挨拶が終わり、皆教室へ帰る。私はまだ呆けにとられている最中だったけど、あやちゃんが教室まで連れてってくれた。

「あやちゃん! 聞きたいんだけど!」

 私は教室に着くなり勢いよくあやちゃんに言った。

「まぁ、私が言うのもなんだし直接本人から聞いてね」

 そういってあやちゃんは自分の席に着いた。

『ガラッ』

 教室のドアが開いた。女生徒たちが一気に『キャーキャー』騒ぐ。

「お前ら~席着け~。ホームルームはじめるぞ」

 先生の掛け声とともに皆が席に着く。

「あ~、今日からキミ達の担任になりました佐藤ですよろしく」

 また女生徒全員が騒ぎ出す。

「静かに。質問したいこともたくさんあると思いますが受け付けません」

 先生に先に釘を刺された。だけど、生徒がそんなこと聞くわけが無い。そこで一人の女生徒が質問した。

「先生って本当に柳田 昴だったんですか?」

「あぁ、間違いなく」

 また女生徒が『キャーキャー』騒ぎ始める。そしてもう一人、女生徒が先生にしつもんする。

「集会で言ってたことは本当なんですか、ある女の子を探しに来たって。もしかして私だったりして」

「え~、かなずる~い。先生私ですよね」

 皆が私、私と言って話しにならなかった。

「はぁ、ホームルームが終わらないので一方的に話さしてもらう。キミ達はだまって聞いててくれ」

 そう言うと、生徒全員が黙った。

「え~と、説明するとちょっと長くなるので、簡潔に色々省かせてもらいます。」

 皆が少しがっかりした様子だったけど、佐藤先生の話は続いた。

「私は、十一年前にこの町に住んでいました。そのときはちょうど私が六年生、その女の子が一年生でした…」

 語り始めて五分ほどで終了したが、内容は十一年前に好きだった女の子と別れてしまい、すっと思い続けて教員として現れたということ。

「皆さんには信じられないと思いますが、私は馬鹿なのでこんなことしか出来なかった。十一年間ずっと好きだったその女の子に今日会えて私はとても幸せです。とりあえず話は以上とします。」

 皆から『え~』だの、『結局誰なの』と言う声が上がっていた。

「それではホームルームを終了したいと思います」

 先生のその掛け声のあと、クラス委員が号令。ホームルームが終了し、先生は職員室に帰っていった。

「いっちゃった。まだ聞きたいこといっぱいあったのに…あゆちゃん……。ねぇ、本当にあゆちゃんなの……?」

 小さく零れたその言葉と同時に私の目からも雫が零れ落ちた。止まらない…苦しい……。ねぇ、あゆちゃん本当なの、本当に会いに来たの?胸が締め付けられて痛いよ…答えてよあゆちゃん。

『ブブ……ブブ……』

 その時私の携帯が鳴った、バイブレーターにしているので振動だけだったけど。この苦しい気持ちの中、ゆっくりと携帯を開けた。

 件名に『ただいま』っと書いてあった。登録されてないアドレス。でも私にはすぐに誰だかわかった。内容を見てみると、放課後に屋上と書いてあった。


 放課後になるまで私は何度もあゆちゃんに会いに行ったけど、いつも教員室には居なかった。そして放課後、私は屋上へ向かった。

 屋上には一人の男性、佐藤先生…いやあゆちゃんが居た。

「やっと来てくれたか」

 夕日で顔が見れない。本当にあゆちゃんなの?私は恐る恐る近づいた。

「あゆ……ちゃん…なの?」

 零れた言葉は震えてはっきりと出せなかった。

「十一年、長かった本当に。俺って馬鹿だから、こんな事しか出来なかった」

「でも、やっと会えた。十一年間の思い、聞いてくれる?」

 少しずつ近づいていったけど、後五メートルくらいのところで立ち止まった。動けない…涙が、また……。苦しい、嬉しいはずなのにこんなことって。

「俺、ホント頑張ったんだぜ。中学に入って初めて初恋だって気付いて、何か出来ないかって馬鹿なりに考えたんだ」

 あゆちゃんが近づいてくる。ゆっくり一歩一歩丁寧に。五メートルの差が次第に三メートル近くになっただろうか。その時にはっきり顔が見えた。そう、あゆちゃんのとても大人びた顔だった。

「あれ?気付いてもらえてない…はぁ、そっかそうだよな。気付いても俺なんかどうでもいいとおもってるよな」

「でも聞いて、俺は本当にキミを探しに来た。そうだ、覚えてるかなこのクローバーの欠片」

 そう、忘れるはずも無い。十一年前の卒業式。絆として四人で分けた四葉のクローバーの切れ端。私も持ってる…押し花にしてずっと、ずっと…

「俺、プラスチック加工して首飾りにしていつも付けてたんだけどテレビじゃわかんなかったかな?」

「わかる……わかるよ………」

 涙が止まらない。溢れ出る、十一年間思ってた思い。私の初恋…両思いだったんだ。嬉しい…苦しい嬉しいはずなのに。それでも涙は止んでくれない。

「よかった、忘れられてたらどうしようとおもったよ」

「わずれられる……理由…ないじ……」

 止まらない、恥ずかしい。嬉しい…ずっとずっと待っていた。告白してきた男の子のことも全部断ってた。私、やっぱりあゆちゃんが一番好きだったんだ。

「じゃあ、本題。俺、昴のことが………好きだっ!」

 気付いたらあゆちゃんは目の前に立っていた、両肩に手がそっと置かれると勇気を振り絞ったあゆちゃんがそう言った。

 私は……。倒れこむようにあゆちゃんに抱きついて思いっきり泣き出してしまった。

「うぅ…うわぁあああああん」

「おいおい、こっちは一世一代の大告白なんだぜ。恥ずかしすぎるって……」

 私は泣き止まない。そう、多分十一年分の涙がここで全て零れるように泣き続けた。

「そろそろ泣き止んでくれよ」

 困った。涙が止まらない……私今酷い顔してる……絶対にあゆちゃんに見られたくない。でも段々と泣き止んできた、そんなときにあゆちゃんから声をかけてくれた。

「昴、俺ずっとお前のこと好きだった。近寄ってきた女全員振った、お前に会うためだけに頑張ってきた。だから、すぐにとは言わない、返事をくれ。待つのは慣れてるだってもう十一年も待ったんだから。」

「わだ…ぢ……も」

「えっ?」

「わだぢも、ずっどずぎだっだ」

 声になってない、でもこれが私の精一杯。心から思ってた言葉。ちゃんと伝えたいって思ってたのに。十一年間の思い……たった少しの言葉でさえ言うのが難しい。

「そ…っか、ありがとう」

 あゆちゃんの手がそっと背中に回り私の体を抱き寄せた。

「俺達、両思いだったんだ……よかった」

「昴、顔を上げて」

 優しく語り掛けてくるあゆちゃん。私は、上げられない……こんな顔見られたくない。やっと再会できた、思いも伝わった。なのにこんな顔、見せられない。

「駄目、見せられない……」

「じゃあ、そのままで。目を瞑っていてお願い」

 私はそのまま目を瞑ってただ泣いていた。あゆちゃんの手が背中から肩へ、肩から顔へ動き私達はそっと唇を重ねあった。

「もういいよ、目を開けて」

 私、今…キス……しちゃったんだ。初恋で、初めてのキス。嬉しい……。さっきまで苦しかった胸も嬉しい気持ちでいっぱいで、ドキドキが止まらない。

「俺さ、こんなんだけど。お前がこの学校卒業したら……結婚……してくれ」

「うん……」

 私…この時絶対笑顔だ。これまでにないくらい嬉しい。こうして私達は恋人となった。


「は~い、そこまで~♪」

『…ッ!?』

 誰、私たちのこと見られてた。

「はいはいお二人さんイチャつくのもいいけど、ここは学校よん♪」

「お、お前……いつから」

「実は最初からだったりして♪」

 見えない、あゆちゃんが喋ってい方に背を向けているので誰と話してるのかわからない。でもこの喋り方…何故かほっとする。

「晶……」

「え、あきちゃん」

 私は後ろを向くと、体育教師の須藤先生あきちゃんがいた。

「はいはい、新任して早々見せ付けられちゃったよ♪」

「本当に、まったくよ。晶さんったらずっと覗いてるんだもん」

 え、あやちゃんまで…。ずっと見られてた?恥かしい……え、っえ。どういうこと。なんで二人がここに。

「あやちゃん呆気にとられてるじゃん♪歩~教えてやれよ」


 その後、私は聞かされた。今までの経緯……。あゆちゃんは中学に入ってすぐにこの計画を思いついたそうです。

 計画とは、高校教師になって私の前に現れることだったそうです。そこでは、最初手紙で互いの状況を伝え合っていたらしい。途中から携帯でのメールに代わったそうですが。私の携帯アドレスを知っていたのはあやちゃんから教えてもらってたからということ。そのスケールの大きさに私はただ、聴き入っていた。

「はぁ、お前らやっぱり来てたのかよ」

「当然♪」

「だって、大事な親友のためなんだもん」

「はぁ、やってくれたな」

「んじゃ、話もまとまったとこで再会の記念にあれ出し合おうぜ♪」

 私は、すぐにわかった。卒業式の思い出の品。四人の絆。それは紛れもなく最高の宝物だった。

「それじゃいくよ~♪」

「せ~の」

 皆の掛け声とともに各々のクローバーの欠片を取り出した。一人はしおりとして、一人はドライフラワーとして、一人は首飾りとして、そして私は押し花として出した。

「四人全員持ってたんだな」

「当然!だってコレは俺達の絆じゃん♪」

 そして、あやちゃんが全員のクローバーを重ねあわせた。

「こうやって見るとあの時のままの四葉だね」

「そうだな」

 私達は四葉のクローバーをどのくらい見ていただろうか、日が落ちたときに皆が気がついた。

「やっぱここは言っとく♪」

「そうだな」

 そしてあゆちゃんあきちゃんは『ただいま』っと、私達は『おかえり』っと……


 それから半年がたった。

「あゆちゃん……好き」

「俺もだ、昴」

 二人がそっと口付けをする。友達からの祝福と、最大の親友二人にお祝いされながら。




 そう、私達の出会いはほんの些細な出来事から始まったけど、私には最初で最後の奇跡。これはそんな私のとってもとっても大事な物語。




最後まで読んでくれたら嬉しいです。

私的には渾身の作品です。一気に書いたので、今まで通り、誤字脱字があると思います。ご勘弁を。

出来れば感想を頂けると助かります。特に女性からの意見が欲しいです。何分女の子視点のストーリーだったもので。(女の子の気持ちってわからないからこんなんでいいのかな?)


個人的には大好きな話に仕上がりました。

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