狙撃手さんの話 2
「ルーカス、また会うとは思わなかったよ。だからこの際はっきり言おう。俺はお前のことが大嫌いだ。任務中に殴りまくろうと思うくらいには」
何故俺の名前を? 適当に言ったら当たったのだろう。
では、あのことを怒っているのだろうか。
しかし積極的に触ってはいない。あくまで《《仕方なく》》を重視したはずだ。
だが、罪悪感はある。
「背負ったときにエッチなことを想像したことは、本当にすまなかった」
彼女は驚いたようにどこかを見た。一体何なんだ。
「もうそれ以上その話はするな」
「あ、ああ」
「お前、俺が大事にしていた愛用の箸を誰かにあげただろ」
「な、何の話だ?」
「〇〇〇〇ブランドの箸だよ! 知ってただろ? 俺が彼女と初めて旅行行った思い出のだって」
〇〇〇〇の銀色の箸――もしかして。
「ジョナサン。しかし彼女にふられたんじゃ……」
ならば違うか。
「ふられても大事だっつーの! お前のそういうところ大嫌いだよ! で、誰になんであげたの?」
本当にジョナサンなのか?
涙で視界が歪んだ。
側頭部に衝撃がきて、鈍い痛みをじわじわと感じる。
「泣くな! 答えろ!」
「う、いや嬉しいな」
「殺すぞ」
軍人のそれはシャレにならない。
「俺の甥にあげたんだ。ジョナサンが全くその箸を使ってなかったし。別れたから無い方がいいだろ?」
「だ、か、ら、別れても大事だって! 大事だから保管してるんだよ! なんで了承得ないんだ! 行動の理由がさっぱりだ!」
顔を真っ赤にして怒っている。
「そもそも人の家の物盗むな! 謝れよ!」
なんで謝らないといけないんだ。気づかなかったそっちも悪いだろ?
「はいはい、ごめんなさい。甥から戻してもらえばいいんだろ?」
「小6の鼻水たらし少年に箸の処女を奪われたんだよ!」
「お前それ病気やで」
「は? お前自分がやったことわかってんの」
胸倉を掴まれた。可愛いお顔が目の前だ。
「笑ってんじゃねーよ! ああそうか。死にたいなら手伝ってやるよ! …………くそ、夏目さんが安全になるまでは生かしといてやる」
彼女は俺の顔に唾を吐いて、そっぽを向いた。
そして、どこかを見て謝る。
「すみません。気を付けます」
彼女はまた振り返る。
「さぁ、歩け。駐屯地まで行くんだろ?」
「ああ。それが俺に借金してるやつの態度かよ」
「黙れ。次言ったら殺す」
「お前立場わ――」
視点変わります。
二人は歩きながらも喧嘩を続行しました。それは終わりそうにありません。
夏目はその後ろで気まずそうに視線を下げるのでした。




