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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

異世界トランスポーター 〜どんなものでも《クリプトキューブ》でお運びします〜

作者: 遅筆屋Con-Kon
掲載日:2026/05/12

「⋯⋯これで良し」


 荷物をあらかた《クリプトキューブ》で隔離して、手のひらサイズにまで圧縮。


 それらをカバンに詰めてよいせと背負った。


「プレシアー、飛べる?」

『大丈夫だよ、いつでも!』


 アクアドラゴンのプレシアの背によじ登り、羽と鱗にがっしとしがみつく。


「それじゃ、よろしく!」

『はーい♪ いっくよー!』


 オレの合図と共に、青い鱗のドラゴンは大きな翼に魔力をまとわせ、そのまま垂直方向に離陸して目的地へと向かって飛行を開始した。




 ──オレの名は早瀬クウヤ。


 生粋の日本人で、元いた世界ではしがないアルバイターとして生計を立てていたのだが、ひょんな事から転移陣に巻き込まれ、異世界へと召喚された。


 しかし、勇者の素質が無かったために城を追い出され、成り行きから運び屋として働く事になった。


 そんな中、オレは運良くアクアドラゴンのプレシアと出会う事が出来、今ではこうして《ドラゴン運送》として仕事をこなす日々を送っている。


 プレシアの本名はレウスプレシオスというのだが、長い上に精神は女の子でもあるので、プレシアと呼ばせてもらっている。


 ドラゴン相手に気安く呼べるものでもないような⋯⋯とも思ったが、本人(本龍?)も気に入っているようなので、これ以上は気にしないことにした。




 今請け負っている仕事は、宝石商への宝石類の輸送だ。


 総額だと白金貨数十枚(一枚あたり一億円相当)という大金なので、落としても割れないクリプトキューブで運ばせてもらっている。


 そう。


 オレが異世界で運び屋なんて仕事が出来るのも、全てはこのスキルのおかげだ。


 クリプトキューブ。

 視界に収められるもの全てをキューブにして閉じ込め、任意の大きさに圧縮出来るとんでもスキルだ。


 《視界に収める》という条件のおかげで、視界に収めてしまえるものならば何でもキューブにしてしまえるのが最大の利点であり、任意のタイミングで解除すれば中身を取り出せるので使い勝手が良い。


 また、《内側からの力に強い》という性質もあり、凶暴な魔物を閉じ込めて捨ててしまう⋯⋯という事も可能である。さすがに人間相手にはやらないが。


 ともかく。オレの異世界での運送業は全て、このスキルのおかげで出来ていると言っても過言ではないのである。


「⋯⋯この辺か。あそこの広場で降ろしてくれ」

『え? 目的地までもう少し距離あるよ?』

「いやいや、みんなの前にアクアドラゴンが姿を現してみなさいよ。商人の皆さん腰を抜かしてしまうでしょ」

『そういうもん?』

「そういうもんなの。だからほら、手前の空き地に一旦降ろして」

『はーい』


 目的地から数百メートルほど離れた開けた場所に着陸してもらい、そこからは徒歩で向かう。


 ドラゴンから人間形態に変身したプレシアは、呑気に鼻歌を歌いながらオレの隣に着いている。


「⋯⋯」

「〜〜♪」


 ちらりと、プレシアの方へと目を向ける。


 青い長髪に切れ長の目、少しあどけなさが残る美形の顔に、スタイル抜群のプロポーション。そして、ドラゴンを象徴する青い角と鱗としっぽが、プレシアが最強種である事を物理的に証明していた。


(黙っていれば美人なんだよなぁ⋯⋯)


 口を閉じれば大和なでしこ、口を開けばヤンチャな天然娘。


 なまじドラゴンであるだけに人間の常識にはとことん疎く、強大すぎる力の加減も出来ずに色々なものを壊してしまう。


 おかげでいくつかの食事処で出禁を食らってしまった。くそう。


 そんなことを思いながらも歩く事数十分。


 ようやく目的地である宝石商の支店へとたどり着いた。


「ようこそハヤセさん。遠路はるばるご苦労さまです」

「どうも初めまして、ドラゴン運送です。宝石商のヤードさんでよろしいですか?」

「はい。私がヤードです。ところで、注文していた宝石はどちらに⋯⋯?」

「今から取り出しますね。置き場所はこちらでよろしいでしょうか?」

「ええ。構いませんが⋯⋯」


 空きスペースにキューブを転がし、指をパチンと鳴らして圧縮を解除した。


 すると、たちまちの内に宝石の入った箱がどさりと現れた。


「お、おぉ?! これは驚いた。お話は伺っておりましたが、本当に運び屋に向いたスキルをお持ちなのですね⋯⋯」

「ええ、まぁ。それでは、お荷物の方の確認をお願いしま⋯⋯⋯⋯っ!」


 外から微かに音が聞こえ、とっさに商人のヤードさんを庇った。


 ──ドォォォンッ!


 突然ドアが蹴破られ、外から武装した集団が中に入り込んできた。


「よぉ商人さんよ、邪魔するぜ。本当に運び屋が宝石を持ってきていたとはなぁ⋯⋯」

「あ、あんた方は⋯⋯!」

「ヤードさん、彼らとは知り合いで?」

「⋯⋯多分、商売敵からの刺客かと」

「そうですか⋯⋯」


 という事は、この連中はならず者で確定のようだ。


 であれば、遠慮はしない。


「はっ!」

「っ?! ⋯⋯何だァ?」


 先手必勝。オレは瞬時にならず者たちのリーダーと思しき男をキューブで閉じ込めた。


「り、リーダー?!」

「この野郎⋯⋯!」


 取り巻きのならず者たちの視線が、オレに向けて注がれた。


「プレシア、頼む!」

「まっかせて! はああっ!」

「ぎゃああああ!」


 プレシアが待ってましたと言わんばかりの勢いで、ならず者たちを全員店から追い出した。


 しっぽを振っただけで10人近い人数を吹き飛ばしてしまうとは⋯⋯。


 さすがドラゴン。人の姿でも変わらないその強さ、反則です。


「さぁて、しばらく退屈してたからね〜。私の運動に付き合ってもらうよ!」

「ひ、ひぃぃっ!」

「た、助けてくれ⋯⋯うがあっ!」

「ハハハハハハッ!」


 プレシアの理不尽な暴れぶりに、ならず者たちはボコボコにされ、しまいには情けない姿となってすたこらさっさと逃げ出していった。


 捕らえていたリーダー格の男も、キューブの拘束を解いた後にプレシアの一撃を受けて戦意喪失。


 ヤードさんの尋問をひとしきり受けた後、逃げるようにその場を去っていった。


「⋯⋯ハヤセさん、プレシアさん。この度は、本当にありがとうございました。何とお礼を言って良いやら⋯⋯」

「お気になさらず。当然のことをしたまでです」

「そうそう。でもあいつら、準備運動にもならなかったなー。何だか拍子抜け⋯⋯」

「こら」

「あいったぁっ!」


 とんでもない事を口走ったプレシアの頭上にゲンコツをお見舞いした。


「それでは、オレたちはこの辺で。今後とも、ドラゴン運送をごひいきに⋯⋯!」

「まったねー♪」

「本当に、ありがとうございました!」


 こうして。

 無事に宝石を送り届けたオレは、ドラゴン形態になったプレシアの背に乗って夕焼けの空を飛んでいった。



最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。

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