幽霊は何ができるのでしょうか。
恩人は平垣を可憐に乗り越えました。
私の本体の心配をしていると、身体を誰かに持ち上げられます。
「わっ!」
ジョナサンさんに投げられたことを理解すると。
時既に遅し。
壁が迫ってきていました。
思わず目を瞑ります。
しかし、いつまでたっても衝撃がありません。
ゆっくりと目を開きます。
そこは部屋でした。
4つの椅子にその机、薄型テレビ。
どういうことでしょう。
誰がどう見てもリビングでした。
ポカンと口を開けてると。
「おわっ! 凄い!」
驚愕の声を上げるジョナサンさんが。
壁をすり抜けてきました。
まるで3Dプリンターの制作過程を早送りしたように。
恐怖を与えるには十分でした。
「ひぃ」
「ビビらないで。幽霊ですよ? それよりさっきはすみません」
なるほど、幽霊だから壁をすり抜けられたのですね。
でも、まだわからないことがあります。
ジト目で見つめました。
「なんで、投げたんですか?」
「あ、そのう、ですね……。敵から守らなければと思いまして。幽霊だから、守る必要ありませんでした……」
「敵?」
あの金属音――敵の銃撃だとしたら。
鳥肌が立ちました。
「マジですか」
「そうです。って君の本体が危ないよ! 同じ幽霊だと思ってました!」
ジョナサンさん――ジョナサンは、元来た壁に吸い込まれていきました。
わたしの本体生きてるよね!?
急いで追いかけました。
壁はすんなり通り抜けられます。
通り抜けたいと思えばできるということですか?
それも違うような気がします。
本体は力なくうつ伏せで倒れていました。
半袖から覗く腕には擦り傷があります。
息はしているようなので安心です。
本体の先にはジョナサンの後ろ姿があって。
そのまた先には狙撃手さんが銃を抱えて、平垣に寄りかかっていました。
その顔は真剣そのものです。
「ジョナサンさん、この後は――」
「なんか、ポルターガイスト的な……」
そういって彼は、足元の雑草に触れると、僅かに揺れた気がしました。
もしかして、できちゃいます?
「今のって」
「もう一回やってみよう」
そういって思いっきり雑草を叩きます。
雑草は手をすり抜けて、振動しました。
少しだけ、干渉できるようです。
「これじゃ人は殺せないよー」
なんて物騒な。
殺さなければ道はないのでしょうか。
例えば狙撃の妨害とか。
「狙撃手の目を触るとかはどうでしょうか」
「……。それいいかも!」
「でも敵の位置がわからない――」
「それなら大丈夫です。この住宅街で、ここを狙撃できる場所はあそこしかありません」
そう言って彼が指したのは、昔通った中学校でした。
ここからは1キロ近く離れていて、屋上が民家の上に見えました。
あそこなら、確かにここを狙えます。
「よし、早めに片付けよう」
ジョナサン、同じチームの狙撃手さんは心配ではないのでしょうか。
そういう素振りを見せないのは、信頼からくるものなのでしょう。




